ほっこり謎解きの物語③
第一章続き
依頼人の言う通り、絵と文字とか組み合わさった用紙と、歌詞なのかエッセイのような文章に近い感じでびっしりと埋められている。
「解きがいがありますよ。面白い」
「ほんまに好きやな。チーフが解きーな」
リーダーがそういうと2人してこちらを見てきた。私はOKという意味で軽く頷き
「では、チーフである私、一寸がヒントを見つけさせていただきます」
「お願いします」
「最終確認として所在が分かればいいということでよろしいですか」
「はい、それでお願いします」
「承知いたしました」
その時、結構楽な案件で助かった、と顔には出さず心の中で喜んだ。久々の優良案件ではないかと他の2人も思っているだろう。
我々UTI探偵事務所へは、行方不明者捜索依頼が多い、なぜならばこの日本は年間8万人以上の方々が行方不明者となり、警察に相談が多い。ただご存知かと思うが事件性がなければ、捜索を本格的にすることはない為、探偵事務所への依頼が急増している。
小説やドラマのように、殺人事件や警察と手を組む等、探偵に依頼する事は、ほぼほぼないに等しい、他は浮気調査や素行調査等が普通の業務なのだ。浮気調査も少なからずあるものの、行方不明者捜索の方が割に合う。でないと、満足に給料やテナント料が払えない。ま〜それでも、そこそこやれているから普通の無難な在り来りな事務所であると言えるのではないか。
依頼人は、安堵したのか、珈琲を一口飲んでホッとしたような雰囲気を醸し出している。よほど安心したのか、少しばかり色気も感じる。改めて見ると良い女性だなと、リーダーは思った。
「北条様」
「はい、何でしょうか?」
「突然のお願いで恐縮ですが、北条様は何のお仕事されておられるのか、何処のご出身か何処から来られたのか教えて頂ければと思います。先程私の地域ではとおっしゃっておられた為と、北条様のご状況をお聞きする前に依頼内容を承諾させて頂いたので」
「あーそうですよね。私の方こそ、自己紹介が遅くなり大変申し訳ございませんでした。」
我々としては探偵としてあるまじき失態である。所長も少しばかり罰が悪そうな表情で、依頼人と向き合っている。当り前のことをさも当然のように演ることが当然なのであるが、
リーダーは、別の席に座っているが目を細め所長を見ながら、又や、たるみ過ぎやと心の中で思うのだった。
ちなみにチーフは、謎解き真っ最中である、多分聞こえていないかもしれない…
依頼人から詳細にお聞きした情報だと、25歳、京差市在住、生れは禾葉県門戸市、11歳の頃父の転勤で京差に引っ越してきてそのままと。仕事は大手機器メーカーの事務をされておられると、そういう小さな情報一つ一つがヒントになるので、メモを取り逃さずに聞いた。
「色々とお聞きしましたが、詳細に教えて頂きありがとうございます。内情等ご理解しましたので、今回のご依頼内容を受け入れました。諸々の契約書にご署名を頂戴させて頂きます、簡単な形式ですので」
と所長が言うと、リーダーは直ぐにデスクに向かい、鍵を取り出し、デスクの引き出しを解錠し、素早く契約書を用意している。
「はい、かしこまりました、改めてですが宜しくお願い致します。あのー印鑑は必要でしょうか?」
「いえいえ、署名と、拇印だけでも大丈夫ですよ。」
「本当ですか、かしこまりました」
リーダーが持ってきた契約書に一通り目を通し、説明も聞き、依頼人はサインをした。
依頼人に1週間後の同じ時間、事務所でとお約束をしご帰宅された。帰る際、丁寧な対応でお帰りになられた。