11.愛と哀しみのNHK杯2017
※個人の感想なのでこれを読んで気に食わなくても怒っちゃイヤよ、と冒頭に書いておきます。書いたところで。
最終日のアイスダンスフリーとエキシビションだけチケットが当たったのでNHK杯フィギュア2017に行ってきた。正式名称は2017年NHK国際フィギュアスケート競技大会。場所は大阪市中央体育館。今年のNHK杯は全カテゴリーの現世界チャンピオンが出場することもあり、チケットは全日程倍率の高すぎる争奪戦状態だった。
中でも一番人気があるのはやはり男女フリーが行われる日で、この日は私も先行も一次も二次も全滅し、奇跡的に当たったのが最終日だったわけだ。土曜日が当たらなかったのは確かに残念だが、アイスダンスもアイスダンスでかなり、いや、相当豪華な顔ぶれなのでうきうきしながら会場に向かった。
しかし。
最終日、会場に入った瞬間思ったのは「思ったよりも観客がいない」ということだった。席についても向かい側の席に人がまばらにしかおらず、まぁ競技が始まる頃には埋まっているだろう、と思ったが、そんなに埋まらずにアイスダンスのフリーダンスが始まった。私の周りでは「どの日程もチケットが取れなかった」と泣く泣く諦めた方も多く、私自身も「最終日だけでも当たっただけ奇跡だ」と思っていたので、正直この観客席の空き具合はかなりショックだった。
観客の数は寂しかったが、選手のパフォーマンスはどれも素晴らしいものだった。日本アイスダンスのエース、村元哉中&クリス・リード組の『戦場のメリークリスマス』なんて昨シーズンの「ポエタ」を知っていると新しい魅力を発見できたと思う美しいプログラムだし、イタリアのアンナ・カッペリーニ&ルカ・ラノッテ組の『ライフ・イズ・ビューティフル』なんて遠くから見ていても泣けるプログラムだ。
そして現世界チャンピオン、カナダのテッサ・ヴァーチュ&スコット・モイア組の「ムーランルージュ」。
これが、もう、すごかった。鳥肌が立った。語彙力を失う、という体験を始めてしてきた。見ていて変な悲鳴が出た。何あのシンクロナイズドツイヅル。遠かったけど、めちゃくちゃ遠かったけどこれを生で見られてよかった。そう断言できるほど素晴らしいパフォーマンスだった。あのジャッジ席の後ろ側がガラガラなのもったいねーよ!と叫びたい。
何故ジャッジ席の後ろ側が特等席なのかというと、大前提としてフィギュアスケートは人が点数を付ける採点競技である。なので、コレオグラファーは振り付けをする際、「採点を付ける人間=ジャッジ」から見て魅力的に映るものとして振り付けるわけだ(・・・デスヨネ?ちょっと自信ない)。だからジャッジ席の反対側から見ると、肝心なところで背中ばっかり見ている、という事にもなっていたりする。それなので、観戦に行くときジャッジ席側か反対側かが、チケットが当たったファンにとっても気になるところであるのだ。
何であそこがガラガラなんだよ!当日券なかったんじゃないのかよ!!!転売屋かよ!!転売屋の仕業かよ!!!私があそこに行きたいわ!!!目の前でどんだけ凄いかどんだけ早いか追体験したいわ!!!!!!頼むから私をあそこに行かせてくれ!!!……と叫びたい気持ちを抑えながら観戦しつつ、アイスダンスのフリーダンスが終わった。
……最終日の客入りだけではなく、この大会は、全てのカテゴリーで見どころが盛りだくさんで面白く(特に男子シングル)、だが、現在の日本のフィギュアスケートを取り巻く「悪い部分」が浮き彫りにもなった試合だったように思う。ニュースも大会中も日本のエースの話が大半だし、競技している選手の方に話がなかなか向いていかないし。しかも男子フリーの日も空席目立つし!
基本的に、日本はフィギュアスケートにおいてはシングル大国だ。人気があるのも男女シングルだしそれは理解している。しかしそれは、日本のエースについてだけを報道し消費するビジネスではないはずだ。フィギュアスケートは、「ただ一人の選手の演技を見るだけ」の競技ではないはずだ。
そして、アイスダンの日にこんなに観客が少なかったのが個人的に悲しい。素晴らしかったのに。素晴らしかったのに!!
だから私は、チケットを持ちながら見に行かなかった方に、「あなたは相当、もったいないことをしたぞ」と余計なお世話ながら言いたい。
メディアに「もっと他にも目を向けてくれ!」と言いたい。
そしてこの大会を心の底から楽しんだ方と。「あの選手のあの演技よかったよね」「凄いいい試合だったよね」「男子シングル、超胸熱だったよね」という事を、日本酒片手にしっぽりと語り合いたい。
しかしあー、なろうのエッセイでこんなこと書いちゃってよかったかなー、マズかったかなー、私スポーツライターじゃないしなーと思いながら、掛け値なしの本音を書けたことに満足したので、この項目について筆をおきたい。
この大会でスケートファンが増えることと、これが単なるスケオタの遠吠えではないことを願う。