61.ありのままの気持ち
休日全てを使って、答えになるかは分からないけど二人へ自分の気持ちを話す決意は固まった。
今日出勤してから顔を合わせる時ですら少し緊張しちゃったけど、俺の様子を見た二人がいつも通りでいいと何度も笑いながら言ってくれたから仕事中は平穏を保つことができた。
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大きなミスもなく仕事を終えて店を閉めてから、バイトの史弥君を三人で見送る。
とっきーとげんちゃんは店へ残ってもらうお願いをしておいたので、いつも通りカウンター前に座って待っていてくれた。
リラックスしようと思って自分の分を含めたアールグレイティーを出すと、げんちゃんが薔薇の形のチョコレートを用意してくれた。
シンプルだけど優しい甘さのチョコレートとアールグレイティーで、心と身体も癒されていく。
「蒼樹、そんなに急がなくても良かったのに。俺たちのために一生懸命考えてくれてありがとな」
「鷺羽の言う通りだ。俺たちはいくらでも待っていられた。なのに、気を遣わせてしまって悪い」
「そんなことないよ。俺が鈍感すぎたんだし。三人でいるのが当たり前のような関係だって勝手に思ってたから。俺もきちんと考えなくっちゃって思ったんだ」
紅茶を一口飲んでから、少しだけ息を吐き出す。
二人もどこか緊張している表情で俺が何を言うのかと静かに待ってくれているのが分かる。
俺は二人を順番に見てから、ゆっくりと口を開いた。
「二人の気持ちは本当に嬉しかった。ただ、俺はまだ二人の気持ちを全て受け入れることができない。俺にとって二人が俺の側にいてくれるのは自然なことだって思い込んでた。でも、本当はそうじゃなかった」
二人は口を挟まずに静かに耳を傾けてくれている。
普段ならとっきーが場の空気を明るくしようと、合間に軽口を言ったりするんだけど今は俺の出した答えを待ってくれているみたいだ。
「こんな言い方、ズルいのは分かってる。だけど、俺は二人のうち一人を選ぶことができない。ごめん。俺はやっぱり、とっきーとげんちゃんと俺と……三人一緒にいたい」
ハッキリと言い切ると、二人は分かっていたと言わんばかりに笑ってくれた。
とっきーは頭を掻いているし、げんちゃんも俯いたまま黙っていて動かない。
「ええと、付け加えると。二人はその、性的に俺のことをって話だったけど……三人一緒だったら……」
小声で呟くと、とっきーが目を見開いて身体を乗り出してきた。
「蒼樹! それって三ぴ……」
「あぁぁー……具体的に言うなって! 考えた結果がそうなっちゃったというか……俺、二人のことが好きなんだもん」
「鷺羽、落ち着け。蒼樹、それは蒼樹が俺たち二人を受け入れるってことか?」
げんちゃんが真面目に聞き直してくれたから、俺は無言で頷く。
いや、現実的に三人で付き合うことは無理かもしれないけど……何度考えてもどちらかを選んでお付き合いするっていう選択肢が出てこなかった。
俺は欲張りだし、三人でいることが一番嬉しいことなんだって思ったら……結論としてそうなっちゃうというか。
言いながら色々想像して、変に恥ずかしくなってきた。
伝えられた安堵感と羞恥心を誤魔化すように、グッと紅茶を一気飲みする。




