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sideA  作者: lui
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2話

心から出た些細な疑問。

それは日に日に大きくなっている。

俺はなんでここにいるんだ?


周りには恵まれている。

友人、恋人。

なんの不満もない。

仕事もまあ、それなりにどうにかやっている。

給料も悪くない。

何が不満なんだ?


大きなため息をつく。

最近はこんなことばっかりだ。

ある時本屋で一冊の本が目に入った。


タイトルは覚えていないが、一流にはどうなるのか、といった文言が表紙にあった。

どこにでもある本だ。

内容もそうたいした物ではない。

自己管理法や、コミュニケーション術などなど。

普段なら目に付くような本ではない。


なら、何故それが目に付いたのか?

簡単なことだ。

俺は自分が一流ではないことに気づきつつあったからだ。


誰しもいつか気づくこと。

でも目を背けたかったこと。

職業人として、友人として、恋人として。

人として。

俺は一流だろうか?

周囲の人からもらったものを、周囲の人に還元できているだろうか?

何も一流じゃなくても構わない。

要は自分が最大限努力していると、ベストを尽くしていると言えるのか?

日々をなんとなく過ごしてはいないか?

俺は今ここで与えられている幸せにただ満足し、向上心を忘れているのではないか。



それに気づいてから、仕事を今までよりも頑張った。

誰よりも働き、誰よりも結果を残せるよう。

恋人にも愛情をひたすら注ぎ、友人には頼れる存在であろうとした。

事実、それをこなしていた。

俺は十分にそれらのことをやっていただろう。


それでも、人間は完璧ではない。

仕事では小さなミスも気になるようになり、些細なことで落ち込んだ。

恋人との関係は常に良好なわけもなく、少し機嫌が悪いと自分のせいであると思った。

友人とは仕事と恋人の兼ね合いもあり、会う時間が短くなり、たまたま予定が合わないだけなのに嫌われたのではないのだろうかと不安になった。


どこかで誰かの優しい囁きや、厳しい叱咤があれば、こうはならなかったのかもしれない。

しかし俺は仕事ができ恋人を愛し友人に優しい、誰からも頼れる存在なのだ。

だから、そのようなものはいらないし、誰からも与えられなかった。

俺は、俺なのだから。



ある朝、起きると体が動かなくなった。

頭は覚醒している。

辛うじて上半身は動くが、足が立たない。

横で寝ている恋人が言う。

もう仕事に行く時間よ。

そうだ。

仕事に行かないと。

行かないと。

動け。

動け。

どうした、おい。


こんなことは初めてだ。

体が言う事を聞かない。

恋人の心配そうはまなざしが突き刺さったので、耐え切れず微笑みながら俺は言った。

体調が悪いみたいだ。

その時は嘘をついたつもりだった。

恋人を心配させないために。

そして、動く上半身だけを用いて職場に連絡をした。

体調が優れなくて一日だけ休みます。

すごく、屈辱的だった。


恋人に言ったことも、職場に言ったことも全部嘘だ。

俺は、元気だ。

仕事もできる。

でも、足が動かない。

なんなんだ。



その日は午前中いっぱい恋人の世話になった。

午後からは恋人も仕事だったので部屋に一人となった。

移動は全て這う必要があったので必然的にベットの上だけでの生活となった。

どうしてこうなってしまったのか。

そんなことばかりが頭をよぎる。

恋人には病院を勧められたが、行く気にならない。

ただただ頭の中では同じことが流れる。

どうしてこうなってしまったのか。

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