城のベランダで繰り広げられる、壮絶離縁騒動!?
ナターシャは城のベランダでアラン王と向かい合っていた。
「お前のような王妃などいらん! 離縁だ!」
「あなたなど、こっちから願い下げでしてよ!」
アランの離縁宣言に、ナターシャも負けじと言い返した。
「今日こそ決着をつけてやる!」
アランがマントを脱ぎ棄てて長剣を抜き放った。
「望むところですわ!」
ナターシャもドレスのスカートに仕込んである尖剣を取り出して鞘を払った。
「王たる者、もっと民のことを考えてくださいませ!」
カーン!
お互いの得物が合わさって音を立てる。
「女の身で政に口を出すでないわ!」
キーン!
「古臭いダメダメ殿方の物言いですわね!」
ガギッ!
「お前が政治経済音痴ゆえに言っている!」
ギン!
「聞き捨てなりませんわよ! やあっ!」
「月の小遣いを1000ゴールド増やしたぐらいで民が困窮するか! とうっ!」
二人は弾けるようにジャンプすると、ベランダ端の柵に飛び乗った。
「甘いですわ! 民の血税をなんだと思っておりますの!?」
ガギリ!
「お前だってこないだ、ネックレスの一つも買ってくれなんて言ってたくせに!」
ジャキ!
「結婚○周年ですもの! しゅたたっ!」
「なら小遣い増やしてよ! せいせいっ!」
二人は壁を駆けのぼって屋根へと上がった。
「あなたには充分お小遣いを渡しているでしょう!」
ガツガツガツガツ!
「足りない足りない足りなーい!」
ドコドコドコドコ!
「きええーい!」
「はいいーい!」
二人は大ジャンプして城の一番高い塔に飛び乗った。
そして鍔迫り合いへ。
ギリギリギリ――。
「一体、何にお金を使ってらっしゃいますの!?」
「庭を見てごらんよ!」
「まあ。私の好きなバラの花があんなに?」
「分かってくれたかい? 庭の維持費は私の持ち出しだからね」
ナターシャの手放した尖剣が滑り落ちていく。
アランは長剣を鞘に納めてナターシャを抱き寄せた。
「さあ。仲直りのキスだ」
「そうね。目を閉じて下さる?」
「もちろんだとも。ぐふっ!?」
ナターシャは隠しナイフをアランの腹に突き立てた。
「メイドとの密通にしけこみの浪費。私が気付いてないとでも? キスでしたら別れのキスを差し上げましてよ」
ナターシャはベランダに落下していくアランへと、投げキッスを見舞った。
◇
「ふふふーん♪」
「花子ちゃーん。ごはんよー。お人形遊びはおしまいにしなさーい」
「はーい。お母さーん」
私はナターシャ人形をアラン人形のそばに置くと、お城のドールハウスから離れて台所に向かった。