東側と西側
「チアティーヌ?」
「そ。それがコイツの名前。20年も一緒にいるけどなぁ?あぁ、でも。俺が表に出たのも10年ぶりかなぁ?なんせ、今チアティーヌは気絶してるから」
私は怪訝な顔をした。気絶?そういえば役所の男2人もだ。
「君は面白いね、うん。実に面白い。そうだ、いいことを教えよう。ナキは人間ではなく銅像。そして、俺らを閉じ込めるこの屋敷の看守だった」
「看守?」
「そう、チアティーヌは罪人。彼に与えられた罰は2つ。1つは悪魔にとり憑かれること。もう1つはこの屋敷の部屋に140年間閉じ込められることだ」
140年……それは終身刑そのものだった。しかし、彼は悪魔がとり憑かれた人間。知り合いも誰1人いない世界で投げ出されるのだ、それはとても過酷なことだ。
「だが、彼は自由だよ。何せ看守が死んじゃったからね。あーあ、ざまぁみろ!さて、役所の奴らは縛っておこうかな」
面倒だなといいながら、縄を出す。そして、男達を縛った。
「なぁ、1つ聞きたいことがある」
私は声のトーンを低くして言う。
「ここら辺のエクソシストが悪魔を討伐して帰ろうとしても皆遺体となって帰る。どういうことだろうか?」
悪魔はあぁ、それかーと言って少々考えていた。
「君さ、東側のエクソシストでしょ?」
「そうだがどうして?」
悪魔はやはりなという顔をして。
「西側はここ何年か前からエクソシストの迫害が始まっている。もはや、エクソシストの敵は悪魔や魔物じゃない。人間そのものさ」
「迫害?しかし、そんな話――」
悪魔は私の話すのを遮った。
「そんな表だって迫害する馬鹿はいないさ、なんせエクソシストに守られてるしね。だから、まるで悪魔がやったように遺体をバラバラにして酷いことをするんだよねー。まぁ、役所の男らもカノルドを殺そうとしてたように……ね」
悪魔はそう言ってコーヒーを飲んだ。
「そうか……わかった」
姉や先生を殺したのは人間、悪魔ではない。善良ではない一般市民。そう思うと悲しくなった。
「あぁ。そんなことよりも、カノルドはどこで生まれた?」
「私は教会の前に捨てられていた。だから、親も出身も知らない」
「俺はカノルドの両親にあったことあるな、多分」
サラッと悪魔は言った。
「?!」
私はとても驚いた。声が出ないほどに。
「残念だが、チアティーヌが起きてしまう。話せて楽しかったよ。じゃあな!」
悪魔は、悪魔ではなくなった。
チアティーヌとなっていた。
「……久しぶりだな、私ではなくなったのは」
ポツン、とつぶやく。
「一体何をしたんだ、悪魔にとりつかれるなんて」
罰則としては1番重いとも言える、この罰。連続殺人犯すらこのような罪は受けない。ただの終身刑だ。
「……革命を起こそうとした」