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最終話~勝利の代償~

本日3話目の投稿となります。

 限界が近い。いくら【水の呼吸】で体力を取り戻そうとも、精神が悲鳴を上げ、睡眠を求めた。

 だが、今目の前には殺人現場さながらのおびただしい流血が残る草原が広がっている。断じて眠るような場所ではないのだ。

 眠い……そんな思いを察したのかベルナールがこちらを振り返った。


「流石に疲れたみたいだな。肩でも貸してやろうか?」


 それは純粋に心配からくるものであることは分かっている。頼った方が楽なのも確か、だが、それでも妙なところで意地を張ってしまう。


「うるさい。この程度どうということはない」


「おーおー。なら、良いんだけどよ」


 それを言ったっきりベルナールが振り返ることはなかった。そんなことをされていれば、目を閉じて歩いていたことが発覚し、嫌でも負ぶわれていただろう。あの汗臭い背中と密着するなど、想像しただけで、鼻がヒクヒクと動いた。


 村に近づくにつれて、談笑する声が大きくなった。そろそろか、と目を開けた時には少女が宙を飛んでいた。


「お兄ちゃーん!」


 ぼんやりとした意識の中ではあったが、身体を引き、衝撃を外に逃しながら受け止めることだけはしてみせた。


「お帰り!」


「ああ、ただいま」


 お帰りと言われたから、ただいまと返す。それだけのことだが、ほぼ無意識の状態でもそんな言葉が自分から出たことに驚いた。

 守っておいて良かった。


 そんな思いなどお構いなしにグイグイと村の奥へと引っ張られていく。

開かれている宴会の上座に座らさせられると、すぐにコップ、フォーク、料理が盛り付けられた大皿がドンと置かれた。

 やれやれ、一息つく前に酒に料理か。仕方ないと鞘ごと刀を脇に置いた後、俺の記憶はそこで途切れた。




 ◆ ◆ ◆




 蓋を開けてみれば、大勝だった。空が救援に駆け付けた後は誰一人欠ける事なく危機を乗り越えることが出来た。

 どれも空の活躍あってのことだ。

 あいつは常に俺たちの先頭に立ち、武器を手に強敵を一手に引き受けた。そして、その全てを蹴散らしてみせた。

 最後の最後で呪われた武器に乗っ取られたみたいだが、すでに撤収作業へと移っていた俺とあの獣人、アヴェリーを除いてその失態を目にした者はいない。

 つまり、この英雄がなした功績は間違いなく傷ひとつない輝かしいものだ。

 俺がこの時分には何をしていただろうと思い返す。

 確か、一旗挙げるべく、ニコラと一緒に王都のあの訓練校に通っていた頃だった気がする。

 それと比べると、いや、比べるのもおこがましい位の力と実績の差だ。


 あいつが行く道は栄光に満ちているのかもしれない。でも、少しだけ生き急いでいないかと心配になってしまうのだ。


 それにあいつは優し過ぎる。

 武器を合わせたからこそ痛いほど分かる。

 あいつの刀には怒り、憎しみだけでなく、深い悲しみ、後悔、恐れがこもっていた。

 一人で背負うには重すぎる想いだ。いつかその重荷を解いてやれれば、とは思うがその日がいつ来るかも分からない。

 だったら、そばにいよう。

 俺から見ればあいつもまだガキだ。兄貴分として、手を貸してやるのもいいだろう。


 感慨に浸っていると爺さんが酒がめいいっぱい注がれたジョッキを両手に目の前にはどかりと座った。


「小僧、酒はまだだろう? 遠慮は要らん、呑め」


 手を前に突き出して首を振った。


「いや、遠慮しとく。後処理をしないといかんからな。悪いが、爺さんたちで楽しんでくれ」


「ふん、生意気な。その程度のこと儂がやっておく。だから、呑め」


 なかば強引に突き出した手に押し付けられる。


「仕方ねえな。じゃあ、ありがたく受け取っておくぜ。

 つか、なんで爺さんも呑もうとしてるんだよ。仕事を引き受けるんなら、やめとけとよ」


「堅いことを言うな。シワが増えるぞ。

 では、我らが英雄殿に、乾杯」


 爺さんもあいつを認めるとは、ね。自分のことではないが、悪くねえ気分だ。


「ああ、優しき英雄に、乾杯」


 二つのジョッキが甲高い良い音を鳴らして、キンキンに冷えた酒が喉を通った。一飲みで空にして、一言。


『かぁ〜、うめぇ!』


 唱和する野太い声に苦笑混じりの顔で見合った。

まったく、俺も歳かね。爺さんと言うことが一緒とは。


「のう、小僧。優しき英雄とはどういうことだ?

 あれの本質は苛烈さと見たが?」


 普通はそう思うよな。俺もついさっきまでは、同じ様な印象を持ってた。けどな、


「理由はそのうち分かるんじゃねえか?」


「はっ、小僧のくせに言いよるわ」


 まあ、俺もそれなりに歳を食ったしな


 二杯目も飲み干したところで歓声が上がる。アンナに構っていた英雄がやっと登場したようだ。

 見れば、いつにも増して適当な返しで受け答えをしているようだ。疲労が限界まで達しているのだろう。


 席の主役に声をかけようとジョッキに酒を注ぐと再度目を向けると、刀を支えに目を閉じて眠っている姿がそこにあった。


「しょうがねえな。おい、そっとしとけ。後で適当な所に連れていくからよ」


 揺すって起こそうとしている若者を止めさせた。


 闇が深くなり、いよいよお開きとなった。結局、こいつはピクリとも動かず、目を開けることはなかった。


「仕方ねえ、英雄様だよ。

 さてと、どこに連れて行くかな?」


 服の袖がクイックイッと引っ張られる。目を下に向けるとアンナがいた。


「おじちゃん! お兄ちゃんはアンナのお家に泊まるの!

 だから、絶対連れて来てね!」


 この無愛想な男は何故かこの子には懐かれているようだ。

おじちゃん、と言われた腹いせに少しだけ手荒く頭を撫でると先に帰らせる。

 もう、ここに残っているのは俺と爺さんだけだ。


「儂も一仕事してくるかの」


「おう、こいつを送ったら俺も手伝うぜ」


 その時だった。

 空の身体から大量の闇が溢れ出したのは。


「おい、爺さん。こりゃあ……」


「うむ、気合を入れるのだぞ。さっきまでのモンスターとは桁違いに厄介だぞ。

 小僧、儂の指示に従うのだ」


 狩猟祭も終わってひと段落、と思ったんだけどな。冗談きついぜ。

 空、これは貸し一だぜ?




 ◆ ◆ ◆




 目を覚ますと、何故だか知らんが教室の机の上で寝てしまっていたようだ。

 この風景は中学校の時のか?

 今度はどんな夢だよ。


 振り向くとそこには黒いガキがひっそりと立っていた。

 この年代の子供にしては、驚くほど冷え切った眼をしている。

 その眼は俺が一番嫌いな眼だ。


 よく見れば、黒い学生服にはところどころ破け血が滴っている。

 目の前にいるのが、このガキでなければ、何か事件にでも巻き込まれたのかと騒ぐところだが、この時はこんな事日常風景だったなと思い出した。

 事件と言えば事件だが、大方派手に喧嘩でもしてきたのだろう。

 やはり、こいつはこの世で最も嫌いなクソガキだよ。


「おい、アンタに聞きたいことがある」


 この夢はどうやら記憶のワンシーンを再現するものではないらしい。

 他にやることがあるわけでもないし、クソガキに付き合ってやるか。


「何だ?」


「なぜ、アンタはそちら側にいる?

 俺はこんなにも苦しいのに、なぜアンタはそんな眼をしているんだ?

 なぜ、なぜ、なぜだっ!」


 とうとう壊れたようだ。

 ふん、アンタにはそれがお似合いだよ、クソガキ。

 しかし、その一声でクソガキの激情は収まらない。


「なぜだ、なぜアンタがそちら側にいるんだっ!

 なぜ、俺はそちら側に行けない?

 なぜだ?」


 焦点すら定まっていない瞳が虚空を仰ぐ。その姿は恐れよりも哀れみを喚起した。


「クソガキ、それは自分がよく分かってるだろう。

 その程度の苦しみに耐えられないのならば、死んでしまえ。

 アンタはこの世にいない方がマシだよ」


「なぜだ、なぜだ、なぜだっ!

 俺は、アンタよりも、俺はぁっ!」


 取り合うだけ無駄だ。ここで死んでしまえたなら、どれほど楽なんだろうな?

 それをする勇気もないから、そこにいるのだ。


 取り合うのを止め、別の場所に目を向けた瞬間、脇腹に鈍い痛みが奔った。

 振り返るとクソガキが眼を見開いて、怨嗟の声を漏らしていた。


「俺がいる世界も、アンタがいる世界も、俺が壊してやる。


 コワシテヤル。ゼンブ、ゼンブ、コワス」


 額から嫌な汗が流れ落ちた。









「チッ、クソが」


 バッと身を起こすと、悪態をついた。そこには誰もいないと思っていたが、


「おいおい、いきなりそりゃねえぜ。

 ま、起きたなら良いか。ちと、俺は出るぜ」


「ああ、それは悪かったな」


 ベルナールが布団の横の椅子に座っていたようだ。

昨日はベッドの上で寝た覚えはないし、彼がここまで連れてきてもらったのかもしれない。一つ貸りが出来てしまったな。

 そばに、たらいと綺麗な布が置いてあった。ありがたく使わせてもらおう。血と汗でカピカピだ。この服はもうダメだな。新しく買わないとな。

 報酬を受け取りと食欲を満たしにギルドへと赴いた。

 扉を開けると視線が俺へと集中し、次の瞬間には大きな、鼓膜が破れそうなほどの歓声に歓迎される。


「我らの英雄殿のお目覚めだ。野郎ども呑むぞ!」


『おおー!』


 突如として宴会会場へと早替わりするギルド。

 それより、こいつらは昨晩も呑んだんじゃないのか?


「ささっ英雄殿こちらへ」


 言われるがままに席に着く。長机のいわゆる誕生日席という場所だ。

 次々に運び込まれる料理と酒。仕方ない先に豪勢な朝食にありつくとしよう。


「英雄殿、これは全部俺たちの奢りでさぁ」


「遠慮なく食ってくれよな!」


 そう言ってバシバシと肩を叩く男どもを適当にあしらいなかまら、食欲を満たした。空腹だったこともあり、山のように積まれた料理はすでに腹の中だ。


「良い食いっぷりだなぁ。ささっ、お注ぎしますぜ」


 酒もそれなりに楽しんだところで、【早治術】で酔いを覚まし、接待を抜け出すとカウンターへと向かい、報酬を受け取る。何の因果か、またしてもあの受付嬢だ。

 噂で人を評価はしないが、確かに他の職員の手際と比べると無愛想で手を抜いているように見える。

 逆に言えば、無駄な会話をしなくていいので、短時間で済むという利点がある。


「狩猟祭の報酬を受け取りに来た。頼めるか?」


「前と話し方が違うのね。まあ、良いけど。

 じゃあ、カード出して、そこで待ってて」


 苦笑して流すと、奥に入る彼女を見送った。

 数分後、戻ってきた彼女は片手に小袋を抱えていた。


「今回の狩猟祭はAランク扱いになります。

 また、報酬はこれ、切りよく10オル。

 9枚の金貨と100枚の銀貨が入ってるから確認して」


 ジャラジャラと音を立てながら、袋から零れ落ちる硬貨を、神経を尖らせて数えると地面へと落ちる前に、再び袋で受ける。


「確認した」


「そう、数えるの早いのね。

 英雄様、村には服とか武器とかも揃ってる、それにもう少しすれば、行商人がやってくる」


「そうか、情報感謝する」


 つまり、貰ったこの大金を少しでも村に落として行けというわけか。

まあ、多少は復興に貢献してやろう。


 服を買い、少しだけ武器を買い込む。まだまだものが不足している感が否めないが、とりあえずはこんなところで良いだろう。しかし、それなりに買い込んだがまだ銀貨2枚しか使っていないのだから、突然の大金に金銭感覚がおかしくなりそうだ。

 宿の風呂場を借りて綺麗に身体を洗うと、新しく買った服を着る。

 黒パンツと暗い紫色のシャツの上に黒ジャケットの組み合わせである。腰には【紅月】と銘を変え、呪刀が一振り、反対側には収納袋をぶら下がり、その中には同じく呪われた斧である【血染めの月】や雷属性が付与された槍や、採取用のナイフや食料を含めた日用品が詰め込まれている。

 背中には火雷土に耐性のある紅蓮の盾があり、もしもの時の守りを固めている。と言うのはよく言ったもので、俺は両手に刀と斧など変則的な二刀流で戦うことが多いため、この盾は宝の持ち腐れ状態となってしまっている。いずれ活躍する機会もあるだろう。

 とりあえずの装備を整えた所で後ろから声をかけられた。


「おーい、空。こんな所にいたのか。ちょっと付いて来てくれ。話があんだよ」


 ベルナールはそれだけ言うと俺の返答も待たずに歩いて行ってしまう。どうやら断るという選択肢はないらしい。


 ベルナールが向かう先にはこの村で一番大きな建物である村長の家があった。その中に遠慮なく入ると、我が物顔で奥の小部屋に案内された。そこには包帯を巻いた爺さんが座っていた。


「適当なところに座ってくれ」


 ベルナールは爺さんの横に腰を下ろすと、隅に積んであった座布団の山から二枚取り出して、一枚を自分の下に、もう一枚を俺に手渡した。

 受け取り、二等辺三角形の頂点に位置する場所に座る。

 むさくるしい男どもの近くに座ったっていい事はないからな。


「来たか。

 調子はどうだ、英雄殿?」


 この爺さんにも英雄扱いされるとはな。

 雨でも降るんじゃないかと外を見るが雲一つない空が広がっている。


「ああ、問題ない。

 それで俺に話があると聞いたが一体なんだ?」


 包帯が何重にも巻かれた腕を擦ると重々しく口を開いた。


「昨晩の事は覚えておるか?」


 昨晩?

 疲労で記憶が定かではないがアンナに連れられて宴会の席に座らされた後、すぐに眠ってしまったんだったな。

 

「いや、座った後、すぐに寝てしまって覚えていないな

 何かあったのか?」


「いや、それならば良い。英雄殿……面倒だの、小僧の知るところではないのだ」


「……そうか」


 俺の言葉に即座に答える所を見ると何か隠しているのは明らかだが、いうつもりはないようだな。


「それはそうと、伝えておかねばならぬことがあってな。

 小僧には悪いが寝た後に治療をさせてもらった。そこである異常があってな」


「もったいぶらなくて良い。さっさと言え」


 そう急かすと爺さんはやれやれといった調子で、ため息をついた。

 ため息をついている姿は年相応に老けて見える。


「小僧は闇属性を主に使うのだろう?

 その反動が体に悪い影響を与えておる。

 具体的に言うと、闇属性による身体への侵食」


「侵食?

 その効果は?」


 そう言いながらも、体の調子を確かめる。確かに、闇属性の力が身体の至る所に溜まっているようだ。

 だが、それは本当に悪影響なのだろうか?

 寧ろ、常に身体が強化されているような感じだ。


「その症状は【恵黒呪けいこくじゅ】と呼ばれる。

 今はまだ軽度だからよい。むしろ、闇属性の効果が強化されるだろ。

 しかし、侵食が進めば進むほど、激痛とともに、黒い斑点が現れ、終いには全身が黒く染まり、塵と化してしまうだろう。

 古くから闇属性の達人たちに発症し、多くの命を散らしてきた。

 一時的な恩恵と死に至らしめる凶悪性からその名が付けられたのだ」


 なるほど、そういうこともあるのだろう。なってしまったものは仕方ない。それよりも今はこの解決策だな。


「それでその進行を抑える、もしくは治療するにはどうすればいい?」


「光属性での治療が必要だの。しかし、小僧の闇の純度が高すぎるせいか、並みの術者では効果がないだろうな。

 進行を遅らせるには魔力の一切の使用禁止だ。それ以外の手段など無い」


 魔力を使わずに戦うとなると大幅な戦力ダウンにつながりかねない。他にいい手はないのだろうか? 例えば、


「闇属性を使わなければいいだけなんじゃないのか? 他の属性ならば」


 その答えに首を横に振った。


「だめだ。試しにごくごく少量の魔力で魔法を使ってみい。なぜか、わかるだろう」


 それならば、と使うがすぐに分かった。

 俺が魔力と引き出そうとした瞬間、溜まっていた闇がそれに反応し、増殖と、変換が行われた。つまり、火だろうと、水だろうと、必ず闇が混じったものになってしまうようだ。


「なぜかは分かったか?

 幸いにも、溜まった闇を取り除く、魔道具が少ないが手元にある。

 儂からの感謝を込めて、これらを小僧にくれてやるわ」


 ポケットから取り出されたそれは3つの小さな白い十字架。首にかけられるように、鎖が通されている。

 試しに首に掛けようと手にした瞬間、瞬く間に黒く染まる。他の2つも同様の結果となった。


「これらはもう使い物にならないということでいいか?」


「ううむ、そのようだの。これほどか……

 小僧、気をつけねば、その命早々に捨てることになるぞ」


 脅しともとれる、心配を鼻で笑う。


「ふん、人はいずれ死ぬ。いちいちそんな事を気にしてどうする?

 それまでの時間を有意義に過ごせばいいだけだ。

 それに爺さんが気にするようなことじゃない」


「けどよっ!」


 黙って座っていたベルナールが唐突に声を荒げる。拳は硬く握りしめられており、顔もほのかに紅潮している。

 なぜ、こいつが大声を出す必要があるんだ?


「ベルナール、うるさい。

 アンタがそんな風にすることはない。

 こういうのは遅かれ早かれだ。

 それに俺は自分のやりたいことしかしていない。その結果がこれなら悔いはない」


「それでもだよ!

 空、お前は分かっているのかよっ?

 死ぬかもしれねえんだぞ。そんなに若えのによ!」


 今年で21歳を迎えるわけだが、世間一般的に言えば若い部類に入る。だが、一通りの経験をするには十分すぎる、と思う。

 人生の先達ならば、まだまだと言うかもしれないが、それでも良いのだ。

 俺が俺のまま生きるにはもう十分、堪能した。言うなれば、こちらでの生活は余生を過ごすに等しい。

 だから、俺は、


「良いんだよ」


 そう言って近づいてきた赤い顔を指で弾く。額を抑えて蹲る姿は滑稽だ。

 騒々しい奴だ。


「それに俺はむざむざと死ぬつもりはない。

 とりあえずは光属性の使い手ってのを探しながら、旅でもするさ」


 痛みで頭が少しは冷えたのだろう、ベルナールはほっと息をつく。


「そうか、そうだよな。それでこそ、空だよな。

 よし、決めたぜ。今度旅に出る時は俺も連れてけ。

 色々と――」


「断る」


 全てを言わせずに答えた。


「いや、聞けよ!

 俺が一緒にいればなぁ」


「どこに汗臭いおっさんを引き連れて喜ぶ男がいるんだ」


「臭いとはなんだ!臭いとは!

 これでも毎日風呂に入ってんだよ!」


「アンタが毎日入っていようが関係なく臭いものは臭い。

 そして、それ以上近づくな」


 おっさんを騒ぐ。

 爺さんは笑う。

 俺はどうなんだろうな?


 まあ、悪くはない気分だ。



今回で最終話になります。

今までお付き合いありがとうございました。

今後の展開は考えてはいるのですが、現在の私の実力だとこれ以上面白い物は書けないと判断したので、続編を投稿するのは期間を開けて別作品としてあげたいと考えております。


では、最後になりますが、ご覧いただき誠にありがとうございました。


ではでは。

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