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第七章:静寂の戦場

疑問を持ったままでも、人は生きていかねばならなかった。

俺は、祈れなかった。語るべき信仰もなかった。

それでも、腹は減り、夜は寒かった。


傭兵になった。選んだわけじゃない。

ただ、生きる代わりに剣を差し出せと言われた。それだけだった。


報酬は、銅貨十枚と干し肉。

命の重さが、具体的な数字に換算された。

信じるものも、語るべき言葉もなかった。

剣を振れば、生き延びる。それだけだった。


慣れるのに、時間はかからなかった。

命令もなければ、正義もなかった。

斬る理由も、斬られる理由も、風のように過ぎ去っていった。


ある夜、敵も味方もわからないまま戦場に放り込まれた。

泥の中で、見知らぬ顔を切り裂いた。

次の瞬間、自分の肩に刃が届いていた。

痛みがあった。だが、生きていた。


その夜、焚き火の前で、ふと気づいた。

俺は、自分が誰のために生きているのか、

誰を殺したのかさえ、もう覚えていなかった。


誰も名を呼ばない。

誰も名前を訊かない。

ただ、斬るか、斬られるか。

その沈黙の中に、確かに“戦場”はあった。


俺は生きていた。

だが、それは“生きてしまっていた”というだけだった。

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