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寝坊しました。すいません。

結局、和泉くんは影永と勝負をすることにしたらしい。私が帰った後、『男たるもの、敵前逃亡などダメだ!』という理由で戻ってきた影永と話し合った結果、来週末に行う実力テストと、一月後に実施する球技大会の文武両道対決。勝ったら何かある訳ではないらしいけど、その好敵手(ライバル)っぽさにテンションが上がっちゃった和泉くんは了承したそうだ。


って言っても、多分恐らくいやぜーったいに和泉くんが勝つと思う。何せ 学年トップを誇る頭脳と運動神経。片や顔とコミュニケーションスキル(私以外には抜群に良い)以外は成績も中の中、運動神経も平均男子より少し下の影永じゃあ話にならないね。なんで分かりきってる勝負を挑むのかが不思議で堪らない。

まぁ私には関係ないけどね!


・・・・・・・・・・・


「イチーー!」

「んー?」


授業が終わった瞬間に飛びついてくるニーをかわして返事をする。かわされたことに頬を膨らませつつニーは、


「今日ヤスママがレモンケーキを作るんだってー!一緒に食べに行こうよー!」


といつものお誘いをしてくる。いやもう慣れたんだけどね?ヤスに確認取らないのはいつものことだしね?気にしてないんだけどね?


「……いいの?」


一応は確認をしておこうじゃないか!


「もちろんいいよー。母さんもいっちゃんに会いたがってし。あ、そうそう」


何かを思い出したようにヤスが振り返ってクラスの男子と話をする和泉くんに、


「イズミンも来るー?」


と聞いていた。ヤスさんや、主語が抜けてるよ……。

案の定なんのことか分からなかったらしい和泉くんは首を傾げながらこちらまでやって来た。


「なんの話だ?」

「今日ね、うちの母さんがケーキを焼くんだ。それで、ニカちゃんといっちゃんが食べに来るからイズミンもどうかなって。甘いの苦手だった?」

「いや、それは大丈夫だけど……いいのか?俺までお邪魔して」

「おーるおっけーだよー。むしろイケメンな友達が出来たって言ったらさっさと連れてきなさいって怒られたぐらいだからー」


ヤスのお母さんってば、イケメン好きだもんねぇ。和泉くんの顔なら大満足じゃなかろうか。


「それなら行こうかな……甘いの好きだし」

「じゃあ決まりだね!レモンケーキまで、れっつごー!」


ヤスさん、まだ一限目も始まっちゃいないよ。そうやって私たちが放課後に思いを馳せていると。


「いずみく~ん!」

「来ちゃったぁ~!」


他のクラスでも堂々と入ってくるケバい二人組。和泉くんを虎視眈々と狙っている中西さんと中嶋さんだ。やけに甲高い声が若干イラッとする。


「ねぇねぇいずみくん!今日は3人でカラオケ行かない?良いところ知ってるんだぁ」

「あたしたち、和泉くんが歌うの見てみたくってぇ。ラブソングとか?イヤン!」

「……………………今日は予定があるから」

「えぇー?この間もそんなこと言ってたじゃぁん!今回はあたしたちを優先してよぉ~」

「……………………ムリ」

「ん~~じゃぁ、来週は?来週絶対に行ってくれるっていうなら、今日は我慢するぅ~」


来週って、テスト前だから勉強するはずじゃないの?

変な条件を突きつけられて和泉くんは困りきっているけど、ヤスはこのテの女子が苦手でアテに出来ないし、ニーはほぼ侮蔑の眼差しで見てる。嫌いだもんね、こういう自分勝手な人。しかもさっきからきりんさんがその……チラチラどころか、めっちゃガン見してくるんですけどー。私に何を期待してるのさ。


「…………ふぅ。来週はムリだよ。ね、和泉くん」


仕方ないから助け船を出してやる。この貸しは大きいからね?


「は?あんたに聞いてないけど」

「つか誰?」


態度が違すぎて怖いー。


「私が誰かはいいとして、来週末は実力テストがあるんだよ?普通勉強するでしょ?」

「和泉くんだったら成績良いんだからちょっとぐらい遊んでも大丈夫でしょぉ?息抜きも必要だよ?」

「……私たち進学クラスはね、一定の点数を取らないと補習やら課題やらが大量に出るの。和泉くんだって天才じゃないんだから、勉強しなきゃ学年トップなんか維持出来る訳ないでしょ。それとも一緒に『図書室』で勉強する?」

「「!!」」


実は知ってるんだよね~。図書室でファッション雑誌がないだの、マンガを置いてくれだの言って司書教諭を怒らせて出入禁止になってるの。まぁそれがなくてもお二人が大人しく勉強する雰囲気はないけど。


「あ、あたしたちだって勉強ぐらい……」

「う、うん。でも今回はいいかなぁ~。ね?」

「そうだね、今回は、ね。じゃぁ和泉くん!テスト終わったら遊びに行こうねぇ~!」


そう言って慌てて二人は教室から出ていった。……なんだろう、この小者臭。三流の悪役を見てるみたい。ものすごく失礼だけどね☆


「……ありがとう」

「貸し30ね」

「30って多くね!?」


だって1つじゃ少ないじゃん?


「ってかアレだねー、和泉くんも変な人たちに目を付けられたねぇ」

「あぁ……一年の時からしつこくて。苦手なんだけどな」

「でもイチってばかっこよかったー!流石わたしのイチだね!」


いつからニーのものになった。


「本当だねぇ。いっちゃんかっこよかったよ~」

「でもあの子たちじゃないけど、和泉くんが頑張って勉強してるってイメージはないよねー」

「和泉くんは頑張ってるよね?よく先生に分からないところ聞きに行くでしょ?」

「……なんで知ってるんだ?」

「だっていつも見てるもん」

「「「!!」」」




「部室から職員室見えるから」


そう。私たち吹奏楽部の部室から職員室のドアが見えるんだけど、そこで部活に入ってない和泉くんの姿をしょっちゅう見かけるんだよね。廊下で教科書持って先生と話す姿も。熱心だなーって思ってたんだ。


「なんか期待して損した……」

「和泉くん何か言った?」

「何も……」


なんでみんなしてため息吐いてるの??

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