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魔法少女☆ソルシエ  作者: Rio.K
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28話 ー たった一つの正解 ー (前)



3人は目の前で起こっている出来事を未だ飲み込めずいた。

きいがいる。眼鏡もしていない、髪型も違う、口調も仕草もまるで違う。

しかしそこにいるのがきいだということが、3人にはすぐにわかった。



「きい、、なぜだ、、、一体どういうことだ!」


つばさは想いをそのまま口にした。

「いったいなぜ」。ただそれだけが頭の中を渦巻いている。

皆があれだけ絶望を覚えたきいの死。

それを乗り越え取り戻そうとした命。

その結末がなぜ。

3人全員がそう思っていた。


しかしきいは困惑する3人へ構いなく無慈悲に話し始めた。



「はぁ?あんたたちに説明したってどーせわかんないよー。ほんと3バカ。

てかまずさ、あたし「きい」じゃないから。本当の名前はねぇ、『洗崎めい』ってゆーの。へへッ。」


その言葉にりおはすぐにピンと来た。



「せん、、ざき、、、、って、、もしかして!!!」



「そうだよー。あたし、洗崎護の娘。きいさ、妹なんだよ。そこんとこよーく覚えといてよねー。」

 



「洗崎護の、、、娘、、、?」



きいはりおのその言葉を聞いた直後形相を一変させ、りおを睨みつけた。



「気安くウチのパパ呼び捨てにしてんじゃねーよバカ女がぁぁぁ!!」




ー ズドーーーーーーーーーーンッッッッッ!!!!!! ー




きいは目にも止まらぬ速さで光束攻撃を放った。

一瞬で放ったとは思えないぐらいに大規模な攻撃をまともに受けたりおは倒れ込んだが、やっとの思いで立ち上がる。



「、、、、あ、、、あんた、、、、なんて力、、、、。」



ちあきとつばさはすぐに駆け寄り必至に回復魔法をかける。


りおはこの現状に、頭の中で思いつく限りの理由を探しに探す。

しかし、理由が全く見つからない。

それ以前に何故きいが生きて目の前にいるのか。

もう全てがわからない。


それに対してきいはというと、あれだけの凄まじい魔力を使ったのにもかかわらず、息一つ切らしていない。


「な、、、何なの、、あんた、、。いったい、、、どうしちゃった、、、の、、?」



きいは片方の口角を少し上げ、小さく微笑みながら口を開く。



「フフフフフフフ、、、アハハハハハッッ、、いい顔いい顔。じゃあさ、説明してあげるよ。

 知りたいでしょ?内気な東山きいが『フェイク』だったり・ゆ・う。」





~ 2014年6月24日 ~



「じゃあまた明日ねーめい!」



「うん!いいなぁー、りおもちあきもつばさも寮で。

近くて羨ましい!」



「なに言ってるんだめい。あんな立派な家がありながら。こっちが羨ましいぞ。」



学生寮に住む3人を見送り、めいは一人自宅である秋葉原のタイムズタワーへと帰宅する。


いつもと変わらぬ午後

いつもと変わらぬ道

いつもと変わらぬ木漏れ日


全ていつもと変わらない。

はずだった。



ー ガチャ ー



「ん?あれ?鍵があいてる?おかしいなー閉めたと思ったんだけど、、。」


めいは普段から火元や鍵の開け閉めにはかなり気を使っている。特に鍵に関しては一度閉め、ドアノブを引き、閉まっていることを確認。そのまま歩き出すがもう一度戻り再度ドアを引き確認する念の入れようだ。

故に今日に限って鍵を閉め忘れるのは考えにくい。



「あれ?パパの靴、、、あ!パパが帰って来てるんだ!パパー!パパー!鍵閉め忘れて、、、、え?」



リビングの扉を開ける。窓から差し込む光で中が良く見えない。何かが中央にぶら下がっているのがわかる。

ゆっくりと近づいていく。すると。

リビングの柱にロープをかけ、首を吊っている父『護』の無残な姿があった。



「パパぁッ!パパぁぁぁぁぁッッッッ!!なんで!?なんでよぉぉぉッ!!!パパぁぁぁッッ!!」




この日、めいの父である洗崎護は

一人娘である「めい」を残し

自殺によって他界した。



「なんで、、、こんなの、、、こんなの絶対に、、、おかしいよ、、、。」



父の死の数日後、失意に暮れるめいは、父との思い出の街秋葉原を歩いていた。


幼い頃に母親は居なくなり、父はめいを男手一つで育てた。

なにか辛いことがあった時、父はいつもここに連れてきてくれた。

アニメや漫画が大好きなめいの為に。

彼女にとってたった一人の愛おしい父だった。


抜け殻のようになっためいは、気がつけばとある公園に立ち尽くしていた。

満月の夜、辺りは静まり返り、街灯が照らす地面に月明かりが優しく入り混じる。



一人俯くめいはゆっくりと月を見上げた。

そして手を合わせた。


「お願いです、、、。この先どんな辛い思いをしても構いません。自分はどうなってもいいです、、、どうか一度だけ、、、一度だけパパを助けるチャンスを私にください、、、。お願い、、します、、、。」



そう呟いたあと、めいはその場をしばらく動かなかった。

当然、なにが起きることもない。涙で滲む夜空を見上げ、その涙が乾くまでの間、どれぐらいだっただろうか。


ふと気がつくと、そこは父のいない一人ぼっちの家。



「この家、、こんなに、、、広かったんだね、、、。」



眠れぬ夜を何日も過ごしためいはこの日、ようやく深い眠りについた。




ー 翌日 ー




「、、、ぃ、、めい、、、めい!めい!起きなさい!遅刻するぞ!」



聞き覚えのある声がする。朝だ。

時たま目覚ましの音が聞こえなくて、、、

何度も起きようとするのだけれど、、、

そんな日は決まって、、、パパが、、、



ー え?パパ?? ー




「やっと起きた。めい、遅刻するぞ!早く朝ごはん食べて、準備しなさい。」




「え?パパ??え、、、い、、、生きてる、、、パパ、、、パパぁぁぁぁ!!」




たとえ夢でもいい。せめて夢の中だけでも、一緒にいたい。

もう少しだけでいいからこの時間を過ごしたい。




「何寝ぼけてるんだめい。さあ、まずベッドから出ないと!」




ー あれ、、?なんか、、、なんかおかしいな、、、夢、、、じゃない、、? ー




覚めないで、と思うほど夢とはすぐに覚めてしまうものだ。

いつもそうだった。だけど何分経っても、何時間経っても夢は覚めなかった。


戸惑いながらも登校するめい。しばらくぼーっとしていたのだが、

突然あることを思い出す。



ー 日付、、、日付だ! ー



めいは急いで日付を確認する。するとその日は、2014年6月17日。

父が自殺するちょうど一週間前だ。

めいはそこであることに気がつく。確か自分は寝る前、外に出て、公園に行って、、、

そうだ、、お月様に願いを、、、、。



ー そうだ、、あたしあの時願ったんだ、、、、もしかして、、、 ー



思い出したその時だった。



ー ドクンッッッッッ、、、 ー



心臓の鼓動が一瞬とてつもない大きな音を立てて鳴った。

身体中に血が巡っているのがわかる。何か大きな光のようなものが、

ゆっくりと自分の中を流れていく。



「、、な、、なに、、、、これ、、、ぅぅぅ」



突然目の前が真っ白になった。息が苦しい。体の自由がきかない。



ー あたし、、、死ぬの、、、? ー




そしてきいは気を失った。一体何だったのだろう。

やっぱりこれは夢だったのか。めいは潜在意識でそう思った。

しかし、あれがどうも夢とは思えなかった。

そして心の中で強く叫んだ。



「あれは、、、夢じゃない、、、夢じゃないんだ!あたしは絶対に諦めない!あきらめない!!!!」



その叫びに応えるかのように、気を失い堕ちていった暗い闇は、一瞬にして白く弾けた。

めいが目を強く見開くと、そこに広がっていた景色は自宅だった。


振り返ると、父が首を吊っている。

めいは急いで日時を確認した。

すると、2004年6月24日。

間違いない、この感触は、




ー あたし、、、時を超えたんだ。 ー




「戻る、、、。戻れ!時間よ!戻れ!!」



めいがそう叫ぶとあたりに景色が急激に捻じ曲がった。

そしてねじれが戻るとそこは同じく自宅だった。

日付は、2004年、6月14日。

父の死の10日前だ。




めいは確信した。元より自身が使う『時間魔法』が何かをきっかけに変異した。

おそらく『時空魔法』に。

時間を数秒止めることができる程度の魔法だったはず。

めいはすぐ学園へ行き、夢中でこの体験を調べた。

学園に時間外立ち入り届けを出し、一晩中魔法書をめくり続けた。

そして朝日が昇り始める頃だろうか、めいは一冊の本を見つけた。



ー 奇跡の光 『ルイス・プルミエール』ー



発見したのは図書室の隅の隅。

もう何年、いや、何十年誰も触れていないような佇まいだ。

恐る恐るその本のページをめくるめい。

一枚、また一枚とゆっくりと読み進めていく。

読み進めていくうちに徐々にページをめくる間隔は短くなり、内容を把握するにつれてめいの疑念は確信へと変わっていった。



「そうだ、、、そうだきっとこれだ。はは、、、はははははは、、、奇跡の、、、光ね、、、。」



やがてその本の最後のページへ差し掛かる。

そこにはこう書いてあった。



『以上、これまで書き記した事実を取りまとめる。

 ルイス・プルミエール、それは「奇跡の光」であり「始まりの光」である。

 光は光であり続け、光無くして影は無い。

 つまり始まりの光とは、光でありながら影の素質を 持つ光。

 憑依はソルシエ及びソルシールのみに限られ、無論、宇宙にただ一つだけの光である。

 また、憑依された者はその「属性に応じた多大な魔力」を得ることになるが、

 決して心に影を造らぬよう注意すべし。

 もしもそれを、、、、』



最後のページ半ばでめいは本を閉じた。その先は読まなくても想像がついたからだ。




「これだ、、、絶対これだよ、、。やったぁ、、これで、、、この力できっとパパを救える、、、。」



そしてめいはこの日から父親の死を無きものにするため、時間遡行を繰り返した。

一週間前がダメなら、10日前。10日前がダメなら15日前。15日前がダメなら20日前。

と、失敗するたびに遡行する時間の感覚を広げていく。


そうやって気が狂うほど同じ時間を繰り返し過ごした。

しかし、どんなに時間をかけて、どんなに手を尽くしても父の死は訪れてしまう。



「なんで、、、なんでなの、、、なんでダメなの、、、それならまた、、、!!」



それでもめいは決して諦めなかった。どこかに必ず正解がある。

父が死なない未来が必ずあることを信じ、どんな小さな言葉も、どんな些細な仕草も見逃さなかった。




『なんか秋葉原変わってきちゃったねぇ、、、原因、、アイドル、、かなってパパは思うよ、、』


『最近、、、桐嶋とうまくいかなくてね、、、』


『いやぁ、、会社にまんまとキャラ盗られちゃったよー、、、』


『あの頃の夢、桐嶋は忘れちゃったのかなぁ、、、』


『悲しいときはさ、こんな時ママがいたらなって思、、、あ、ああごめんごめん!この話はしないって約束だったね!ハハハ! 』



全て心に刻み込んだ。

その果てに父が死ぬ姿を何度も、何度も目に焼き付けてきた。

それは想像を絶する苦痛だった。


そしてそのうちに、桐島守がアイドルアニメに走った理由も、幼少の『りお』にあったこと発覚する。




「あたし桐嶋りお!米山さんクラス同じになるの初めてだね!よろしくね!」



ー 桐嶋りお、、。おまえなんだよ、、おまえなんだよ全ての元凶は。あたしの気も知らないで何度も気安く自己紹介してきやがって、、、。いつか絶対壊してやる。おまえも、おまえの父親も、家族も全部。 ー



絶対に父を救う。どんな辛い思いをしても諦めない。そのためなら自分はどうなっても構わない。

それが約束。いいや、『契約』だった。

拷問のような日々を繰り返す中、『心に影を作らぬよう』という言葉はめいの中にはとうに無い。




ー あたしが諦めたら辻褄が合わない。諦めないから、実現できるからあたしは宇宙の法則に選ばれてここにいる。

だったらとことん従ってやろうじゃないの。

パパを殺すこの世の中に、神も仏もいないんだよ。

だからもう、自分しか信じない。 ー




数え切れない時間遡行を繰り返し、様々な調査と行動を実行してきた。

それはプレットとの戦闘回数も比例し、めいは尋常でない魔力と戦闘力を獲得していった。

それまで『自身の意識』のみに限られていた時間遡行と遡上。

それがいつしか『物質自体』を過去や未来へ送ることができるようにもなった。



そんなある日だった。事態は急展開を迎える。

父の自殺が一日遅れたのだ。防げてこそいないが、出口の見えない迷路に迷い込んだめいにとって『奇跡』とも言える出来事だった。


その後、広がり続けていた遡行の感覚を徐々に狭めていくことができた。

これならいける。そう確信した頃。



学園側のメスが入った。普段から細心の注意を払い、自らの魔力を抑え生活を送っていためい。

しかしそのあまりに膨れ上がった魔力を抑えきることができず、定期魔力測定で統計上あり得ない数値が測定されてしまい、プルミエール警報が発動したのだ。

協会はすぐにそれを感知しわずか2秒後、

めいは一瞬にして監視下に置かれ、包囲された。


世界中から転移された監視員や一流ソルシエールたち。

ざっと見ても50人以上はいる。


それでもめいは御構い無しで時空魔法を使用する。



ー 関係ない。また何度だってやり直せばいい。 ー



同じ失敗は二度としない。が、これまでで培った前へ進むための教訓だ。

自分の魔力を限界まで閉じ込めるには、口数や身の動きを極限まで制限することで済むことも発見した。


そして、めいはついに最後の遡行へたどり着いた。



続く



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