旅立ち
ファンタジー世界を舞台にした変わった話です。
「もう、行くの?姉さん」
「行かなきゃ。いってきます」
「そうか……、いってらっしゃい」
早朝、私は教会を出た。霧が出ていて視界が悪い。少し寒いがこのくらいなら大丈夫だ。
私は弟のマルドに見送られ、旅に出る。これから死ぬために……。
私のいるこの世界には悪魔や魔物がいる。長い間、人々の生活を脅かす存在だった。そこでエクソシストという、悪魔と魔物の討伐をする人々が出てきた。
彼らは聖書の力により、悪魔や魔物を討伐する。
そして、私カノルドはエクソシストの1人であり義理の弟マルドと共に悪魔や魔物を討伐してきた。
今回、1人でここの周辺に住む凶悪な悪魔を倒すつもりだ。その悪魔はとても強くもしかしたら死ぬかもしれないが、それでも倒すと決めた。
私もマルドも親はおらず、捨てられていたのを教会に拾われた。マルドとは兄弟のように仲良くいつも一緒にいた。
そして、きっと今日会うのが最後になるかもしれない。マルドからは紺のコートをもらった。特別な生地で作られてるのか、暖かい。
……多分、これ遺品になるんだろうな。
しばらく歩いていると、街が見えてきた。朝食はあそこの市場でとろうか
市場では色とりどりの果物や野菜があり、そこでパンとスープの簡単な朝食をとった。
そして私は森へ向かう。
「ここらへん……か」
悪魔は屋敷に住んでいるという、これまで罪なき人々を殺しのうのうと生きているのを許さない。
私が姉として慕っていた人はエクソシストとして悪魔と戦い、首以外バラバラの状態で帰ってきた。
私のエクソシストとしての技術を教えてくれた先生は、悪魔と戦い、内臓が箱詰めされて帰ってきた。
絶対に許さない、復讐してやる…
屋敷が見えてきた。私は身なりを整え、屋敷の扉をノックする。
「はぁい」
中から使用人らしき女性が出てきた。彼女は人間のようだ。
「ご主人様に何か御用ですか?」
彼女も悪魔の被害者だろうか。私が彼女に対して言おうとしたとき
「ナキ、その人は私の客人だ。奥の部屋に案内するように」
男性の声がした。多分、そいつが悪魔だ。しかし、姿は見えない。
「かしこまりました、こちらです」
ナキと呼ばれた女性は私を屋敷にいれた。悪魔の姿が見えない以上戦う体勢になるわけにはいかない。
ナキは私を奥の部屋に案内すると、姿を消した。そこは書斎だった。奥に男性が座っている。その人はずいぶん若い。
「やぁ、はじめまして。エクソシストが来るなんて半年ぶりだよ」
「…」
穏やかそうに男性は話す、私は警戒した。コイツが、先生を…そして罪なき人々を…許さない…、消してやる。
「ずっとここにいると気が狂いそうなんだよね、ナキ以外には会わないし。外に出たいんだけどなー」
何を考えているのかわからない口調で彼は話す。私が殺意むき出しなのを気がついているようだが、彼は気に止めない。
「殺す…、絶対に殺す…殺してやる…」
私はそう呟くと、コートを脱ぎ捨て彼にナイフを向けて飛びかかった。
彼は私のナイフをつかみ、刃を折った。
「いきなりだね、エクソシストはいつも気が早くて大変だなー。暇つぶしには丁度いいんだけど」
彼はまるで雑談をしているような口調だ。
「その余裕ごとすべて消してやるっ」
私は炎を右手から出す。そして、彼を狙って撃った。彼はニッコリと笑って炎を右手で消す。
「危ないなー」
炎は跡形もなく消えた。私は彼に殴りかかるが、受け止められてしまった。そして、彼にぶっ飛ばされた。 書斎の本棚にあたり、上から本が落ちてくる。
「片付けが面倒だなぁ。ちょっと、疲れたし休憩でもしようか」
私は起き上がろうとするが、何か魔術をかけられているせいか体は動かない…
「無理するなよー。あ、そうだ。君さどうしてここへ来たわけ?殺すなんて言ってたけどなんで?」
「お前、私の先生を殺し罪なき人々を殺し…のうのうと生きてる逃れ許せないからだ」
「……どういうことだろうか?私は人を殺したことはないが……?」
彼は怪訝な顔をした。本当に何がなんだかわからないようだった。だが、それは演技に過ぎないだろう。
「っ、嘘をつけっ!」
「覚えがない、私はここ20年間ある罪によってこの部屋から出たことがない」
部屋を出たことがない?どういうことだろうか?しかし、仮に部屋から出れなくてもここの部屋に連れてくれば私と今戦っているみたいに殺せるはずだ。
「っ、休戦しよう」
私は一旦休戦することにした。とりあえず、話をきいてみよう。