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レトロ喫茶のマスターは珈琲より紅茶がお好きなようです  作者: あざらし かえで
第三章 イケメン揃いのレトロ喫茶です

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23.俺にされても困るんだけど

 服をぼんやり着替えていると、こっちをジッと見ている視線に気づく。

 俺より素早く着替えたとっきーが、穴のあくほど俺を見ているみたいだ。

 

 いや、そんなに見られても困るんだけど。

 しかも何故か睨まれてる気がする。


「何?」

蒼樹(あおい)はさ、一体何をしたいわけ?」

「何をしたいって、今はお客さんを増やしたいに決まってるだろ。あとはこの前言った通りイケメンマスターを目指してる」


 俺の言い分に、とっきーは分かりやすいぐらいのため息をついてきた。

 何が不満か知らないけど、俺は店が流行るための努力をしてるだけなのにな。


「別にイケメンマスターを目指さなくても何とかなるだろ。ただでさえ、女の子とずっと喋るポジなのに」

「はぁ? 話すのは仕事の一環だろ。カウンターに座ってるお客さんと会話もできないマスターなんてありえない」


 とっきーが何を言いたいのかさっぱり分からなくて、少しイラっとする。

 俺が女の子と喋ると、昔から不機嫌になるんだよな。

 どうせとっきーの方がモテてる訳だし、とっきーが店の宣伝としてイケメンがいるって煽ったんだから実践すべきだと思っただけだ。


「とっきーだって、笑顔で接客してるんだから当たり前のことをしてるだけだ。なのに、勝手に不機嫌になられても意味が分からない」

「……っ」


 普段なら俺がここまで言えば引き下がるはずなのに、今日は分かりやすくイライラしたままだ。

 とっきーが怒りっぽいのは別に慣れてるんだけど、少し様子がおかしい気がする。


「昔っから、危なっかしいから邪魔な奴らは排除してたってのに。店のためとなるとこうなるのかよ……」

「え? 排除って言った? とっきーこそさっきから、何をイライラしてるんだよ。俺は別に間違ったことは……」


 言いかけたところで、俺の顔の横をとっきーの手が通り過ぎる。

 壁にバンっと手のひらを突いてから、キッと俺を睨んできた。

 何、この状況。

 これは……壁ドンってヤツか?


「何して……」

「蒼樹は鈍感すぎるんだよ! 俺と玄暉(げんき)がどんな思いでお前を……」

「いや、だから言ってる意味が分からないって。どうしてここでげんちゃんが出てくる訳? っていうか、俺に壁ドンする意味も分かんないし」

「あぁぁー! クッソ。俺だけもやもやするのも、そろそろ限界だって! なんで玄暉は平気な顔して耐えられるんだ?」


 言いながら、とっきーは俺の肩の上にぽすっと顔を乗せてきた。

 腕はぷるぷると震えてるし、そんなに堪えることって何かあったか?

 

「とっきー、良く分かんないけど俺でよければ話聞くよ?」

「……言えるかよ。言いたいけど、言えない。しかも、こんな情けない感じで言いたくない」


 とっきーは俺の肩に顔をくっつけたまま、力ない声で訴えてくる。

 俺が鈍感っていうのも理解できてないけど、もしかして接客だけじゃなくて女の子とゆっくり話せるカウンターに入りたいってことなのか?


「仕事に関して不満があるなら、遠慮なく言って欲しい。俺が責任者だから、問題点があるなら改善するようにする」

「……じゃあ、普通にしてろよ。無理しなくても蒼樹はちゃんとカッコイイからさ。可愛いだけじゃないから」

「カッコイイって……それは、ありがとう? とっきー、悩みごとは俺じゃなくてもげんちゃんでもいいからちゃんと吐き出してスッキリした方がいいと思う」

「ん。蒼樹には言えないから、代わりに蒼樹は俺のこと撫でてハグしてくれよ」


 とっきーのリクエストは子どもみたいで少し笑っちゃったけど、本人がそれで落ち着くって言うならお安い御用だ。

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