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レトロ喫茶のマスターは珈琲より紅茶がお好きなようです  作者: あざらし かえで
第一章 レトロ喫茶のマスター、はじめます
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3.ぶつかる意見

 全員でよく話し合った結果、とっきーとげんちゃんもこの喫茶店で働いてもらうことになった。

 勢いで言ってるのかと思ったけど、二人の決意は固くて本気だった。

 俺も二人と一緒に働けるなら安心だ。

 知らない人を雇うよりは、なんでも言い合える友達と働く方が気も楽だし心強い。


「そうと決まれば、ガンガン決めて行った方がいいっしょ。蒼樹(あおい)は、ぼーっとしてるからどうせコーヒー淹れてくっちゃべってればいいくらいに思ってたんだろ」

「そんなことはないけどさ。でも、慌ただしい店じゃないし。あんまり騒がしい店になるのもなー」


 俺は元々のんびりした雰囲気も好きなんだけど、店を潰さないようにするのも大切だからな。

 かといって、きゃーきゃー騒がしい店にするってのも違う気がする。

 何より、雰囲気を全て壊す訳にはいかないんだよな。


「俺はこの憩いの場が好きだから、映え写真撮ってネットに投稿されてーみたいなのは嫌なんだよ」

「でもさ、ある程度宣伝は必要だろ。今までだって蒼樹のおじいちゃんが貯金を崩しながら経営してたんじゃねぇの?」


 とっきーの言ってることはごもっともだ。

 じいちゃんがいなくなった今、そう甘いことも言ってられないか。

 俺が悩んでると、げんちゃんがポンと肩を叩いて励ましてくれる。


「だからと言って、鷺羽(ときは)の言う通りにする必要はない。蒼樹の店だから、蒼樹の思い通りにするのが一番いい」

玄暉(げんき)はどうせ何も考えてないんだから、黙ってろって」

「とっきー! 言い過ぎだろ。げんちゃんは俺のことを思って言ってくれてるんだから」


 げんちゃんととっきーはよく意見が衝突する。

 とっきーは非効率なことが好きじゃないから、俺のぼんやりとした意見だろうが関係なく真っ先に賛同してくれるげんちゃんとぶつかることが多い。

 でも、とっきーも間違ってる訳じゃないし俺のためを思って言ってくれてるのはよく分かる。

 

「だから、二人が働いてくれるって言うなら二人の意見を取り入れる。だけど、俺の思い描くレトロ喫茶の雰囲気も壊さない。そういう店にしていきたいんだ」


 改めて二人を見る。

 とっきーは言い過ぎたって顔に書いてあるし、げんちゃんも何かしら考えようとしてくれてるのが分かる。

 二人ともなんやかんや俺に甘いのは昔からだから、俺の言う意見が通っちゃうんだよな。


「……蒼樹、この店の二階は今使ってないのか?」

「うん。昔は二階も客席として使ってたらしいけど。今は一階だけしか使ってない」


 一階もカウンターが五席、テーブル席が二人用と四人用を合わせて六席だ。

 店内が賑わうこともあるけど、満席になることもなかったから特にリニューアルも考えてなかった。


「玄暉にしてはいいこと言うな。そうだ、二階を簡単にリノベして若い子用にすればいいんだよ。下でゆったり寛いでもらって上は少し騒いでも大丈夫ってことにすればいい」

「リノベって……掃除すればいけるか。勿論、手伝ってくれるんだよな?」


 俺が笑顔で聞くと、とっきーも大人しく頷く。

 げんちゃんは任せろって言ってくれてるし。

 言い出しっぺに働いてもらうとして、これで懸念してた問題も何とかなりそうだ。

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