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魔法少女☆ソルシエ  作者: Rio.K
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4話 ーブリリアントー



「いやーしっかし、すごかったねー西園寺先生!」


秋葉原のとある喫茶店、ドイスレーヴに4人は今日も集まっていた。

昨日の新任教師紹介での一コマを得意げに語るりおだが、つばさの表情はどこか硬い。



「そんなことより!今日は会議だろうが!会議!」



そう、今日は久しぶりの4人揃ってのミーティングだ。

議題はもちろん『秋葉原改変作戦』について。りおが留学中に遂行していた作戦の結果の報告をした後、

それを踏まえてのりおによる戦略のプレゼンだ。

元よりちあき、つばさ、きいは、きい特有の『時空魔法』でこの2年で軽く100回以上過去へ戻り、秋葉原を変えてしまった原因を調べた。さらにこれが原因だろうと決めたらそれに関連する事件やプレットを、徹底的に片付けてきた。小学生の頃からを考えればもはや数えることができないぐらいに過去と現在を往復したが、それでも秋葉原は大きく変わることは無かった。


一度はメンバーの増員も議題に上がったことがあった。けれども時空魔法による「時間遡行」は魔法条例で禁止されているため、作戦を公にすることすらできないまま今日に至る。



りおにとってはこの2年は空白の2年間だ。

ちあき、つばさ、きいはその間にしてきたこと、得た結果を丁寧にりおに報告した。

そしてそれを聞いたりおはしばらく腕を組み何かを考えている様子だ。

3人が固唾を飲んでりおの意見を待つ中、

5分ほどしてようやくりおは口を開く。



「こんなこと言うと元も子もないかもだけど、もしかして過去って絶対に変わらないんじゃないの?

 私たちが過去に起こったことを無かったことにしたりしても、またその代わりに何かが起きて

 結局は変わらないとかさ、、。」


りおにしてはとてもまともな意見だった。

『タイムパラドックス』という有名な言葉がある。

解釈は様々で、りおが言うように過去起こったことをどう操作しても未来にはなんの影響もきたさないという説がある。

しかしこれに対してはちあきが意見した。



「りおちゃん、私たちもそう思ってたんだけどね。。」



話はりおが留学から戻る2ヶ月ほど前のことだった。

100回近くも時間を遡り、きいの魔力もそろそろ限界が近づいてきていた。

次にもうダメだったら過去に戻ることは諦め、違う手段を考えようと3人の会議で決めていたところだった。



3人は数年前に『ある男』が秋葉原で放火事件を起こした後に『自殺』をしていたことをつきとめる。

そして3人は数年前のその現場に向かい、案の定プレットに取り憑かれていた放火犯の男を救い、その事件を無かったことに。男も自殺することはなかった。


そして3人は元の時間軸へと戻った。

すると、今まででは考えられない大きな変化が現れ始める。

数日後、ちあきは秋葉原を歩いていたところ、

それまで無かったはずのゲームセンターと書店が1店舗ずつ戻っていたのだ。

作戦開始から約5年、ようやく目に見えた結果が得られた。そしてこれはとても大きなことだった。

3人は心から喜び、これから街を取り戻す上での大きな希望が生まれた瞬間でもあった。


しかし一方でこんな仮説も生まれた。

今まで変化が無いように見えた街の様子も、一見して気づかないような小さな変化が実はあって、

その積み重ねによって今回のような大きな変化が現れたのではないか。


いずれにしても、大きな一歩を踏んだことに間違いは無い。3人はそう感じた。




「そうかー、なるほど。じゃあやっぱり秋葉原内か、もしくは周辺の『事件』が鍵をにぎってるのかな?」



りおがいつになく真剣な表情を浮かべている。秋葉原が絡むとりおは人が変わったように

真面目に人の話を聞き真面目に意見を述べる。



「いや、そうとも限らないんだりお。私たちは2年間で散々秋葉原で起きた事件から、さらには建築計画までありとあらゆる事柄をしらみつぶしに調べたんだ。その上で、わかる限りのプレットが関わった事件は全て抹消したし、他建築計画にプレットが関わっていることは無かった。だから未来が大きく改変されたのはその時の1度だけだったんだ」




そう話すつばさを見て、りおはいつの間にか目をウルウルさせていた。

自分が留学で不在の間、つばさは先頭に立って秋葉原を元に戻そうと全力をつくしてくれていた。

留学中の2年間、常に秋葉原を気にかけていたりおにとってとても嬉しいことだった。

りおには特に当たりのキツイつばさが、まさか自分のためにと思うとそれはもう感動レベルだ。

りおは堪えきれずにつばさに抱きついた。



「ぅわぁぁぁんつばさぁぁ、、あんたって人は口でなんて言っててもあたしのことを思ってくれてたんだねぇぇ!あたしは嬉しいぞぉぉぉ!!」



「か、勘違いするな!私だってこの街には色々と思い入れが!!」




そんなつばさの声には耳も貸さず離れようとしないりお。


昔からりおとつばさはソルシエとしての素質が並以上にあった。

個々の能力ですでに周りよりも頭ひとつ出ていたが、そんな二人が同じチームで、同じ目的で

同じ敵へと向かっている。

それはとても素晴らしく、同時に珍しいことでもある。


力の強い者というのは同時に個性も強い。

強い者同士が同じチームにいるとだいたい衝突し分裂していくのだ。

しかし幼馴染みということもあってか、二人にはそれが全く無く、争う気配すらない。

そういう意味では、これはもしかしたら奇跡なのかもしれない。ちあきは二人を見てそう感じていた。



「み、みなしゃん、、、は、話を元にもどしゅでしゅぅ、、、!」


二人のやりとりに割って入ったのはきいだ。


今話している話題はとても重要なことだ。きいはそう伝えたかったのだ。


そう、秋葉原を元に戻すには秋葉原の事件だけ扱っていてはおそらく意味が無いということだ。

しかし時空魔法は他の魔法に比べて魔力の消耗が激しい。それならば最小限に抑えたい。

しかしながら改変の成功例は『たった1度だけ』で狙いを絞れないというのが現状だ。

4人は頭を振り絞って考えたが「う〜ん、、」と唸り声が上がるだけで答えは出て来ない。

とその時、りおはふとあることを思いついた。



「ちょっと待って、、その戻ったゲーセンと本屋さんてどこにあるの!?」



なにかに気づいたりおにつばさは少し驚いた様子で答えた。



「どこって、、、書店は看板が出てなかったがゲーセンはクレーン研究所だ。それがどうしたんだ。」



「なるほどね、、そーゆーことかぁぁ、、、、よし!いまから行くよ!その両方!」



そう言うとりおは急いで荷物をまとめ3人を煽り外へ出た。

りおは息も切らさずに走る。3人はりおが何を思って走ってるのかもわからなかったが、りおを信じ皆が必死に後を追う。程なくしてクレーン研究所へ辿り着いた。

りおは目を見開き中を確認するが、ものの10秒物色したところで、


「よし次!本屋さん!つばさ!どこにあるの!?」



今度はつばさが先頭を走った。未だわけもわからず走らされる3人。

すぐに書店に到着するとりおはまた中を物色し10秒ほどで出て来た。



「うん!やっぱりだ!オッケー!レーヴに戻ろう!」



ー えぇぇーーーー!!? ー



3人はヘトヘトになりながら声を上げた。

そしてしびれを切らしたつばさがりおへと一喝。



「おいりお!なんなんだ理由も知らせずこんなに走らせて!」



「ん?あ、あーごめんごめん!まあ、急がない急がない。理由はレーヴでね!」




どこか自信溢れるりおに乗せられ、半ば強引にいつもの喫茶店レーヴへと戻される3人。

腕を組み、指を小刻みに上下させるつばさは、これで何も無かったら承知しない!と太字で顔に書いてあった。




「りおちゃん、さっきはあんなに急いでどうしたの??」



ちあきがそう言うと、りおは目の前のグラスに入った水を一口で飲み干し、氷をバリバリと頬張る。

まだかまだかと話を待ち構えていたが、氷が冷たくていつまでも噛み砕けないりおの頭を

つばさは思いっきり引っ叩いた。

その衝撃で氷を飲み込んだりおがようやく話を始める。


「さっきのゲーセンの景品、ひとつ残らず全部アニメグッズだったの見た?」



りおの言う通りすべて景品はアニメグッズだった。

3人は頷くが、それが何の意味を示すのか全くわからず、りおを見つめ続けている。。



「本屋さんも全部マンガとアニメ関連の書籍だったの見た?」



これまた言う通りそうだったため3人はうなずく。

そしてこういうことはすぐに気になってしまうきいが我先にとりおに質問した。



「しょ、しょれが、ど、どうかしたんで、でしゅかぁぁ、、??」



「みんな気づかない?いまこの秋葉原でアニメ関連のもの置いてるのあのゲーセンと本屋だけだよ。」

 私にとってはどっちも昔からあるから普通に気づかなかったけど私が留学してる間に無くなってまた復活したんでしょ?てことはさアニメ自体に何かが起こったって可能性が高くない?」




3人はとても驚いた。核心をついたことに対してではなく、りおがこんなに真面目に喋ってるのを見てだ。

確かにそうだった。秋葉原が超特急で再開発されてからアニメ関連の店舗やそれを扱う路店やビルは

そのほとんどが無くなったはずだった。りお以外の3人が2年をかけて原因究明にいくつもの事件や事柄を解決してきたが何一つ変わらず。しかし自殺するはずだった『ある人物』一人を救っただけで、アニメを取り扱っているゲームセンターと書店が戻ったのだ。これが何を意味するかというと、

彼が何かとても強い影響力がある人物という可能性が高いということ。

秋葉原に極めて敏感なりおはその変化を見逃さなかったのだ。



「誰かその自殺するはずだった男の情報持ってない?」



「あ、わたし持ってるよ!そういうのは全部わたしが管理してるから、、」



そう言ってちあきはタブレットを取り出しその男性の情報を表示した。

そのプロフィールには名前、生年月日、住所、身長や血液型などが載っている。

しかしこれだけでは詳細がわからないため、ちあきは魔法協会のサイトにアクセスし、

さらに詳細な情報を調べた。



「えーっと、、『上原信行』っと、、、、あッ!、、、これ!!!アニメ制作会社ブリリアント勤務!!」



「それだーーッ!!!」



りおのお手柄に誰もが言葉を失っていた。こんなに頭がキレたか?

とそこにいた誰もが思った。しかし今回ばかりは完璧に脱帽だ。

事件や建築計画、開発計画など大きなことばかりに目を向けていた彼女らは、一個人の職業にまで

目がいかなかったのだ。そしてりおの名推理はまだまだ続く。



「その制作会社の情報も出してみて!」



りおに指示され情報を検索し開示するちあき。お目当の情報はすぐに見つかった。

ちあきは一般人でも閲覧可能なウィキペディア先生を使ったからである。



「ふむふむ、うーん、、、なるほど。設立19年、、、従業員6人、、、、本社が、、、」




りおはウィキペディアにかじりつき、一文字も漏らさぬよう読み上げインプットした。

そんなりおの姿を見て3人もりおの口からどんな言葉が飛び出すか鼓動をおさえていた。

そしてりおはそれを終え、紅茶を一口でゴクリと飲む。

そして3人もゴクリとつばを飲んだ。



「いま見てみたけど、、、」



気がつけば3人とも顔はもうりおの顔にあたりそうなぐらいに近づいていた。

そして。。


「わかんないッ。(てへぺろッ)」



3人とも大きな音を立てて豪快にずっこけた。やはりりおは肝心なところでアホだった。

誰より安心していたのはつばさだった。

頭がキレすぎて病気になってしまったのかと疑っていたからだ。

この長い一日を返してくれと顔に極太で書いてあった。が、その文字はすぐに消えることになる。




「と、、ゆーのは冗談で。これ、絶対におかしいよ。本社がこんな一等地の自社ビルで19年以上もにあるのに従業員6人て書いてある。

きっと本当はもっとたくさんいて大きな会社だったんじゃないかな。だから上原さん一人を救っただけでも街に目に見える変化があったんだよ!」





この会議において話し合う議題は二つ。秋葉原を変えてしまった原因とその報告、

それからりおの戦略のプレゼンだった。

しかし3人は気づいた。りおはきっと戦略など用意していなかった。

だけどそれ以上の戦闘力と頭脳を得て帰ってきたこと、それこそが戦略だ。

肝心の本人はいまいちそれに気付けていないところがあるが、りおのようにお調子者の性格は

それぐらいが丁度いいのかもしれない。




「りおちゃんすごい!そしたらまた過去に戻ってその制作会社の従業員を片っ端から調べれば、、」



「必ずなにかを突き止められる。ってことだろ?りお。」




チームというのは不思議なもので、そのチームにしかない色の信頼関係が必ずある。

一緒にいればいるほどその信頼関係は膨らんでいく。

一人の時は小さな希望でも、チームでいるとその希望はより大きく見えて、

どんなに難しいことでも乗り越えらるだろうという前向きな気持ちが生まれてくる。




「しゅ、しゅしゅしゅ、、、しゅごいでしゅ!大発見でしゅ!!!」




一人が潰れたらみんなが支え、一人が希望に溢れて走り出せばみんなが走る。




「よっしゃーーー!!そうと決まれば明日は買い物だ!きいの魔力を保つためにお金出し合って色々買出し行かなきゃねー!」




それは世界のどこでも、いつの時代でも変わらないものだ。

それぞれの強い思いを胸に、みんなが笑顔の明日をつくるために、

ソルシエたちは戦い続ける。




「あ、やっぱ明日見たいアニメあるから明後日からにしよ!?」



「バカりお!やっぱりおまえはおまえだ!」




続く

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