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魔法少女☆ソルシエ  作者: Rio.K
10/38

10話 ー過去からのおくりものー


3人はりおが口を開くのを今か今かと待っていた。

りおもどこから話そうかと第一声を選んでいるところだ。


「あのね、、実は、、、」



りおが男達から聞いた話はこうだ。


まずラブレイブは制作段階でキャラクター原案と演出に『洗崎護』を起用していた。

ムーンライトの敏腕プロデューサーでりおの父である『桐島守』と、当時から名監督として名をあげていた洗崎が監督としてではなくキャラ原案兼演出という

今までに無かったポジションに多くの注目と期待が集まった。

しかし一方では心配の声も。

桐嶋プロデューサー×洗崎監督という黄金コンビだが、初めて洗崎が監督を降りた。

「もめたのか?」とネットは一時炎上していた。

ファンの予想は的中し、公開前に突然洗崎護が降りたことにより企画は振り出しに。

アニメは制作自体が延期になり、当面PV付きで楽曲をリリースするという小企画に変更せざるを得なくなった。




「りおちゃん、質問。さっきから『せんざきまもる』って普通に出てきてるけどそんなに有名な人なの?

 わたしラブレイブ好きだけどそんな話は噂ですら聞いたことないよ?」



「まあまあ、ちあき。急がない急がない。」



ごく普通の演出家の一人だった洗崎は、あることをきっかけに一気に名監督への階段を駆け上がることになる。

それまで洗崎は数々の作品の絵コンテや演出を担当するがどれも泣かず飛ばず。

なんとか魔法少女作品の監督を2本やるも、大きなヒットを飛ばすことはなかった。

しかしそんな日々はある時一変する。

ある魔法少女作品ファンが「魔法少女ミラクル☆ソレイユ」でとてつもない発見をしたのだ。

それというのが、以降15年の間(2001〜2016年)に放送された作品の中の魔法少女が、ソレイユのある話の中に何人も登場していたのだ。

登場といってもシティハンターのあの一件のような0コンマ数秒だ。

それもちょっと似ているといったレベルでは無い。顔はもちろんのこと、衣装やアクセサリー、髪型、全てがそのまま一致していた。

違うところといえばそれぞれの色彩設定ぐらいだ。



「おい!ちょっと待って!それってもしや!おまえのあの時の落書きが!」



「、、へへへ、、そういうこと。」





<15年前の作品に、その時いるはずのない人気魔法少女たちが集結していた。>


この衝撃の事実は瞬く間に日本中を駆け巡った。

ブリリアントには問い合わせが殺到。キャラクターが制作会社の垣根を越えてしまっているため

当然ながら「偶然です」というコメントしかできない。

しかしファンや掲示板は炎上を続ける。最終的にその注目はどこへ集まったのか。

それがまさにその回の制作進行を担当した「洗崎護」だ。

彼が監督 洗崎護と同一人物であることが発覚するのに時間はかからなかった。

洗崎は疑惑の否定を続けたが世間は「奇才洗崎」「未来に切り開かれた男」など異名は一人歩き。

過去作品は再び注目を集め、数々の記録を残し、

新規の監督作品は全て大ヒット。あっという間に巨匠へと上り詰めた。




「お、おまえとんでもないことを、、、」



「つばさちゃんごめん、、あの時は私も、、、」



「そうだった、、、おまえら、、、、

 でもそれと秋葉原となんか関係があるのか?確かにかなり大きなことだが直接的な因果関係が見えないぞ。」



「あー、、あたしもそう思ってたんだけどさ。関係大ありなんだよね。」




キャラ原案の洗崎が降りたため、ラブレイブは制作中にキャラクターの版権を巡り裁判沙汰へ。

版権はムーンライトにあると同社は主張したが、洗崎は2002年に自主出版していた同人誌を資料として提出。

その同人誌にはラブレイブのキャラクターと全く同じキャラクター、表紙には色彩まで一致した9人が描かれていた。

裁判所は版権が洗崎にあると正式に判断。ムーライトと洗崎は示談で和解し、ラブレイブは制作を一時中断。

ムーライトとブリリアントは業務提携を決裂した。

同時期に制作が発表された洗崎監督の「マギアフロッシュ」は主要キャラクターが9人だったことから、ファンの間では

<本当はこの9人がラブレイブだったのではないか> と注目を集め大ヒット。

一方ラブレイブは、キャラクターが抜きとられた駄作になるという噂が広まり、あらゆる面で総スカンにあった。

しかし会社と桐嶋の意地とプライドで現在もコンテンツは続いている。





「てな感じ。どう思う?」



「うん。よくわからないな。」



確かに。15年間の間に何があったのかはだいたいわかったが、秋葉原や他のことに対して何がどう関係しているのかはわからない。

しかしりおはまだ何か言いたそうだった。正直もうわけのわからない話はごめんだし、これ以上話をややこしくしても解決策から遠ざかるだけだ。空気を察したつばさはとりあえず今日は切り上げようと席を立つ。



「よーし!今日は一旦このぐら、、、」



「わたしは!」



つばさを押さえつけるかのように声を上げたのは意外にもちあきだった。



「わたしは、、なんとなくだけど今の話を聞いて思ったことは、、、。

 りおちゃんの前ではすっごい言いづらいんだけど、、、ラブレイブに大きな原因があるんじゃないかなって思う」



申し訳なさそうに言葉を発するちあき。それもそのはず。りおの父親の作品に原因があるとハッキリ言っているのだから。

しかし友達思いのちあきがこんなに言うぐらいだと、3人は思っていた。だからこそこの意見を尊重し考えねばと。

そしてりおは言った。



「よく言ったちあき!」


「え?」


立ち上がるりおの意外な反応に口を開けたまま顔を上げるちあき。

つばさも心境は同じだった。きいも頷いている。




「あたしもそう思っていたところだよちあき!何が言いたかったかというと、

 これが当たっているかどうかはわからないけど、秋葉原が改変されたと同時に、比例して変わったことはラブレイブの勢力なんだよ!

 もしかしたらあれを無きものにすればこの秋葉原も、、、」



「それはダメだりお。いくら制作関係者の娘でもそれはいけない。どんな作品でもそれに感銘を受け

 人生を変えられるぐらい愛している人たちがいるんだ。私たちにそれを奪う権利は無い。

 第一、たった一つのアニメ作品をどうこうしたからといって街一つが変わるっていうのか?

 そんなことはありえない。そんな簡単なはずは無いんだ。」




考え続け黙り込む4人。

どうすればいいのか各々が真剣に考えるが言葉さえ出てこない。

と、その時だった。


ーピンポーン!ピンポーン!ー



インターホンの音が聞こえてきた。



ーピンポーン!国望さん、お届けものですよー!ピンポーン!ー



「あ!はーい!今いきまーす!」



管理人が宅急便で届いた荷物を持ってきた。

ちあきはそれを取りに行こうと部屋を出る。



「とにかく、もうここらへんにしておこう。これ以上むやみに過去を変えたりしてはいけない。

 半分ぐらい秋葉原の街も元に戻ったんだ。それでいいじゃないか!」



「だ、、だだ、ダメでしゅよ、、つ、つばしゃしゃん。ちゅ、中途半端はだ、ダメでしゅよ。」



「きい、、、?」



珍しく意見をするきいに驚くりおとつばさ。

きいもまた秋葉原をこよなく愛する一人だ。

口数が多少すくないぶん熱いものを持っている。

しかし確かに考えものだ。むやみやたらに過去を変えてはいけないことは確かだ。

反対に、たった数年で変わり果てた秋葉原も異常であり、なにか良からぬことや物が絡んでいる可能性も高い。



「大変たいへん!!!たいへんだよーーーー!!」



ちあきの叫び声が寮の隅から隅まで響き渡る。

他の部屋の住人もドアを開けて確認するほどだった。

ちあきは走ってつばさの部屋に向かう。

そして凄まじい勢いでドアを開け、



「みんな!これ!」



ちあきはそう言うと小さな封筒をみんなに勢い良く見せた。

3人はポカンとしたがりおが近寄り封筒をよーく見た。

その瞬間りおは驚愕の表情を見せた。



「う、うう、嘘でしょ、、これ。」



封筒の差出人部分には<制作会社 ブリリアント>と書いてあった。

それには全員が驚いた。特に先ほど作戦中断を醸し出していたつばさは珍しく同様している。


「なぜだ!誰だ!誰から何が届いたんだ!」



「う、うん。会社名しか書いてなくて名前は書いてないよ。ちょっと開けてみるよ。」



「待て!危険な物かもしれない!貸してみろ!」




これは異常な事態だ。怪しいにもほどがある。

全く接点が無いはずのブリリアントからタイムリーに荷物が届いた。

誰かに監視されている?だとしたらいったい誰に?なんのために?




「なーにやってんの、こーゆーのは大胆にほら、」



りおがつばさから封筒を取り上げ素手であけようとする。



「お!おい!りおやめろ!」



ーベリッ、、、ー




「ほーらなんにも起こらない。勘ぐりすぎー。」



確かに封筒を開けてもなにも起こらなかった。

ほっとする3人。中身も気にならないぐらい安堵の気持ちでいっぱいだった。



「ん?なんじゃこりゃ?キーホルダー?てか汚なッ!あれ、これって、、、」



「あ!りおちゃんそれ私のだ!ラブレイブの!」



「おい、おまえら、、、どれだけめちゃくちゃをやる気なんだ。」




なんとなく点と線が繋がってきた。

つまり話はこうだ。


<りおとちあきが原画&動画に落書きをした=通常有り得ない奇跡の回を生み出した=洗崎護は浴びるはずのなかった脚光を浴びる>


<ちあきがキーホルダーを落とした=洗崎はそれを拾いピンと来て自身の同人活動に役立てる=ラブレイブのキャラ原案を変える原因になった>




「行くぞ。私達が行った直後のブリリアントにもう一度。次に確かめるべきは洗崎護だ。」



「おお?つばさー、さっきと全然違うこと言ってるぞぉー?」



「違う!そうじゃない!おかしいだろ、ご丁寧に知らないはずの名前と住所まで書いて、しかも15年後こんなタイムリーに届いたんだ!あと気づいていたか?荷物と同等の大きさの結界魔法の痕跡があったのを」


結界についてはここは魔法学校の寮内だ。誰かの荷物に当たったり学園内の機関を通る際に微量な魔力や結界の痕跡が残ってもおかしくはない。。

しかしつばさの言う通り住所と名前は説明がつかない。

これは直ちに確かめる必要がある。ただ今まで以上に慎重にならなければならない。




「行こう、秋葉原へ!」



時刻は夜の11時。すでに外出禁止の時間だが4人は誰もそれを指摘せず、こっそり外へ出かけていく。

それはそれは楽しそうに。

仲間を思い、街を思い、4人はいつもの道を歩いた。



続く


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