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一戦目、勝ち。二戦目、勝ち。三戦目、負け。四戦目、勝ち。今、五戦目。……そろそろ倒れていいですか?
バスケは時間制だから総当たり戦、バレーは得点制だからトーナメント戦。そんな感じでやっているからか、体力の消耗が半端ない。一戦終わったら休憩してるけど、元々体力も筋力もない私にはムチャブリってもんですよ……。早くお昼になってくれ!
私の願いが通じたのか(ただ単に時間が経っただけなのは知ってるよ!)、お昼のチャイムが鳴り響いて、ようやく安堵する(ちなみに五戦目は負けた)。まだ午後にもあるけど、とりあえずは一息吐ける……っ!
「一香ぁ、お疲れー。あんた一番動いてないのになんで一番しんどそうなの」
笑いながらキャプテンが背中をバシバシ叩くけど、抵抗する気力もない。だって、だって……!
「和泉くんも応援に来てくれたんだから、張り切って行こー!」
そう!そうなんだよ……!和泉くんとニーが応援に来ちゃったんだよ!
なんでも、一昨日降った雨でまだテニスコートやグラウンドが湿ってるからだとか。今日は朝から快晴だから午後から開始なんだって。
くっ……!見られたくなかった……。いくら口で運動音痴だって言ってても、ここまでヘタクソだとは思わなかっただろうな……あれ?なんか目から鼻水が……
「イチー!大活躍だったね!」
ニーの心からの賛辞が私にダメージを与える。本当に思ってくれてるから余計辛い。
「大活躍って……ドリブルすらまともに出来てなかったよ?」
いや、正確に言うなら出来てた。んが、そのまま走ったりは出来ない。ってかドリブルの位置が高すぎてすぐに相手チームに取られそうになるから、パスして回避してるのだ。ほんと、背だけしか救いがない……。
思いっきり落ち込んでる私に対して掛ける言葉が見つからないのか、和泉くんはなにも言わない。
「でもディフェンスしっかり出来てたじゃん!それだけでもすごいって!去年なんか散々」
「あーあーあーーーー!」
それは言わないで!嫌な記憶が呼び起こされる!
「……去年って?」
「去年の球技大会はねー、ある意味でイチは大活躍で……ふがっ!」
だから言うなって!あれは私の黒歴史!
「なんだよ、隠すことないだろ?」
いや、言えないね!わざわざ恥を晒すような真似はしないよ!
「教えてよ。な?」
可愛くぶりっ子風に首傾げても無駄さ!大体男子高校生がそんなことしても…………なんだか可愛いような気がする……。女子力、負けた?




