35.困ったときの助け船
もめ事は得意じゃないけど、コンビニの入り口を塞がれちゃうと無視するわけにもいかないよな。
男女の側へゆっくり歩み寄ってから、声をかける。
「あの、女性の方が困っているみたいですが」
「は? なんだよ急に」
男性の見た目はあんまりお近づきになりたくない雰囲気というか、ぶっちゃけ柄悪いチャラ男みたいな感じだ。
女性は可愛らしい感じで物静かな雰囲気だから、余計に圧倒されて困っているのかもしれない。
「だったら退けば問題ないだろ。いちいちうぜぇな」
男性が女性の腕を掴もうとしたから、一歩踏み出て女性の前へ出る。
無理やり女性の身体に触れようとするのは、ご時世的にもアウトでしょ。
嫌がる女性を連れていこうとするのを、見て見ぬふりはできないよな。
「おい、何のつもりだ」
「女性の身体に勝手に触れようとするのはどうかと思いますけど?」
「何? 正義のヒーロー気取りのつもりかよ」
うわー……二人に囲まれるの嫌だな。
俺はケンカが強い訳でもないし、どうするかな。
いざとなれば女性と一緒に店へ飛び込めばいいんだけど、男の人が入り口側にいるから、横を通り抜けなくちゃいけないのがなぁ。
「何とか言えよ、なあ?」
なんか物凄いガン飛ばしてきてるな。
女性は怖いみたいで俺の服を掴んじゃってるから、もう身動きとれないか。
どうやって切り抜けようか悩んでると、俺の前へフッと影が差した。
「あぁ? 今度は誰だよ」
「……お前らこそ、ここで何してる?」
あ、この低い声はげんちゃん?
一人で平気って言ったけど、気になって見に来てくれたのか。
この声の感じは、かなり怒ってるな。
「何って……何だよ」
「もめ事に見えるが。まさかここで殴り合いでも始める気か? どうしてもというなら、迷惑のかからないところへ移動しても構わない」
げんちゃん、まさかここでケンカを始めたりしないよな?
落ち着いてって声をかけようとする前に、俺の肩がポンと叩かれる。
このタイミングで来てくれるということは……やっぱりとっきーだ。
げんちゃんがいるってことは、とっきーも一緒だよな。
「言っとくけど、この人ケンカ強いよ? それにいつでも通報できるし。三対二じゃ分が悪いの、分かるよね?」
携帯を片手に持って振りながら、とっきーが男性を牽制する。
こういう時のとっきーは、最適解を導き出して行動するから心強いんだよな。
「チッ。行くぞ」
「……分かった」
捨て台詞を吐きながら、男性たちが去っていった。
良かった……助かったみたい。
「あの……ありがとうございました」
「いえ、困ったときはお互いさまですから」
「困った女性を助けるのは、当然のことですよ」
なんかとっきーがドヤ顔してるんだけど……まあ、いいか。
げんちゃんも怒りモードから落ち着くために長く息を吐いてるし。
とりあえず、一件落着かな?




