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新連載です。

勝手ながら感想は閉じてます。

私の眼には不思議なものが映り込んでくる。 幽霊なんて物騒なものじゃなくて、オーラなんて神々しいものでもない。それは、


漫画絵、です。


ナニソレって?そのまんまですよ。 よく漫画で見るでしょ?閃いた時には頭の上に電球が光って(古い?)、びっくりすると稲妻が走る。落ち込んでると周りが暗くなるし、笑うと光を放つみたいな。そんな『漫画にしかない』背景が私の眼には"視えて"しまうのだ。これは生まれつきで、母の家系ではよくあることらしい。原因は不明だけど、このことはもちろん他人に言ってはいけないと言い聞かされてきたし、言うつもりもない。大体にして、ちょっと邪魔だなと思うぐらいで日常生活に支障なんて来してなかったのだ。


今この瞬間までは。


目の前には学校一のイケメンと名高く、学校一の"ぼっち"と定評のあるクラスメイト。ちなみにぼっちだと思ってるのは私だけで、他の子は『孤高の王子様』だと噂してるらしい。なんじゃそりゃ。


「お前、なんで俺を見て笑うんだ?」


睨みがよくきいてるね、お兄さん。ちょっと笑えば女の子なんてノックアウトなのに。このイケメンは見た目が王子さまなのに、なにをしても無愛想だ。人嫌いという噂もある。まあ ぼっちだしね。

えぇと、なんだっけ。あぁ、笑う理由だっけ。そりゃ、ただのクラスメイトにしょっちゅう笑われりゃ誰だってイヤな気分になるよね。私もイヤだ。でもしょうがないの。だって、




あなたの背景にパンジーが咲いてるんだもん。




このテの美形さんは、やっぱり背景に花を背負ってることが多いんだけど、大概が薔薇とかばらとかバラとか。とにかく!仰々しいものが普通だ。なのに!この人!イメージだけで見るなら棘がいっぱいある蔦とか黒薔薇が似合うのに、よりにもよって可愛らしいパンジーなのだ!なんで!?なんでパンジーなの!?色とりどりで 綺麗だけど、わっさわさ揺れてるパンジーはツンと澄ました顔には似合わなすぎる!笑いを誘うものでしかないんだけど!?

一年のときはクラスが違うから耐えられた。でも同じクラスになった今、私にこの光景を笑うなという方が無理!でも言えないじゃん!『あなたの 後ろにパンジーが』とか!


「そ、それは……ぷっ。」


しかもだ。この乙女なら誰でも夢見るイケメンからの壁ドン。通常ならライオンとか虎とか、肉食獣を思わせる光景なのに、この人…


キリンが草食べてる!!


可愛い、じゃなかった。どうして!?なんで草食動物なの!?ムシャムシャしてるとことか、わざとでしょ!?わ、わらいがこらえきれない、かたがふるえる!


「……お前、いい加減しないと、襲うぞ?」

「私は草じゃありません!」

「はっ?」

「あ、いえ……何でもありませぬ……」


誤魔化しつつ目を逸らす。危ない危ない。思わず突っ込んでしまった。

今までこんな強烈な人いなかったし、いたとしても絶対近寄らないだろうから耐性がない。

どうしよう……目の前のイケメン王子様より後ろのキリンの方が気になる。しかもがっつり目が合うんだけど。頼むからこっち見ながらムシャムシャしないで!その半開きの目が可愛いですねなんて思ってないんだから!


「?どこ見てるんだ?」


はっ!これぞキリンの魔力ですか!?目を逸らしたと思ってるのにまた見つめあってしまった。しかもイケメン王子様に訝しがられてる!


「えっと、そのぉ~……!!!」


あ、あれ?キリンさん、近くない?え?ひ、


「ひぃーーーーやぁーーーー!!!」

「!?」


舐められた!キリンさんの肉厚な舌でベローンって!ベローンって!!


「なにすんのぉーーーー!!」

「な、なにもしてないだろ!」

「あんたじゃない!キリンさんに言ってんのよっ!」

「はっ!?キリン?なにいって…」

「あんたの後ろのキリンさんが、キリンさんが!!」

「だ、大丈夫か?落ち着け?」

「だってキリンさんが!………………………………あ、え?えっとー、えへ☆」


正気に戻っちゃった……。なんならこのまま取り乱してた方がよかった!ご、誤魔化せるかなぁ…?


「…………お前、大丈夫か?疲れてんのか?何か見えちゃったのか?」


ムカッ!なにそのカワイソウな人を見る目!ぼっちのくせに!頭撫でないでよ!ぼっちのくせに!(二回目)


「だって和泉くんの後ろにいるキリンが私の顔を舐めたんだもん!ショックだし怖かったんだから!」


あ、和泉くんは目の前のイケメン王子様の名前ね。和泉日向くん。ちなみに私は小鳥遊一香。花の17歳ですっ!

じゃ、なくて!私、ものすごく不味いこと言ってる?

いやーー!頭のオカシイ人だと思われるーー!!


「あぁ、うん。キリンさんな、怖かったな。よしよし。」


えっ!もしかして…


「和泉くんにも見えるの!?キリンさんとパンジーがっ!」

「は?見えるわけないだろ。なんだよ、キリンとパンジーって。わかったわかった。小鳥遊、俺が悪かった。是非家でゆっくり休んでくれ。」


なにそれーー!なんか知らないけど腹立つーーー!!!

もういいよ!どうせぼっち(三回目)な和泉くんだもん。誰かに言いふらすなんて、出来ないでしょ。真実を教えてやるさっ!


「和泉くん!!君の後ろには色とりどりのパンジーが咲き誇ってて、キリンがそのなかを闊歩しているのだ!これが笑わずにいられるかっ!せめてキリンだけでもなんとかして!」


ビシッと指を指しながら言ってやったよ。ふふん、何も言えまい!


「あー…………ごめん、なに言ってるのかちょっとわからないんだが、俺の後ろにキリンとパンジー?がいるのか?それが小鳥遊には見えるのか?」

「そーだよ!まぁ信じてはくれないだろうけど、そういったものが"視えちゃう"体質なの。和泉くんも想像してみ?人の後ろでパンジーの花々の中を闊歩するキリンさんを。これが笑わずにいられる?」


少し考え込む和泉くん。本当に想像してくれているんだ。意外といい人かも。普通なら鼻で笑っちゃうようなこと言ってるのにね。


「…………それはまぁ、面白いな。俺なら腹抱えて笑ってる。」


そんな姿こっちが想像出来ないよ!


「信じてくれなくてもいいけどさ。私にはそれが視えちゃうの。悪気があったわけじゃないけど、ごめん。がんばって今度は堪えるから。だからせめてキリンさんだけはなんとかしてねっ!」

「無茶言うなよ……まぁ小鳥遊の話はわかった。信じるよ。」

「へっ!?信じるの!?」

「なんだよ、嘘なのか?」


おふぉうっ!眼力強いから睨まないで!怖いです。

否定をするために首を横に振れば、


「……信じるっていうか、そーいうものなんだって受け止めることにする。理由もなく笑われるよりかは、パンジーとキリンのせいで笑われてると思った方が俺のためだからな。」


おおっ!本当にいい人だ!ぼっちだけどっ!(四回目)


「んで?」

「んで?とは?」

「見えるのは俺だけじゃないんだろ?他に何が視えるか、教えろよ。」


あ、今絶対『ニヤリ』っていう効果音付いた。

効果音は視えてません。視えるのは『絵』だけです。

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