32.視察と言う名の楽しい食事
俺が頼んだフルーツサンドは、苺とバナナが主に挟まれていて間にキウイも見える。
バナナと苺は食べる人を選ばないし、比較的一年中食べやすい果物でスタンダードだよな。
キウイはどちらかというと、緑色を入れて綺麗に見せる意味合いもあるのかもな。
生クリームもたっぷりで、映え狙いではないから果物は極普通のカットで挟まれているけど美味しそうだ。
「蒼樹のフルーツサンド、後で味見させて」
「いいよ。俺もみんなの少しずつもらうつもりだし。しっかり研究しないとな」
「そうだな。俺もしっかりと学んで調理に生かすつもりだ」
げんちゃんの真面目さには頭が下がる。
思い込んだら一直線だけど、だからこそ集中できるのかもしれない。
とっきーは何も考えてないからだけだって言うけど、邪念がない分ハマればぐんぐん伸びるんじゃないかな?
「俺のは見るからに美味そうだよな。こういう単純なヤツはそこまで凝らなくてもあったかければ美味しいってヤツだから俺と蒼樹でも調理できそうだよな」
とっきーの頼んだハムのホットサンドは、間にチーズも挟まっているみたいだ。
ホットサンド独特の焼き目もついているし、具材がシンプルでもハズレがない味だろうな。
「ホットケーキは昔ながらのタイプだ。少し固めで甘い。オーソドックスな優しい味だな」
「流行りのパンケーキじゃないヤツね。ふわとろーみたいなヤツじゃなくしっかりと焼いてある感じだよな」
「俺はどっちも好きだ。でも、プラコレで出すならやっぱりホットケーキだよな。ぺったんこじゃなくて分厚く積んであるのも見たことあるよ」
見た目の写真も撮って三人で意見を言いながら、分け合いっこして食べ合う。
視察っていう名目だけど、落ち着く空間を崩さない程度に楽しく談笑する時間っていいよな。
このレトロ喫茶も味があっていい雰囲気だし、これからもお店が続いていってくれればいいなと思う。
「蒼樹、プリンアラモードはどうする? 無理しなくてもいいが」
「げんちゃんって甘いもの大好きって訳じゃないよな。ホットケーキも甘い系だからしょっぱいのも食べたくならない?」
「おいおい、デザートを頼むついでにピザとか頼むんじゃないだろうな? シェアすれば食べられなくはないけどさ」
とっきーがやれやれと言いたげに苦笑してるけど、プリンアラモードを追加で頼むか悩むんだよな。
俺も食べられなくはないけど、フルーツサンドの生クリームが地味にキテるからコーヒーと一緒だとしても甘いものを味わえる自信がない。
プリンのカラメルがほろ苦いだろうから、それが唯一の逃げ道になるだろうな。




