14.さらば愛しのショッピングモールMよ。
数年前、身内の引っ越しの手伝いのために東京某市を訪れた。身内の家と最寄りの駅は結構な距離があったのでバスに乗り、ぼやっと外を眺めていたところに視界に移った、巨大ショッピングモール、イオン。
その時は「東京にイオンがある!!!」といった感じに驚いたのだが、身内に「イオンがあるところは大体田舎だろ」と突っ込まれる。要するに、大型駐車場があって車で来るために作られている、という点だ。田舎は車社会で土地が余りまくっている。東京にもそんな場所があったのか!と思ったのだが、「京都に行く」というのが大体京都市を指しているように、「東京」というのは「東京23区」を大体指しているのだ。(区民ではなく市民の皆さま申し訳ありません)水城正太郎のライトノベル『東京タブロイド』(富士見ミステリー文庫)の4巻でも、東京の山中に住んでいるおじさん(うろ覚え)が「まち」=東京、「自分の住んでいる村」=まちではない、を指していると似ている。
だが。田舎には田舎という中にも「大手田舎」「中堅田舎」「別に田舎って言わなくていいよね」という風に、カテゴリー別にすることが出来る。
話は変わって。親戚の家の近くに、あるショッピングモールがあった。仮にショッピングモールMと言っておこう。2か月ぐらいに1度、そこをうろつくのを密かな楽しみにしていた。その店は非常に丁度いい。何が丁度いいって、出不精な田舎人がうろつくのに疲れない程度の広さなのがちょうどいい。1階の半分はスーパー。店舗数は少なく、百均と本屋がしっかり入っているところがいい。ショッピングモールブランドの服は仕事用にちょうどいい。礼服もスーツも私はそこで買った。クリスマスチキンが480円で売っている。勿論買うよ。
そのショッピングモールM店が、数か月前に閉店した。
閉店の話はだいぶ前から噂で聞いていたので、ちまちまよっては服を買い、ちまちまよっては手芸用品を買ってはいた。そのうちに店舗がひとつ、ふたつと消えていく。その噂は嘘であってほしい。こんな疲れないショッピングモールはめったにない。だってそこが閉店してしまったら、私はどこで服を買えばいいのだ。頼むから閉店するな。大人の事情は水に流して、ここは残そう。………という私の思いは裏腹に華々しく閉店セールが行われ、無事に閉店してしまわれた。閉店セール中、普段はスッカスカの駐車場は車で埋め尽くされた。お前らこんなときばっかり群がりやがって、と横目で見ながら、閉店セールに私もすごすごと向かっていく。
以上が「イオンが市内にできない大手田舎」の出来事だった。これはわが町を田舎だと馬鹿にしているのではなく、ただそのショッピングモールMがないのが悲しい。
今私は血の涙を流し、「今度からどこで服を以下略」という思いを抱きながら、ついこないだ「ショッピングモールMが閉店したけどその土地に新しいショッピングモールが出来た。その店は新しく生まれ変わったショッピングモールMだった」という夢をガチで見る。