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目の前にはフランス人形に勝るとも劣らない程の美少女。金髪で緩くウェーブした長い髪を『フンッ』と言わんばかりに払いのける仕草は、一昔前の○蝶夫人を思い起こさせる(詳しくは知らないけどイメージで)。
「ちょっとアナタ、ワタシのヒナタにちょっかい出さないでくださる!?」
碧い眼はクリクリで愛らしいのに、桃色ぷっくりお口から出てくる言葉は刺に満ち溢れてて……ちょ、私変態っぽくないですか?大丈夫かな?
「聞いてるの!?」
なんだろう、普通見知らぬ人にいきなりこんな態度をとられたら不愉快になりそうなんだけど、決してそうはならないのは……
『そんな威圧的に言ってはダメよ』
『もっと言ってやった方がいいって!』
まだ小さい子どもって理由と、彼女の両肩に乗ってる天使と悪魔のせいかな……。
和泉くんと私の間に割り込むように突進してきた女の子、アリーちゃんは和泉くん父の旧友の娘さんだそうだ。今は日本に遊びに来てて、和泉くんのお嫁さんになる!とべったり。仲良いことは善きかな善きかな。なんて他人事の私は言えるけど、和泉くんにとっては頭痛の種でしかないみたいだよ?
「アリー、なんで学校まで来るんだよ……」
「だってヒナタの帰りが遅いんだもん!待ちくたびれた!ワタシのために早く帰ってきてよ!」
『ダメだよアリー、そんなワガママ言っちゃ。ヒナタだって忙しいんだから』
『オトコの忙しいなんてイイワケだよ!惑わされちゃダメ!』
お察しの通り、上が天使で下が悪魔の声です。ってか心の声が駄々漏れでなんか申し訳ないんだけど……
「大体誰よこの女!ワタシというものがありながら!」
「アリー!」
あー、この女呼ばわり……いいんだけどね。
「こんにちはアリーちゃん。私は和泉くんのお友だちで、小鳥遊一香って言うの。よろしくね?」
「ヒナタのウワキアイテによろしくなんてするわけないでしょ!」
『そんなことを言ってはダメよアリー!この人に失礼だわ!』
『ウワキアイテにエンリョなんていらないよ!それに、』
『『子ども扱いするから(って)』』
…………ん?子ども扱い?って、ちゃん付けしたこと?女の子はマセてるからなぁ。10歳ぐらいでもやっぱり子ども扱いはしてほしくないのかな?う~ん、難しい。
「う、浮気って!そもそも俺たちはまだ付き合ってるわけじゃ」
「ごめんねアリーさん。レディ相手に失礼だったね。もう子ども扱いはしないから、許してくれる?」
あ、ごめん和泉くん。被った。
「…………なんでワタシが怒ってる理由がわかるの?」
「あ。…………っと、なんとなく?」
やべやべ。誤魔化されてくれるかな?まさかあなたの肩に天使と悪魔が乗ってるせいですよーなんて言えないしね。
「ふ~ん。まぁいいわ。アナタのこと、気に入ったわ。ついてきてちょうだい」
へ?一体どこに?…………ってか和泉くん、なに凹んでんの?




