フレンド
「うっ・・・」
佐藤勇人は気だるい体を起こし、背筋を伸ばした。
「もう朝の9時か・・・」
カーテン越しからは最近見ることの減った朝日が差し込んでいた。勇人はそんな朝日を煩わしく思いながらもベットから体を抜け、カーテンを開ける。
窓の外には遅刻しそうなのか、慌てて走る小学生を見つけた。
「ふっ、学校なんていっても何も意味ないのに、馬鹿な奴らだ」
勇人はそんな小学生をあざ笑うかのようにゆったりとしたペースでパソコンに電源をつけた。
一応高校生という分類に分けられるはずの勇人だが学校には行っていない。理由は単純に意味がないからだ。
学校生活とは先生から大学受験にしか役に立たない情報の提供の他に、集団生活を学ぶという目的がある。しかし、大学に行く気もなく、そして集団生活に関しては、勇人の立場ではすでに『終わっていた』
勇人はそう自分に言い訳をしながらいつものように部屋に引きこもる。初めの頃は意味しえぬ罪悪感と将来への不安から胃がキリキリと痛んでいたが、もう一ヶ月以上経つと今までの生活の不自由さを馬鹿にした。
大体朝イチで投稿されていたネットの目ぼしい動画を確認すると、勇人はベットの上に無造作に投げられた携帯に手を伸ばした。この時間になると大体親からメールが届いている。内容はご飯についてとこちらを心配するような文面だけだ。未だに社会に復帰できていない愚かな息子に掛ける暖かいメールだけは未だになれることができないでいた。
「・・・!??」
勇人は気づいた。母親からのメールの一つしたの欄、つまり母親からのメールより前のメールに見たことのないアドレスからメールが届いていた。時刻は午前の3時、普通のセールスのメールにしてはおかしい時間体だ。
件名には『あなたのお友達』と書かれており、それだけで勇人の警戒心はMAXになった。
「俺の友達だと? ふざけるな! 俺が何で登校拒否をしているかわかってんのかよ」
勇人は思わず携帯電話に叫んだ。しかし、答えなど返ってくるはずもない。久しぶりに叫んだ所為か、すぐに息を切らし、その間に頭は冷静になった。
「こんな意味のわからないメールは削除しとくか・・・」
誰に言ったわけでもない言葉。ある意味引きこもってからの一番大きな変化は独り言が増えたことかもさいれない。勇人はそう思いながらタッチパネルを操作しメールのメニューを開く。
『削除しますか?』そう書かれた文面に『はい』という文字を押そうとしたとき、突如聞き覚えのない声がした。
「いや、いくらなんでも遅いですよ、何時間待たせる気ですか! こっちは思わず寝ちゃったっ・・・・、って、何でいきなり削除しようとしてるんですか!? やめてください! タイム!! ストップ!! 温暖化!!」
突如聞こえた女の子の意味不明な言葉はどうやら携帯電話から聞こえているらしい。ますます怪しい・・・。
勇人は意を決して『はい』と書かれている画面に触れた。しかし、出てきたのは受信メールの本文の画面だった。
「いやー、今のは危なかったですよ? 天才的でクールビューティーな私が咄嗟に機転を利かせて画面をいじらなかったら、私消えちゃうところでしたよ? いやー、本当に危なかった」
女の子の声は先ほどより鮮明に聞こえる。
勇人は今開かれている画面をよく見た。
『あなたのお友達
あなたは友達がいなくて困っているでしょう。ですからこの人工知能を持つアプリ『フレンド』をあなたに与えます。少し煩くて、めんどくさくて、鬱陶しいですが、話し相手ぐらいにはなると思います。仲良くしてあげてください』
「はぁ!?」
ほぼ説明のない一歩的な文章に勇人は呆れと困惑の表情を浮かべた。それを見た人工知能のアプリ『フレン』はしゃべった。
「そういうことですから、これからよろしくお願いします。私は『フレンド』という名称なので気軽に『フレン』って呼んでください。
「・・・・・」
もう理解の追いつけない勇人は諦め一つの行動を起こした。
困った時の電源長押し、フレンと名乗る少女は画面と共に消え去ったのだった。
ご視聴ありがとうございます。みなさんのアクセス数を見るのをかなり楽しみにしています。常連さんが増えるように面白い小説を書いていきたいと思います。
最近野良猫と『だるまさんが転んだ』をするのに嵌っている私です。今のところ私が勝ったことは一度もありません。誰か、必勝法を教えてください。
一応本編スタートです。とは言っても、まだ何も始まっていませんが・・・。
是非、次回でもお会いしましょう