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魔法少女☆ソルシエ  作者: Rio.K
19/38

17話 ーもっと深い絆ー



ーいただきまーす!!ー



合宿最終日の昼食。

メニューは「ワラジ虫の天ぷらそば」、「イシガキトカゲの炊き込みご飯」だ。

初日にあれだけ拒絶を示していたゲテモノメニューに、ケチをつける者はもう誰もいない。

あろうことかりおとつばさにいたっては、炊き込みご飯をおかわりまでしている。


人間というのはまだまだ未知の生物かもしれない。

「慣れ」というたった二文字の言葉に乗せてどこまでも行けるようだ。


見たことの無い場所よりも、見たことの無い場所に行けない自分のほうがよっぽど怖いのだ。




ー ごちそうさまでしたーッ!! ー




昼食を済ませシルフとエルフの休憩の世話をしたあとは、いよいよ合宿最後の午後の部だ。

通常であれば「矯正トレーニング2」を受講する予定なのだが、

最終日はどうやら違うらしい。

シルフとエルフは席を立ち、テーブルの横に整列した。



「本日は最終日です。よって午後の部は4人合同での最終強化トレーニングになります。」



合宿の生活にようやく慣れてきたのも束の間、4人の緊張感は一気に高まった。



「エルフ、皆さんを例の場所へ。」



「わかりました。」




1日目、2日目と夜のペナルティ以外の案内は全て使用人と呼ばれる者が行っていたが、今日はエルフが案内ということで4人はさらに緊張感を高める。と同時にこのあと何か大きなことが起きるのでは無いかという直感が頭をかすめた。



エルフのあとをついていく4人。心臓の音が大きくなっていく。

早くはなっていないのに、大きくなっていく。



「着きました。中へどうぞ。」



そう言うとエルフは石でできた大きな扉を開けた。

そしてその先の光景を目にした4人は一瞬固まってしまった。。

最初に言葉を発したのはつばさだ。



「こ、ここは、、、なぜ、、、、」




そこに広がっていたのは、4人が懲罰合宿を命じられる原因となった際に時間遡行で行った大阪の小学校だった。

確かに建物内の扉を入ったはずなのにあっという間に大阪にいる。

異様な光景と状況に言葉が出てこない4人。

そこで待っていたシルフは4人へ説明を述べた。



「ここは、あなた方がこの懲罰合宿を受講する大きな理由となった事件の場所と状況を、協会最新鋭の技術で丸々模作したものです。

時刻は10時15分、あと5分で事件が起きます。

プレットのステータスと戦闘力も当時と全く同様に 再現してあります。 」



予想だにしなかった状況だ。しかし4人はすぐに戦闘態勢に。



「さあ、これが卒業試験です!ソレイユ・ルヴァンは現れません!4人だけであのプレットを討伐するのです!」



この合宿で初めて培ったものがある。

それは合宿以前の4人よりも強固で確かなものだ。

なぜなら、それまで自分たちが目をそらしてきたことから向き合ったことで生まれた「新たな友情」を見つけたからだ。



「来た、、、みんな、行くぞ!」



ー 一つ、苦手なモノなどは錯角にすぎない。自分を信じれば何だってできる。ー



「わ、わわわ!りおちゃん!次はそっちへ!」



ー 一つ、できないことを恐れない。何があっても前を向くこと。ー



「うっしゃー!!おー、いい感じいい感じー!きい!やっちゃってー!!」



ー  一つ、大切なものを守りたい気持ちはいつの時代も強く美しい。 ー



「と、とらえたでしゅ!」



ー 一つ、人知れず心熱くあれ ー




「りお!きい!今持てる全ての魔力をちあきへ送れ!!!!」




ー 一つ、光の射す方へ走れ  ー





3人の魔力はちあきへと結集した。

それに答えるようにちあき自身の魔力はその周辺の時空を歪めるほどの力を帯びた。




「お願い、もう誰も苦しめないで。私が守るから。」



その瞬間ちあきは、強くやわらかな光に包まれた。

限りなく白く、とても優しい光だ。


プレットはその光に吸い込まれていくようにゆっくりと消滅した。




ー ピー!!!そこまでです!!!! ー




エルフの試験終了の笛が鳴った。

ちあき以外の3人は激しい魔力の消耗でその場にうずくまっている。


ちあきを取り巻く光が徐々におさまっていく。



「エルフ!急いで処置を!」



「はいシルフ。」



3人は気づくと病室のような場所のベッドに寝かされていた。




「あ!やっと起きた!みんな大丈夫!?」




しばらくするとそこへシルフとエルフがやってきた。




「みなさんの合宿はこれで終了です。もう少しすれば普通に動けるでしょう。

 最後の夜食を用意してあります。

 動けるようになったらダイニングへ来てください。」



そう言い残しシルフとエルフは去っていった。




「よかったー!心配したよー!」



ちあきは目に涙を溜めながら3人へ語りかける。

最後の瞬間は3人はおろか、ちあきですらも記憶が曖昧らしい。



「わたしたち、、、やったのか、、、?」



「うん!完璧にプレットを消し去ったって!」




つばさはなぜ最後にちあきに全てを任せたのか、

りおときいはなぜすぐにそれに従ったのか、

全く覚えていないようだ。



しかしこれだけはハッキリしている。

あの時そこにいた全員が最後の一撃を迷わずちあきに任せた。

これっぽちの疑いもなく、まるで最初から決められていたかのようにそれはちあきに渡った。

それが何を意味しているか、それはちあき以外の3人は重々にわかっていた。



『光の射す方へ走れ。』

それが答えだった。



ー スタスタスタ、、。  ー



4人はダイニングの大きな椅子へと座った。

合宿最後の食事だ。

もうなにも怖くはない。自分だからじゃない。4人だからだ。



「皆様、本日はおつかれさでございました。合宿最後の食事になります。

 我々なりに皆様のことを考えメニューを厳選させていただきました。

 さあ、お蓋をあけお召し上がりください。」




どんな困難が訪れようと、絶対に越えられないであろう壁が目の前に現れようと、

一度冷静になり周りを見渡してみてはいかがだろうか。

そうすればまず、決して自分が一人ではないことに気がつくはず。


それに気づき、もしそれが仲間の力だと感じたのならば、その一人ひとりはかけがえのない財産に間違いない。





「本日のメニューは、アシダカグモのフライと、コウモリの丸焼きです。」




ー いっただっきまーす!!!! ー




この日4人はペアで別れ寝室に向かったあと、使用人の目を盗んで部屋を移動し4人同じ部屋で就寝した。

シルフとエルフはそれに気付くも、部屋の前まで行ったが何も言わずにその場を後にした。



ー 翌日 ー


「おはようございます。私どもは今回のこの3日間の合宿で、なにかの形で皆様のお力になれればと思い

 講師の任務を遂行してきました。

 皆様が二度と同じ過ちを犯さないようにという思いが第一ですが、どうかこれからもプレットの討伐を含め、世界を良い方向へ導けるソルシエになっていっただけるよう強く心に願っております。」





シルフはそう言うとそそくさとその場を去っていった。





「お、終わったんだな、、、やっと」




つばさが思わず口を開き心から本音を漏らした。

それまで入っていた肩の力が抜け、研ぎ澄まされていた神経が徐々に丸みを帯びていくような気がした。



それに追随するように3人は無言で「うんうん」と頷いている。




その場に残っていたエルフが4人を帰りのシャトルバスまで見送る。

使用人と共に荷物をバスに積み込む4人。



ー どうも、ありがとうございました!!ー




4人は声を揃えてエルフと使用人に一礼をした。





「もう二度と、ここへは来ては行けませんよ。それから帰りにこのしおりを読みながらお帰りくださいね。」




再び一礼をする4人。

そしてシャトルバスはシュトラフ石垣を出発した。





バスを見送るエルフと使用人の元にシルフはそっと現れた。




「エルフ、昨日の国望さんの光を見ましたか?」



「はい。やはり、本物でしたね。」



「ええ。映像を解析する前にすぐにセシール会長へ報告しましょう。

それからあと『もう一人』。それは解析後に。」




4人は帰りのバスの中、エルフに渡されたしおりを読みながら雑談に勤しんでいた。




「えーっとー、なになにー??帰りのバスの中は?笑顔を絶やさないように、、、」





記載された通りに笑顔を絶やさないように会話を続ける4人。

すれ違う車から見るととても楽しそうだ。

自分が自分であること、4人が一緒にいれることに心からの喜びを感じた。

この合宿はそれを再確認できる良い機会だったのかもしれない。


振り返れば、一見ただの懲罰合宿であったかもしれない。




「あー!きい!それはただの悪口ぃー!」



「しょ、、しょんなちゅもりは、、、」




しかしこの合宿で得たものはとてつもなく大きいことを彼女たちはまだ知らない。




「おいちあき!笑顔が引きつっているぞ!しおりには自然にと、、、」



「ごめんごめん。こ、こうかな、、、?」




自分達ならどんな遠いところへも行ける。

そんな気がしていた。





続く

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