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レトロ喫茶のマスターは珈琲より紅茶がお好きなようです  作者: あざらし かえで
第一章 レトロ喫茶のマスター、はじめます
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5.一時の休息

 とっきーにグラスを突き出されたから、お代わりだろうと水出し用のコーヒーポットを手に取る。

 お代わりも欲しかったみたいだけど、それだけじゃないらしい。


蒼樹(あおい)はさ、ズルいんだよな。ぼやーっとしてるから放っておけないんだよ。で、自覚もないからタチが悪い」

「それは同意する。蒼樹のことは放っておけない」

「なんだよ二人して。俺、そんなにぼーっとしてるか? まあじいちゃんの店をどうやって経営するかーとかはやりながらでいいかって思ってたけどさ」


 だってさ、突然思い立ったんだから。

 この店を潰したくないっていう思いだけで、他は何も考えてなかった。

 というか、考えられなかった。


「普段はなーんも考えてないくせに。急にレトロ喫茶を継ぐとかいうからさ。蒼樹を見てれば気持ちは何となく分かるけど、絶対に勢いだろうって思うだろ」

「まぁ、勢いもあるけど。何よりこの場所が好きなんだよ、俺は」

「それは分かる。蒼樹にとって大切な場所だってこと。だから、俺も全力で手伝いたい」


 げんちゃんの本気の気持ちが伝わってくる。

 俺はコーヒーを飲み干してテーブルの上へ置くと、げんちゃんの手を握りしめた。


「持つべき者は友だよな。ありがとう、げんちゃん!」

「おいおい! 俺には礼もなしか?」

「とっきーも、サンキュ」

「俺に対して軽くないか? おかしいだろ!」


 げんちゃんの手を離してから、今度はとっきーの手を握りしめてやった。

 それだけでとっきーは機嫌をなおしてくれる。

 これで喜ぶ意味がよく分かんないけど、これからも手伝ってもらうためにサービスしとかないとな。


「俺のありがたみを深く心へ刻むように」

「はいはい。とっきーさいこー」

「適当に言うのバレバレすぎ」


 俺たちは毎回明るく笑い合って、何度もピンチを乗り越えてきた。

 だから、今回もきっと大丈夫だ。


「とりあえず準備は大体整ったから、後はオープンするまえの食料の買い出しくらいか。今日はこの辺りにしてまた明日で」

「分かった」

「自分のことだっていうのに、相変わらず自分は関係ないやって感じなんだよなぁ。ま、いいけど」


 こればっかりは自分の首を絞めることになるから、ちゃんと決めないとな。

 今までは料理もじいちゃんがしてたから、俺の場合げんちゃんがメインでしてくれることになるわけだし。

 ここはげんちゃんの意見も大事だよな。


「げんちゃん、メニューについてなんだけど……」


 俺とげんちゃんが真剣に考えこんでいると、とっきーがぐいっと俺のおでこを押してきた。


「なんだよ、今考えてるんだから邪魔するなよ」

「考えるのは構わない。だけど距離が近い! もっと離れろって!」

「離れるのは別に構わないんだけどさ。とっきーも素直に加わればいいだけなはずなのに」

「俺が素直じゃないみたいな言い方をするのはやめろ」


 そういいながらむくれるから、子どもっぽいだけなのかもしれない。

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