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sideA  作者: lui
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5話

「おい、起きろ。」

私の体をゆする大きな手。目をこすりながら体を起こす。

「んー…まだ夜じゃない…。」

小言をもらす。今日はもう歩きつかれたのだ。

この国に着くのは日が落ちる前のことだったが、連日の移動に私の体は(主に足が)悲鳴をあげていた。

「昼過ぎから寝てるだろ。おんぶまでさせやがって。ほれ、窓の外見てみろ。」

そう言われ、宿の部屋の窓から外を見る。

外は夜だった。夜だったのだが、

「あー!そうだった!」

「お前が来たがってたんだろ。」

「ほしくず祭だー!」



この国の祭りは有名だ。

あまり噂の行き交う世の中ではないが、それでも知れ渡るほどにこの祭りは有名なのだ。

私も彼に話を聞く前から知っていた。道中にこの国があると聞き、しかも祭りの時期と重なると聞いて、私が彼に旅の早い進行をせがんだのだ。

その結果が、連日の移動につぐ移動だった。

結果的に私は彼の背中で寝ていたのだが。


「バーブ!ほらほら、早くっ!出店回りましょ!」

「金はあんまりないからなー。欲しい物あったら、しぼれよ。」

この国の一番大きな広場に出る。出店がそこらじゅうに出ている。

果実の飴、どこかの国の民芸品、肉を焼いたもの。

色んな物が売っている。

しかしそれ以上に珍しいのが。

「ビア、お前見落としてるみたいだけど、わかってるか?」

「なにー?」

「この出店たちを灯してる明かり。全部ほしくずだぞ。」

「えっ、ほんとにー?」

「ほら、そこの店見てみろ。」

そういってバーブは出店の一つに入る。

仮面売り場だ。いや、私もどうかと思うよ?お面ではなく、仮面売り場だ。怖い仮面がたくさん売ってある。もう少し入る店選ぼうよ。

「これだ。」

そう言ってバーブは店の入りしなに天井にくくりつけられていた光る瓶を手に取る。

瓶の中身は布でいっぱいだ。

「ほしくずの光が強すぎるから、布で遮光するんだ。そしてちょうど良い光の加減にする。」

「へー、本当はもっと明るいの?」

「これでも薄暗いくらいだ。とれたてのほしくずは眩しい。大きな物になると直視すると目が焼けてしまう。だから、特殊な眼鏡をかけて採取するんだ。」

バーブは物知りだ。いろんな所を旅してきたからだろう。

いろんな事を教えてくれる。話していて飽きない。

まあ、正直話が長い時もあるし、難しすぎてわからないこともあるんだけど。


そんなこんなで祭りを楽しんだ。

バーブに射的でとってもらった仮面をつけている。

怖い。

怖いから自分から見えないように後ろ頭にくくってる。なんか、どっかの部族の仮面らしい。怖い。隣の人形がほしかったのに。

あと、饅頭を買ってもらった。飴がよかったのに。

でも甘くて美味しいからいいや。どこかの遠い国の名産品らしい。

「ねえねえ、やぐらってあれ?」

「そうみたいだな」

ほしくず祭の一大イベント。ほしくず採り。

一年かけて、おっきいやぐらを組んで、その上から更にながーい棒を何人かで支えながら持つ。それでほしを揺するらしい。

そしたらほしくずが落ちてきて採れるんだって。採れるらしい。採れるのかな。

「他の国じゃ採れない理由があるんだ。この国の、あのやぐらの立つ位置。あそこの上にこの世界で最も低いほしがあるらしい。だから、頑張って高いやぐらと長い棒を用意したらとれる、らしい。」

「それ本当?」

「…本当、らしい。」

バーブも半信半疑だ。

というか、この祭りで採る現場を目にした人以外はみんな半信半疑だ。だって、ほしはすっごく高い位置にあるからだ。でも、やぐらの真上に明るく輝くほしがあるように見えるから、あながち本当なのかもしれない。まあ、それもすぐにわかる。

そして、そのほしくず採りが始まる。


「バーブ怖い。」

「いや、こう言うのをカッコ良いと言うんだ。もしくは渋い、だな。」

ほしくずが落ちてくる所を直視すると、小さいほしくずでもだいぶ眩しい。

もしも大きなほしくずが落ちてきたら明るさで目をやられてしまう。

だからほしくず採りをみる時は必ず特殊な眼鏡をかけないといけない。

さぬぐらあす、というらしい。間抜けな名前だ。眼鏡のガラスが真っ黒になって眩しさを軽減してくれる。普通は日差しのきつい昼間につけるものらしい。怖い人がつけると更に怖くなります。ちなみに私も少しぶかぶかだけどもちろんつけている。出店で売ってたのを買ってもらった。

「なかなかいいじゃないか、この眼鏡も。度が入っていないのが気に入った。」

「普通の方が良いんじゃないー?眼鏡、似合わないよ。」

「お、はじまるぞ。」

やぐらの周りは立ち入り禁止になっている。ほしくずがあたったら危ないからだ。だから私達も少しはなれた場所から見ている。そんな私達にも見えるくらい長い棒が、夜の闇にまっすぐ伸びていく。

やぐらもすごく高いが、棒もそうとう長い。

それのバランスをとりながら数人で支え、持ち上げるので大変そうだ。

最初に誰がこれを出来ると思ったんだろう。


「あっ」

流れぼし…じゃないっ!?

輝く一線が夜空を一刀両断した。

轟音。

とたんにやぐらの周りが昼のように明るくなる。

観衆のざわめき。

すぐに事態を理解し、喜びの声が上がる。

「すっごい…」

「いやはや…」

本当だったんだ。

二人声をそろえて言い、笑い出す。

そして再び暗くなった空を見上げると、無数のほしくず達が雪のように降ってきていた。

そのほしくずの雪の間を雨の様に流れぼしが駆け抜ける。

うるさいのは最初だけ。あとは静かになる。

そんなことを聞いていたが、まさしくその通りだった。

ほしくず祭。

世界で一番有名な祭りは本当だった。


ほしくずの雨がやんで、雪はまだ降っていた。

その頃には昼のように明るいやぐらの周りへの立ち入りは許可されていた。

「綺麗ー!だけど近くで見ると眼鏡越しでも眩しいわね。」

「そうだなあ。」

眩しすぎて近づけずにいると、町の人が近寄ってきた。

なにやら今採れたてのほしくずを瓶につめて、綺麗に見やすくして売ってくれるらしい。

「買ってー!買ってー!」

「はいはい、まあこのために来たからな。お前のと、照明用と、あと交換用にいくつかもらっておこう。」

バーブは店の人と何やら話している。

ふふふん。嬉しいぞお。こうやってきちんとした物を買ってもらったのは初めてじゃないかなっ。

そう自慢げに思って後ろ頭に手をやると仮面に手が当たった。

ああ、二回目だった…。

なんか、複雑ー。


「ほれ、これ。」

といって渡されたのは、綺麗な色に光る瓶だった。

「えっ、ほしくずって一色じゃないのっ?」

「一緒に色付のガラスを入れてもらったんだ。そうすることで、いろんな色に光る瓶の完成だ。」

瓶には紐がついており、首にかけることができた。

試しに付けてみた。

「…似あう?」

「おお、可愛いじゃないか。いいね。」

ふふふふふん。思わずにやけてしまう。

「それにやっぱり綺麗だな」

おおおおっ!?

「ほしくず」

このやろー!

「ソウダネー」

「なんだよ、せっかく買ってやったのに何で少し微妙な顔するんだよ。」

「イヤベツニナンデモナイヨ」

そんなどうでもいい事を言いながら、改めて瓶を見る。

うん。綺麗だ。まあ、許してやろう。

ありがとうバーブ。

一緒にお祭りに来られて、嬉しかったよ。


それから少しの間、落ちてきたほしくずを見て周った。

最初に落ちてきたほしくずは、もはやほしくずという大きさではなく、ほしそのものだった。

私くらいの大きさはあるんじゃないか?

もっと大きいかも。なんか、この大きさのほしくずが落ちてきたら色んな意味でやばそうだけど、大丈夫なのかな。

一番近くにあるというほしが、いつかなくなるんじゃないかな。

またバーブと来るまであってほしいな。

そんなことを空に輝くほしに願った。



私は気づいたら寝ていた。

そういえば歩き疲れていたんだった。

おんぶされている。

口笛が聞こえる。

あんまり上手じゃないけど、楽しそうだ。

何の曲なんだろう。

私は歩みの揺れを感じながら、また眠りについた。


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