22話 ー 該当者 ー
15年前に落としたあのキーホルダー。
あれをちあきに届けたのは一体誰なのか。そして捜査線上に浮かび上がった一人の人物。
それが、藝淑桜子。秋葉原再開発反対派の役員であった藝淑城太郎の娘だ。
しかし実際のところ、彼女はキーホルダーを送りつけてはいなかったのである。
「ええ!?ラブレターってほんとにあのラブレター!?あの桜子が!?」
「ああ、間違いない。信じられないぐらい顔を赤らめ帰って行った。」
「あっははなにそれ!ほぉ、ほぉー、、、そういう趣味があったとはね〜」
桜子のライバルであるりおはまるで一本取ったかのように薄ら笑いをうかべ、
ちあきをじーっと見つめている。
「それにしてもー、、、なんで、、ちあきを?」
「は、ははは、そ、、そうだよね。なんでだろうね、、ははは。」
4人は寮に帰りそれぞれの支度を済ませ、またリビングに集まる。
暗黙ではあるのだが、4人の中に共通する議題があることは皆がそれとなくわかっていた。
議長はつばさが勤めることに。
そして、早々に会議を進める。
「ではまず今までの話をまとめるところからだ。」
3人はせーので合わせたかのように全く同タイミングで頷いた。
つばさのまとめは次の通りだ。
・ちあきは15年前キーホルダーをブリリアント社内に落とした。
・そしてそれを15年後何者かがちあきの部屋へ送りつけてきた。
◉その人物は差出人をブリリアントと偽っている。
◉封筒にはちあきの寮の部屋番号が書いてあったため学園関係者であることはほぼ確実。
◉その人物は藝淑桜子ではなかった。
以上が今までの知り得る情報の全てだ。しかしこれではまだ決定的な何かが足りていない。
いや、言い方を変えればこの情報から決定的な何かを見いだせていないのだ。
しかしそれにいち早く気づいていたつばさは、桜子が容疑から外れた時点ですでにそれを見出す準備ができていたという。
つばさは何か覚悟を決めようとしているのか、軽く目を閉じ深呼吸した。
そしてつばさはためらいを断ち切るかのように目を開け、ゆっくりと喋り始めた。
「みんな、これはあくまでも私の持論だ。だが正当性はある。ちょっと耳を傾けてほしい。
まずそもそもなぜちあきの元にあのキーホルダーがあの差出人名で届けられたのか。
想像したらキリが無いが、こう考えると後々どんどん辻褄が合っていくんだ。
まずその人物が私たちの秋葉原改変計画を『阻止したい』人物と仮定してみよう。
もしそうであるならば、まずその人物にとって私たちの作戦が進むこと、達成されることがとても都合の悪い人物ということだ。秋葉原を改変されて都合の悪い人物。
その人物は私たちに計画をやめるよう『警告代わり』にキーホルダー送ってきた可能性が高い。
さらに数年にわたり散々時間遡行を繰り返して起きたにも関わらず、私たちにとって不可解な出来事は立て続けに起こるのはごく最近のことだ。
ある『誰か』が私たちの前に現れたタイミングとほぼ同じなんだ。」
その時、りおは気づいてしまった。りおはつばさの気持ちを悟っていた。
「ね、ねえつばさ、、、それって、、、」
つばさはりおを睨み、強い口調で注意をする。
「りお!まだ話は終わっていない! 」
つばさの圧の強さに異様さを感じるちあきときい。
きっと何か良からぬことが起きようとしている。
二人はとっさにそう思った。
そしてつばさはまた話を続ける。
「 おそらく最初から私たちの計画を潰すためにあの人はやって来たんだ。でなければ、、こんな、、、。」
言葉に詰まり目線を一度下に落とすつばさ。
数秒ほど下をみたまま、深くため息をついた。
そして、
「ちあきの部屋番号を知る学園の関係者、私たちを常に先回りできる魔力と頭脳を持ち、
目的の為にあらゆる権力と手段を使用でき、秋葉原の改変を許せない最近現れた人物。それはもう、一人しかいない、、。」
4人はこの後も話し合いに話し合いを重ね、善は急げと明日その人物を訪ねることにした。
もちろん危険は伴う。
けれど4人は確かめたかった。
いや、疑いを晴らしたいと言った方が近いのだろうか。
その気持ちを誰よりも強く抱いているつばさの為にも、4人で真実を知る必要があるのだ。
もう戻れないところまで来てしまった。
最初は軽い気持ちだった。しかし気がつけば大勢の人とその人生を巻き込んでしまっていることに気づいた。
0に戻すか、100へ進むか。難しい決断だ。
だからこそ明日その人物を訪ね真実を見極める必要がある。
きっと明日で全てが決まる。4人はその思いを胸に眠れぬ夜を過ごした。
ー キーンコーンカーンコーン♪ ー
翌日、1日の授業は全て終わり、4人は今日の今後の動きを話し合った。
長いような短いような、まるで時間が伸び縮みをしているみたいな何とも気持ちの悪い1日の中、
4人は一言も会話を交わさず過ごしていたのだが、
終業のチャイムと同時に瞬時に集合したのだ。その様子はどこか機械的で、冷たかった。
りおはたまえらずこの空気を打破しようと3人に言葉をかける。
「ま、まあさ、、みんなぁ、そう硬くなることはないんじゃぁない?まだそうだと決まったわけじゃないしさ、ははは。」
するとわずかではあるが一瞬空気が和らぐ。4人に少しだけ笑顔が戻った。
8年前の、この場所であの事件は起きた。
あの時あの事件を阻止することができなかったことを、自分の大切な人を守ることができなかったことを、一生背負ってしまった人。
阻止することができなかったから、守ることができなかったからこそ、だからこそ今の自分がいて、その大切な人の死に誇りを持って生きてきた。
だからこそ、許せなかったのだろう。
「西園寺先生。あなたを第一に尊敬するこの武藤つばさに、少しだけ時間をいただけませんか。」
その交差点に立っていたのは、傲慢、傲然たる鬼教師「西園寺響子」ではなく、
悲しい目をした孤独の『ティターニア・ルヴァン』その人だった。
続く




