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1 クララの秘密

連載戯曲・クララ ハイジを待ちながら   大橋むつお


1 クララの秘密


※ 本作は自由に上演していただいて構いません、詳細は最終回の最後に記しておきます




時   ある日

所    クララの部屋

人物  クララ(ゼーゼマンの一人娘) シャルロッテ(新入りのメイド) ロッテンマイヤー(声のみ)




 ヨーデル明るく流れる中、幕が上がる。中央にクララの椅子。あとの道具は全て無対象。クララがヨーデルに合わせ鼻歌を口ずさみながら取り散らかした衣装を片づけている。やがて点けっぱなしにしていたパソコンのモニターの大画面(客席)に気づく。



クララ:あ、点けっぱなし(スイッチを切ろうとして)あ、そっちも点けてたのね。やだぁ、わたしってこんなに散らかしっぱなしで……え、アナタも似たようなものなの? カメラ回してよ……アハハ、ほんとだあ。似たもの同士ね。もう一カ月……え、三週間? まだそんなものかなあ……「ニコプンサイト」で知り合ってぇ、チャット始めてぇ、すぐにボイチャ。カメラ付けたのは三日前……かな?(この間、ノックの音が数回するが、クララは気づかない)



 このとき下手からメイド服のシャルロッテがやってくる。



シャルロッテ:失礼します、お嬢さま……あ、お手伝いいたしましょうか?



クララ:あ、いいのよいいのよ、いつもこうなんだから。


シャルロッテ:でも……あ、チャットやってらしたんですか?


クララ:ああ! ナイショナイショ!


シャルロッテ:あ、はい。はいです……フフフ。


クララ:フフフ……ま、見られたんじゃ、しようがないか。あ、この子、先週うちにやってきたばかりのシャルちゃん。メイド服、初々しいでしょ!


シャルロッテ:(モニターに向かって)あ、えと……わ、わたし、先週からここでお世話になっている新入りのメイドです。お嬢さまはシャルって縮めておっしゃいますけど。い、いちおう、そういうことでご承知おきくださいませ。


クララ:ほんとはシャルロッテさん。


シャルロッテ:あ……。


クララ:で、シャルちゃん。わたし、ちゃんと人には敬称つけるんだからね。よくお笑いタレントさんたちのことを呼び捨てにする人いるけど、わたしはキライよ。人を粗末にすることは自分も粗末にすることなんですもんね。クララの人生リテラシー!


シャルロッテ:あ、あの、お嬢さま、チャットでリアルネームは……。


クララ:わたし、きちんとしたいの。むろん相手によりけりよ。この人は信じていい人。だから、リアルネーム。でもむろんファミリーネームは非公開。住所とかもね、わたし個人の信条でやってることだから。


シャルロッテ:この方のハンドルネームはぁ?


クララ:アナタ。


シャルロッテ:アナタ?


クララ:穴ぼこの穴に田んぼの田。


シャルロッテ:アハハ、おもしろいハンドルネームですね。


クララ:ウソウソ、普通の三人称のアナタ。わたしがそう決めたの。ほんとは別のハンドルネーム使ってらしたんだけど。わたしが、そう提案したの。もう元のハンドルネーム忘れちゃった……いいのよ。今さら言ってもらわなくても。もし、いつかリアルネーム教えてもらえたら、そのときはね。


ロッテンマイヤー:(声) シャルロッテ、お嬢様のおじゃまをしてはいけません。


シャルロッテ:はい、ロッテン……。


ロッテンマイヤー:どうかしたの?


シャルロッテ:いいえ、すぐにまいります。


ロッテンマイヤー:そうしてちょうだい。今夜は旦那様がお客様をお連れになってこられるんだから、ゼーゼマン家として恥ずかしくない準備をしなくてはならないんですからね。


二人:あ……!


ロッテンマイヤー:ゼーゼマン家は、この街でも由緒正しい……なにかございまして、お嬢様?


クララ:ううん、なんでも(シャルロッテをインタホンから遠ざけて)チャイルドロック外して、チャットやってんのはロッテンマイヤーさんにはナイショだからね。


シャルロッテ:はい、承知しました。


クララ:あの人に知られたら、お父様には百倍くらいに誇張して言いつけられちゃうから。バレたら、クララはパソコン取り上げられるし、シャルちゃんはここに居られないかもよ。


シャルロッテ:は、はい、お嬢さま!


ロッテンマイヤー:シャルロッテ!


シャルロッテ:はい。今まいります! じゃ、お嬢さま。わたしで役に立つことがございましたら、いつでもどうぞ(モニターに)アナタ様も、お嬢さまのことどうぞよろしく。で、さっきのおばさんの声は聞こえなかったってことで……(下手に去る)



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