表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法少女☆ソルシエ  作者: Rio.K
23/38

21話 ー 希望の名のもとに ー



「お、つばさからメールだ!えーと、なになにー?」




ー 藝淑桜子が送ったのはキーホルダーでなくラブレター ー




「は?なんじゃこりゃ」




りおときいは洗崎に連れられてブリリアント社内にいた。

15年前に比べると建物が少し古くなってるように感じる。

少し物も増えているようだ。




「上原さん!」



「おー洗崎、久しぶりだな。よく来てくれた。見てくれ、君のデスク、まだこうしてそのまま残してあるんだ。」




「すごい、、なんか、、ありがとうございます。それで上原さん、、

実は、あの子たちなんですが、、、」




そう言うと洗崎はオフィスの隅に上原を誘導し、

りおたちに会話が聞こえないよう状況を説明した。




「え!?桐嶋の娘!?なんで!」



上原は声を荒げたがすぐに我に返り、りおときいに笑顔を見せる。




「まあまあ、上原さん。ちょっと訳がありまして。

 何かあればわたしが責任を取りますので、ここはひとつ大目にみて頂きたいんです。」




上原は仕方なしにといった表情を見せ、洗崎の頼みを承諾する。

上原は昔から洗崎を可愛がっており信頼関係も深い。

洗崎がフリーになった後も親交は続いていた。



「いやーごめんごめん。さぁ、座って座って。ちょうどねー、ここが僕の机で、、となりのここが桐嶋の机だったんだ」




「え!?お父さんてブリリアントにいたんですか!?」



「え?知らなかったの?僕と君のお父さんはここの同期なんだよ。

だから君が生まれて間もない時もよく君の家に行ったもんだよ。

桐嶋がムーライトに入社する前まではね。」


衝撃の新事実だ。なんとりおの父桐嶋守は元ブリリアントの制作デスクだったのだ。

なぜ自分がそれを知らなかったのか。自分が聞かなかったことに他ならないが、

普通は家族であればそんな話が出てきてもおかしくない。


もしかしたら父は何か隠していることがあるのではないだろうか。

そんな憶測が頭の片隅に浮かぶ。



洗崎は楽しそうに当時のことを振り返っていた。

しばらく当時の思い出話に花を咲かせていた洗崎は何かを思い出したのか、すこし黙り一点を見つめる。


それを見て何かを感じたのかきいが口を開いた。




「ぁ、、ぁの、、わ、、わたし、、たち、、、」




「あ、ああそうだね!ところでさ、君たち何で僕を尾行なんかしてたのかな?

なにか訳があるんだろ?教えてくれるかい?」



りおときいはちあきの元へ届けられたキーホルダーのことを話した。

次第に洗崎は笑顔から大人の真剣な表情に変わっていく。


りおときいは一通り話終え、洗崎の表情を確認する。

しばらく考え込んでいた洗崎は腹を決めたのか、

よし、という無言の頷きを見せ再び話し始めた。




「さっきもすこし話したんだけど、今から15年前にここに4人のシャルム生が来たんだ。


そして彼女たちは突然帰ってしまってね、直後にキーホルダーが落ちているのを上原さんが見つけたんだ。


その時は上原さんは4人が落としていったものだと思ったらしいんだけど、よく見たらそのキャラクターが


僕の絵に似てると言って僕にそのキーホルダーを渡してきたんだ。


僕は戸惑ったけどそのキーホルダーを見た瞬間に衝撃が走って、、なんかこう、、、


初めて見る気がしないというか、、。


それで、家に帰ってふと昔の制作入社前に描いてた絵を引っ張り出して見てたんだ。


僕はもともとアニメーターになりたかったんだけど実力が無くてね。その時の絵をね。


そうしたらオリジナルキャラクターのところにあのキーホルダーとまったく同じ顔が9人いたんだ。


これは運命だと思っていつかここぞという時にこの9人をここぞいう時に起用しようと思った。


それが『マギアフロッシュ』だったのさ。

 

その時僕はもうキーホルダーのことはすっかり忘れるくらい多忙になっていてね。


思い出した時はもうどこを探しても無かった。だから、、


僕の中ではもうあれはきっと夢だったんだなって、そう思ったんだ。」





二人は洗崎の話を一言も発さずに聞いていた。

そしてその話にきっと嘘はない。二人はそう思った。

しかしこの話が本当だとすれば、洗崎はキーホルダーを送っていないことになる。

つばさからのメールで桜子が送り主ではないことも明らかになった。


念には念を入れ、りおはさらにもう一つ聞いてみた。




「あの、もう一つだけ聞きたいんですけど、封筒には差出人に『株式会社ブリリアント』と書かれていました。

会社の他の誰かが送った可能性はありませんか?」




「いや、会社から部外者へ個人宛に封筒を送るなんてことはほぼ無い。それに、いずれにしても僕たちが

封筒で何かを送る際は茶封筒ではなくて、この会社の水色の封筒を使うんだ。

だからそれは確実に言えるよ、僕たちが送ったものではない。」




りおはさらに続けて桜子との関係も聞いてみた。

今回の本題と言えば本題だ。


そして洗崎は話を続けた。




「あ、あーそれはね、、。こんなこと君たちに話すのもアレなんだけど、桜子ちゃんのお父様と僕は秋葉原再開発反対派の役員だったんだ。

 

その頃から藝淑家とは長い付き合いでね。僕は離婚した妻との間に桜子ちゃんと同い年の娘がいるんだけど

 

恥ずかしながらまだ娘が1歳ぐらいの時に離婚して、それから1度も会えていないんだ。


だから桜子ちゃんは娘のような存在なんだよ。それを知っているお父様は自分の多忙の間は、

娘を遊びに連れて行ってほしいと言ってくれたんだ。」




りおときいはなるほど、と大きく頷いて見せた。

それを見た洗崎は頭を押さえながら恥ずかしそうに笑った。


思っていたよりもずっと暖かくて優しい人だ。りおもきいもそう思った。

大物監督のオーラをまといながらも、時折子供のような笑顔を見せる。

そんな洗崎を少しでも疑っていた自分たちが恥ずかしい。

二人はきっとそう思っていた。


きいはふと洗崎の使っていた机に目をやる。

すると一枚の写真立てが置いてあった。よく見てみるとその写真には、まだ生まれて間もないであろう2人の赤ちゃんの写真だ。





「ぁ、、、あの、、よ、よねやましゃん、、、あ、、あの写真て、、、」




「あ、あーそうそう、僕の娘さ!」




「ふ、、、ふたごで、、、、でしゅか?」




「うん!双子!、、、だったんだけど、、。生まれて間もなくお姉ちゃんのほうは亡くなってしまったんだ。

短くても彼女が生きていた証を持っていなければいけないし、覚えていなきゃいけないと思ってね。

それであそこに。

僕がどの作品においても命の大切さを伝えてきたのはこういうことなんだ。」



洗崎の話ですこし空気が沈んでしまった。よからぬことを聞いてしまったと2人も顔を顰める。

しかし洗崎はその空気を変えようと話題を変え、再度話し始めた。




「そ、そうだ!これは桜子ちゃんにも話したことがあるんだけどね、僕が過去に構想した作品で、それはそれは壮大にボツになった作品があってね。

 

僕らに原案下ろしてくるシャルムってあるでしょ?実はそのシャルムが魔法協会なんだ。

 

そしてそこが運営するシャルム学園。実はそこが魔法少女を育成する魔法学校。


だからシャルムが下ろしてくる原案はすべての実話に基づいている!


ていう物語を企画して上に上げたらシャルムからNGが出たんだ。ははは。


そりゃそうだよねー、実名だしさ。でも面白いと思うんだけどなー。」




2人は洗崎の企画に驚愕した。なんとするどい視点。さすが名監督だ。

今喋ったら声が震えしまう。

しばらく言葉を押し殺し、落ち着いてからりおが質問をした。




「そ、、そそ、それで、、桜子は、、なんと?」




「あー、なんか微妙な反応だったかな。すぐに用事を思い出したとか言って帰っちゃったし

あまり覚えてないな。ははは。」




ー そりゃあそうだろうな ー




「まあ今日は楽しかったよ。何年か前から桐島とは疎遠でねぇ。だからりおちゃんにももう会えないかと思ってたんだけど、まさかこんな形で会えるとはね。ハハハ。」



「そうなんですか?あたし最近はあんまりお父さんと会えなくて。」



「ああ、そうかそうか。いやー、、本当のところはね、僕だって揉めたくはなかったんだけどさ。

桐島のやつ、アイドルものにのめり込んでからどうもおかしかったんだ。

なんかこう、、、何かに取り憑かれた感じと言うかなんと言うか。

僕は秋葉原再開発に並行して『アイドル文化』にも断固反対だったから尚更ね、、、」



「アイドル、、、ですか、、、。」



「、、あれさえなければきっと今もっと、、。

あー、、うんああごめんごめん!せっかくの再会が台無しになってしまうね!今日はもう遅いし帰ろうか。

またいつでもおいで。りおちゃんも、きいちゃんも。」



亡くなった娘の話をする時でさえ笑顔を絶やさなかった洗崎の顔から笑顔が一瞬消えたことを、

りおもきいも見逃さなかった。


何となくではあるが、話が見えて来たようにも思える。





ちあきとつばさ、りおときいはそれぞれ別に家路に着き、

キーホルダー送り主の特定を急いだが、そう時間はかからなかった。






「上原さん!」



「あー、なんだ洗崎。」



洗崎は嬉しそうに上原へ話しかけ、冗談交じりでこう言った。



「あの子たち、やっぱり15年前のあの時の子たちですよ!」




「はー?何を言ってるんだおまえは、、。まったく、、変わっとらんな、昔から。」





ー そう、僕の物語が本当であるならば、君たちは世界を希望へと導く魔法少女だ。 ー



洗崎護を名監督へと押し上げたもの。それは、キーホルダーでも落書きでもない。

彼自身の夢と希望、そして奇跡を信じる力が世界を認めさせたのだ。




続く

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ