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すいません、睡魔に負けました……

とある放課後です。今日は決着を付けようと思いますっ。なんの決着かって?そりゃ当然、あのちみっこーい嫌がらせのですよ。犯人の検討はとーっくについている。だってわかりやすいんだもん。人の悪意って、多分絵にしやすいんだろうね。最初はチクチクした矢印みたいな視線が刺さってただけだったんだけど、嫌がらせが始まると同時に真っ黒な澱みがその人の後ろに視え始めた。しかもここ最近、どんどん悪意が膨らんでっているのか、真っ黒な澱みの中から


血走った目がギラギラ見つめてくるんだよね……


それがもう怖いのなんのって!私、絶叫マシンは平気(というか大好き)なんだけど、ホラーってすっごい苦手なんです!だって得体の知れないモノだよ?退治しようがないんだよ!?怖いじゃんっ!ぎゃーじゃんっ!

……コホン、失礼しました。とまぁそんなわけで、大分私の恐怖心を煽る形になってしまったので、ここらで決着をつけようじゃないかと。そんでもってあのホラーをなんとか止めてもらおうではないかと。

でも本人に直接言ったところでしらばっくれられたらおしまいだから、ちょっとした罠を仕掛けておいた。ふっふっふ。まぁ、大したことないんだけどさ。


うちの学校は各教室毎に鍵がかかるようになっている。基本的には先生が持ってるんだけど、職員室にもちゃんとあるから朝一番乗りだったり、放課後最後まで教室を使いたいって場合の時は職員室から持っていくシステムだ。そして、放課後の誰もいない時間帯。そこが嫌がらせを仕込むのに最も最適な時間帯であるのは間違いない。罠は至って簡単。部活がないって言って帰ったかのように見せかける。部活の日はいつ鞄を取りに戻ってくるかわからないからね。あとはいつも部活で練習してる場所から職員室のドアを見ていれば、教室の鍵を借りに犯人が現れるって寸法よっ!現れたらあとは教室で嫌がらせをしてる瞬間に飛び込んで現場を押さえるだけ。シンプルイズザベストな作戦でしょ!

っと、そんなこと言ってる間に取りに来たようですよ~。じゃあ私も行きますかね。



※※


ガラッ


あらまぁなんてイイタイミング。ちょうど私の教科書を取り出してたところですよ~。ノートは気にしないけど、教科書は流石にイヤだなぁ。


「なにやってるのかな?岸さん」


いきなり現れた私にびっくりしているクラスメイトの岸さん。いつも一人でひたすら読書をしてる女の子。人と馴れ合うのが嫌いだと公言してる、ちょっと変わり種の子。


「何って、別に……」

「そう?私にはその教科書にせせこましい嫌がらせをするように見えたけど?」


おぉ睨まれてるー!こんな時でも背景はもちろん視えてるから、ホラーが怖いっ!


「……どーしてこんなことするのか、訳だけでも聞かせて欲しいんだけど」

「………………」


だんまりしないでー!こわこわこわいーーっ!


「私、岸さんになにかした?言ってくれれば」

「言ったってわからない!」

「!」

「わかって欲しいなんて思わない。あなたは人の気持ちなんて考えないでしょ」


記憶の彼方で、甲高い笑い声が聞こえる。人を嘲笑うような、そんな笑い声。


「……人の気持ちを考えないのは、岸さんでしょ?こんな、ちっちゃい嫌がらせなんかして。楽しい?」

「っ!楽しいわけないでしょ!誰のせいでっ!」

「誰のせい?」


言葉にしてくれるなら、ちゃんと受け止める。私にとっては、それが一番大事だから。


「……小鳥遊さんのせいに決まってるでしょ。私はこんなこと、したくない……!」

「じゃあなんでするの?」

「………………」

「………………」

「…………どうして、王子から『王子』を取り上げたの?」


……………………へ?


「え、ごめん、なんの話?」

「だから!なんで『孤高の王子様』からその座を奪ったのか聞いてるの!」


孤高の王子?誰それ…………あ、あぁ!


「和泉くんのこと?」

「他に誰がいるのよ!」


そ、そうですね。そんな恥ずかしゲフンゲフン。そんな通り名を持ってるのは、和泉くんぐらいしかいないよね。


「え~と、私が和泉くんから『孤高の王子様』を奪ったって?そんなことしてないけど」

「した!小鳥遊さんが話し掛けてからあの人は変わったもの!」


そりゃ変わったでしょうよ。友達が出来て、高校生活謳歌してるもん。


「あの人は私の味方だったのに!こんな、檻のような生活の中で、唯一の理解者だったのに!」


えっと、本当に何言ってるかわからないんだけど。


「あなたが引き摺り込んだから!彼は『孤高』じゃなくなった!あんな、あんな下品な笑いかたするような人じゃなかったのに……!」

「人の笑いかたにケチつけないでくれるか」

「!!」


あ~もぉなんで来ちゃうかなぁ。ややこしくなる~!

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