魔女の子 1
「ありがとうございます。」
街の入り口で、私たち2人は農夫に馬車から下ろしてもらう。
「いいの、いいの。にしても、お前さんたちはあれかえ?駆け落ちかえ?」
「い、いえ。私はーー。」
私はエクソシストです、と訂正しようとしたが。
「いやいや、そんなんじゃないですよ。キノコ採りに行って道に迷っちゃって。いやー、助かりました。」
話を合わせてと言わんばかりに腕をつつく。
「そうかえ、ここらに住んでるけ?」
「ええ、そうなんです。」
私も合わせてうなずく、でも何でこんな嘘をつく必要がある?
「じゃあ、もうあんな森に興味本位で入ったらダメだ。ここだけの話、あの森にはエクソシストが住んでてーーまあ、教会崩れなんだけど。もうあんなところへ行ったら命足りんくなるよ。」
エクソシスト?教会崩れ?何を言っているのかわからない。
「ご忠告ありがとうございます、それでは。」
混乱する頭の中、チアキは私の腕を持ち街の中に入る。
「ねえ、さっきのは。」
「疑問に思うのはわかるけど、まずは店に入ろう。ーー嫌な予感がする。」
私の話もほとんどせずに早足でチアキは街の中にある安ホテルに行く。
フロントには煙草を吸っている老婆がいた。チアキは1日分の宿泊費を払う。
「2人、奥の部屋で頼む。」
「朝からお盛んだねぇ、どうぞ。」
鍵を渡され部屋に連れて行かれる。部屋に入るなり荷物をベッドに投げソファーに座る。
「……説明してなかったな。」
「なぜそんなに慌てていたの?」
チアキは頭を抱える。
「東側に来るのは初めてだろ?」
私はうなずく。
「ここではエクソシストっていえばたちの悪いマフィアのことだと思ってくれ。ーーここじゃ、教会は犯罪者集団だ。」
「……なん、で?」
私は衝撃のあまり唖然とした。
私はエクソシストは正義の味方だと思う。
教会の神父様やシスターは結婚すらせず懸命に人々の幸せを願う。それは決して優しいことではなく、健全な肉体と高潔な精神を求められる。
私はこの尊敬する人たちのサポートをするためにエクソシストになったのに。
それなのに。
「ショックかもしれんが、東側のエクソシストは酷い。昼間から酒を飲み、お布施を自身のために使い、自堕落な生活、老人や子供をいびるのは当たり前。さっきの農夫は私達をエクソシストと疑っていたようだね。」
チアキはベッドの上に置いた荷物をベッドの下に隠す。
「……そんなにここら辺のエクソシストって酷いものなの?」
「今、言ったのは序の口だよ。」
私が知らない現実。
チアキは私に手を伸ばす。
「とりあえず、朝ご飯に食べに行こうか。」
私はうなずくと立ち上がった。