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第九章:絶望の地
どこにも、辿り着けなかった。
歩いても、戦っても、息をしても、
生きていることに理由がなければ、死ぬことにも意味がなかった。
昼と夜の区別もつかない荒野を、俺は歩いていた。
神すら介在しない空白。
そこには戦もなければ、祈りもなかった。
陰だけが伸びていた。
俺自身の陰か、それとも過去に斬り捨てた者たちの陰か。
もう判別もつかなかった。
剣を捨てたのは、その夜だった。
地面に突き立て、何の儀式もなく立ち去った。
それで何かが終わると思ったわけではない。
ただ、それすら重くなっただけだった。
ある岩場の上で、俺は座り込んだ。
何日も、そこで動けなかった。
食べ物も水も尽きていた。
それでも不思議と、死ななかった。
ただ、死ねなかっただけかもしれない。
風が吹いていた。
音のない、乾いた風。
何も残っていない風景に、何も期待できない自分がいた。
そのとき、背後に足音がした。
振り返ると、小さな影があった。
火ではなかった。光でもなかった。
ただ、“生”だけが、そこに立っていた。




