モブ令嬢と仲良し幼馴染婚約者
毎年開催される高等学園の卒業パーティーは、学園内のホールで行われる学園主催の舞踏会である。
年に一度この舞踏会は、全校生徒の楽しみとなっている。
卒業生は後輩に見送られる場となり、親しい卒業生がいない生徒達も出会いの場や美味しい食事を色々楽しめる場となっている。
そんな楽しいひと時である舞踏会も今年は少し珍しい出来事が起こっていた。
舞踏会会場であるホールの一段高くなっている前方では、数人の生徒が集まり、他の生徒は離れたところから見守る形になっていた。
今年卒業生である第3王子殿下や、同学年の側近候補者達を巻き込んで、盛大な婚約破棄宣言が繰り広げられたのである。
なんでも、1人の女生徒を巡って、上位貴族の生徒達が婚約者を巻き込んで、婚約破棄宣言というものをしているらしい。
当事者以外の生徒、特に事情の知らない低学年の生徒達は人間関係や事情がわからない為、演劇を見ているような感覚になっている。
舞踏会開催宣言後、卒業生達が踊るだろうと予想して、最初のうちに会食を楽しみ、空いた頃のパーティー中盤から終盤に踊ろうと計画を立て、食事コーナーの隣に陣取っていた私も、呆気に取られて例の騒動を見ていた。
ホールの上段で、婚約破棄劇場を開催している生徒の方々が、物語の当事者達とすると、私はモブになるのかしら、ってふと思ったりして。
そんな感じで、呆気に取られてぼーっと眺めていたら、私の腰に添えてある婚約者の手に力が入りお互いの距離が縮まる。
パーティー中、内緒話をする時の体制だ。
「これじゃパーティー始まらないね。」
話しかけられたので、私より背の高い婚約者を見上げる。
本の物語のような大事件が同じパーティー会場で繰り広げられているのに、我が婚約者さまはのんびりしてるなーと思いながら、私も「そうね。」、とお返事をしました。
「ねー、最初に何食べる?あのお肉とか美味しそうじゃん?」
婚約者様は料理コーナーの大きなローストビーフを指挿しながら言った。
ローストビーフの手前には切り分けられたローストビーフが薔薇の花のようにクルクルと巻かれて飾り付けられていた。パーティーでのインパクトのある盛り付けとして、切り分ける前のお肉と、切り分けた後の食べやすいお肉として飾りつけられていた。
「本当だわ。あんな大きなお肉のローストビーフ初めて見たわ。あの薔薇のような盛り付け、一枚肉なのか気になるわ」
「ふふふ。寸劇が終わったら一緒に食べようね。」
婚約者殿は私の頭に自分の頬を擦り寄せる。
もちろん、髪型が崩れない様に気を遣ってくれているからか、体重を少し乗せる程度である。
婚約者殿と密着しながら隣にある立食コーナーを話題に、ケーキも美味しそうだとか、サラダに海鮮が入ってるの内陸の王都では珍しいね、などなど、のんびりとした会話を楽しんでいた。
すると、少し離れて隣にいた友達カップルが私たちの方に寄ってきた。
「この殺伐とした空気の中でも、貴方達は変わらないのね。なんだかホッとしちゃった。」
それから、4人で雑談。自然と話題は今、絶賛公演中の婚約破棄劇場の事になる。
「これまでのストーリーがわからないから、なんとも言えないけど、舞踏会開催は伸びるし、普通に書面で処理すればいいのにって思っちゃう」
って言ったら、友達ちゃんが説明してくれた。
なんでも、王子と側近がゾッコンLOVEしてる女生徒は、元平民暮らしをしていた男爵令嬢で、身分差と複数人から好意を持たれているという条件により、面前での強引な婚約破棄に至ったのではないかとの見解であった。
説明を聞いても、何やそれ状態ではあるが。
貴族間での婚約関係というのはお互いの家の契約であり、さらに、教会での宗教的な契約である。取り決めには必ず家長同士の話し合いがなされ、教会に書類の提出が必要である。
当事者が勝手に破棄したりは出来ないのだ。
「ますますわかんない。家同士の契約に家長が居ない面前でやいのやいの言ってるってこと?」
「そう言う事。しかも、婚約者の令嬢方に、愛しの男爵令嬢ちゃんを蔑ろにしたことが、よろしくないって、怒ってるらしいわよ。」
「さらに理解できないわ。女性はグループが分かれるの当たり前だし、馬の合わない人とは仲良くならなくて当たり前だと思いますもの。しかも婚約者のご令嬢方は、高位のお家柄の御貴族様方でしょ。日常会話の話題自体合わないと思うわ」
「高位ご令嬢方の話題と言ったら、旅行のお話や芸術に関するお話が殆どですものね。男爵令嬢ちゃんは元平民ですから、会話に入る事自体難しそうね。勉強熱心ならいけそうだけど、どうやらお勉強嫌いで、マナーも不十分みたいですし。」
「そうなのね。渦中の男爵令嬢さんは、高位の御貴族様方であるご令嬢方に馴染むのは大変そうね。」
「渦中の男爵家ご令嬢が、王子の愛人枠を拒否したために起こった騒動になるのかしら?」
「まぁ、高位のご令嬢方に喧嘩を売ってしまったんですもの。愛人はもう無理ね。そういう事なのかしら。」
「第3王子殿下と男爵令嬢さんが恋仲だと仮定した場合、取り巻きの方々も婚約破棄ってなるのは、やっぱり理解が難しいわよね。」
「私もそれ思った!。何でなのかしら?男爵令嬢ちゃんファンクラブ会員だから、操を男爵令嬢ちゃんに捧げますって事?」
「なにそれ。凄い考え方ね。熱狂的な演劇役者ファンでも、妻子持ちで家では家族を大切にしてるって人が大半だと思うけど。そこまで入れ込む人もいるのかしら?」
「もうさ、男爵令嬢ちゃんに高級娼館に勤めてもらったら良いんじゃない?」
「貴方、たまに、すごい事思いつくわよね。まぁ、国の重鎮の血縁者のご令嬢方に、こんなに盛大に喧嘩売ってしまうよりは、お忍びで娼館に通う方が円満だったでしょうね。」
私たちの会話が途切れたところで、友達の婚約者さんと私の婚約者の会話が耳に入った。
「人の好みって人それぞれなのはわかるけど、1人の令嬢を数人が好きになるなんてありえると思うか?しかも、マナーもイマイチで、学問、社交も苦手ときた。」
「俺も理解が難しい。精神系の魔法、魔法薬、または肉体関係か。そんな事を疑ってしまうな。」
「肉体関係って言っても、学園で出会ってすぐの令嬢よりも、自分達の婚約者との方が距離は詰めやすいはずだろ。家族公認だし。」
「確かに。中等学校通い始めた頃なんて、婚約者とどう距離を詰めるかがクラスの男性陣の話題だったよな。」
「懐かしい!皆んなで紳士の仕草の本、回し読みしたよな。」
「恋愛小説も読んだな。口説き文句参考にしたりして。」
「うわー。懐かしー。どうやって手を繋ぐとか、議論してたあの頃な。経験が早い奴はドヤ顔してたよな。」
「あの頃から仲良い奴らは今だに皆んな婚約者の話題ばっかりだから、皆んな円満カップルばっかりだよな。そう考えると、益々、第3王子達の痴話喧嘩が理解できない。ハニートラップなんて、王宮ではよくありそうだし、第3王子が引っかかるのも考えずらいしな。」
「娼館の人気嬢みたいな、すんごい床上手とか?」
「そうなると、第3王子と側近候補者達が皆、床事情を女性にリードされ喜ぶ方々にならないか?それか、女性の演技に騙される方々とか。」
「うわぁー。あるあるかもしれん。自分良がりな男にありがちって言うもんな。それか、婚約者殿に言えない特殊性癖とかな。」
「それで落としたのなら、ホール上段にいる、第3王子殿下と側近候補者達は皆、床下手か特殊性癖持ちの穴兄弟になるのか。」
「うわぁ。そう考えると、今見てる光景がすげー見え方するな。」
「そうだな。痴情のもつれってやつだな。」
どうやら婚約者殿達の男性陣も、私達と同様下ネタで落ち着いたらしい。
私達カップルと友達ちゃんカップルが仲良いのは、考え方に何処か馬が合うからかもしれない。
その後、婚約破棄された女性陣が事前に呼んでいた王様と王妃様が現れて、当事者達は全員別室へと移された。
その後、学園長の開催宣言後、やっとパーティーが開催された。
権力の強い高位貴族のご子息ご令嬢方がいないパーティーは肩に力を入れなくていいからか、学年の垣根も緩やかとなり、穏やかで楽しいパーティーとなった。
ローストビーフは霜降りのお肉で調理されており、とても美味しかった。
自分で読む用に書いていたものです。
なんかあったら非公開に戻します。




