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今日は日曜日。本来であれば私だってニーたちや部活の子たちと遊びに行くところだけど、今日ばかりはそんなことしていられない。なぜなら今週末に迫った実力テストに向け、勉強しなければならないから!というわけで、現在図書館で影永と向かい合いながらお勉強タイムです。
なんで影永と一緒かって?それはですねー、勉強出来る席を探していたらたまたま出会して、相席させてもらった、それだけのことなのさ!
テスト前とか結構利用してるけど(私の部屋には誘惑がいっぱーい)、この図書館で影永を見たのは初めて。まぁ今回は和泉くんとの勝負が掛かってるもんねー。しかも自分から言い出したことだし。勝てる気はしないけど!
そんなことをつらつら考えつつ苦手な現代文をやっていると、
「あ、あのさ……」
目の前の象さん、いやいや!影永に話し掛けられた。後ろになんかいるとそっちに気を取られちゃうよね……。
「小鳥遊さんと和泉日向ってつ、付き合ってるの?」
「は?………………ないないない。なにその勘違い。和泉くんファンに殺されちゃうから」
想像するだけでもコワイコワイ。きっと般若の面とかが後ろに視えちゃうんだよ!それがずももももって迫ってくるんだよ!イヤーー!
「そうなんだ……ボクはてっきり」
「うん、影永の勘違いだから。変なこと言わないで」
「分かった」
私みたいな巨神兵と影永のライバル(影永の自称だけど)和泉くんとじゃ釣り合わないってかー?そんなあからさまにホッとしなくても。失礼なやつだ。
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「……あの、さ」
なに!?今いい感じに集中してたんだけど!
「和泉くんってやっぱり頭良いんだよね?」
「そりゃーね、学年トップだもん。教え方も上手いよ?ちゃんと何が分かってないか理解した上で教えてくれるし」
「教えてもらったりしてるんだ?」
「まぁ友達?だし」
「そうなんだ……」
何?なんかいつもと様子が違うぞ?岩壁超人(人見知り)の和泉くんに今更恐れをなしたか?
「大体、なんで勝負なんか仕掛けたのさ。勝ち目がないのは最初から分かってたでしょ?」
「っ!それは、そうだけど……でも……」
??こんな歯切れの悪い影永なんて、初めて見るわー。いっつも自信満々の、鬱陶しいやつだったから。
「……負けたくないって思っちゃったから。でもやり直すには遅くて。だったら和泉くんを倒せばいいんだって」
倒すって。和泉くんはラスボスかなんかですか。ちょ、オモシロイかも。
「確かにやり直すには遅いけどさ。なんでよりによって和泉くんの得意分野なのさ。あんたには不利でしょうが」
「ボクの得意分野で倒したってしょうがないだろ。それに……和泉くんに出来ないことってあるの?」
そう言われれば……人見知りも今じゃ治り、というか見せないように気を付けてるし、一緒にいてこれといった弱味はないな……つまらん。
「じゃあ一緒に和泉くんの弱味でも握る?」
「なんでそうなるんだよ!」
「え~なんか楽しそうなのになぁ~」
「でも一緒にか……それならいいかも」
「なにブツブツ言ってんのさ。キモチワルイよ」
「キミは!もっと言葉を選ぶってことを!」
「しぃ~~」
段々ヒートアップしてるようだからお忘れだけど、ここ図書館だから。お静かにね。
「~~~!!とにかく!和泉くんの弱味探し、付き合ってあげてもいいけど」
「なにその上から目線。でも……グフ、楽しそう!」
何しよっかな~俄然楽しみになってきちゃったなぁ~
「あ、じゃあケー番交換する?情報共有は必要でしょ?」
「!!」
あれ?ナニコレ……か、影永……
「し、しよう!ちょっと待ってて!」
そう言って鞄の中をゴソゴソ漁る影永の頭に、あたまに……!!
犬の耳が!しかも尻尾付きで!!
な、なんで!?なんでいきなりこんな……
ヤバ!めっさ可愛いんだけど!
「小鳥遊さん?どうしたの?早く携帯出してよ」
「え?あ、うん……」
後ろの象さんは相変わらずだけど、急に視えるようになった犬耳&尻尾。カワイイ系の影永によく似合ってて、むしろカチューシャ付けてても全然OKですと言わざるを得ない。
「影永……なんか良いことでもあったの?」
「!べ、べつに!!」
そっぽを向きながらそんなこと言った影永だけど、頭の上の犬耳はピクピクしてるし、尻尾はバタバタ揺れてるから照れ隠しの一種だとすぐわかる。
どうしよう……触りたい!!
いや、触れないのは和泉くんのキリンさんにベロンって舐められた時に立証済みだけど(特にぬるんとかの痕跡がなかった)、あのモフ耳には触ってみたーい!なんとかして触る方法を模索しよう!うん!
こうして、去年の険悪モードは何処へやら。和泉くんの弱味握り隊&影永の犬耳尻尾触り隊(私限定)が発足されたのでした。