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剣と魔法の世界に行きたいって言ったよな?剣の魔法じゃなくてさ?  作者: 六轟


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98:

 会議は踊る……ことも無く速攻終わった。

 情報が無いから、ある程度調査が終わるまでは各自戦力を整えておくようにと貴族たちには指示が出されただけ。

 じゃあ、その必要な情報とやらを誰がどうやって集めるのか?


 白羽の矢が立ったのは……なんとぉぉぉ……俺です……。


 現在、会議が終わったのに玉座の間に残されているのもそのせいです。

 護衛どころか、宰相的な人とかもこの場にいないのは、とっても面倒な話をしているからです。

 独立宣言した軍事施設にシレっと潜入して情報掴んで来いってんだよ?

 ほぼ不可能な任務じゃない?


「俺って別にスパイじゃないんですけど……」

「どうせ今の所他に調査方法も無いんだから気にするな!衛星対策の広域結界が張られていて上からの調査もできない以上、誰かが行くしかないからな!別に失敗した所で何かペナルティがあるわけでもないし、成功すれば報酬は弾むぞ?」

「やりましょう。お金欲しいです」

「ああ!将来的にうちの娘の金になるわけだしな!」


 俺は、金で動く。

 報酬はスイス銀行の口座に振り込んでおいてくれ。

 この世界にスイスあるのか知らんけども。

 ところで、スイス銀行ってスイスにある銀行全般の事言ってるだけで、スイス銀行って銀行は無いらしいよ?

 まあ、そんなもんがあったとしても、ギフトマネーっていう利便性とセキュリティーが最高クラスの支払い方法があるから、あんまり役に立たないかもだけれど。



 凄い面倒な事をサラッと指示されて、その上でサラッと請け負ってしまった俺ですが、さてどうした物か。

 金に目がくらみました。

 今更だけど、帰って寝たくなってきた。


「大試よ。そろそろ姿を見せても良いかのう?」

「ダメです。まだしばらく透明になっててください。せめて城から出るまでは」

「つまんないのう……暇つぶしにおぬしの頭に抱き着いてやろう」

「あ……すごい安心感感じる柔らかさ……お母さん……」

「……ワシ、一応そういうことしたことが無い乙女じゃからな?まあ喜んでいるなら良いが……」


 そんな事言われたって、姿は見えないけれど、大きな胸と柔らかさに包まれたらこうもなろう?

 このまま寝たい……羽毛布団なんて目じゃないぜ……。


「大試さん!四国に潜入するのですか!?」

「有栖か……しないよ。俺はこのままベッドに戻って寝る」

「しょうがないのう……手のかかる子供じゃな……」

「あれ!?ソフィア様もそこにいらっしゃるのですか!?」


 いるよ。

 具体的に言うと、俺の頭の上に。


「……冗談はさておき、どうしたもんかなぁ」

「やっぱり海の上を走っていきますか?」

「それが一番無難かもだけど、その位警戒されてるような気もするしなぁ」


 俺が思いつくような事なんて、相手だって考えていると思っておいた方が良い。

 その上で、相手の裏をかく作戦を考えないといけない。

 例えば、四国を消し飛ばすビームを撃ちこむとか。


 よし、いい具合に脳が眠気を叫んできた。

 本当に寝てしまいたい。


 そんなボーっとしている俺の脳を揺さぶる突然の機械音声。

 光るスマホ。


『そんな犀果様に提案がございます』

「うおっ!?……って、アイか?なんだか久しぶりだな?」

『はい、犀果様がここの所テレポートゲートをご利用になっていないので、私はとても寂しい思いをしています』

「本来そんなポンポン使うもんじゃないだろ……それで、提案って何だ?」

『テレポートゲートを使いましょう』

「やっぱりか」


 そりゃテレポートゲートが使えれば楽だろうけどもさ。

 そんな都合よくいい場所にゲートあるのか?


『実は、四国はテレポートゲート密集地帯の一つなのです。最もテレポートゲートが密集しているのは京都ですが、次点で奈良、その次が四国となっております』

「へぇ……山で行き来し辛いからとかそんな感じ?」

『地域によってはそういう理由もあり、神社やお寺ごとにゲートが存在していまして』

「お遍路かよ」

『お遍路という概念よりも大昔より存在しております。そもそも、テレポートゲートとして利用されていた土地に後から寺院や神社が作られる場合も多いのです』

「なるほどな」

『武田家の近くにもございましたよ』

「先に言え」


 いや、新幹線の旅も楽しかったけどさ。

 ……やっぱり、あんまりポンポン使っちゃいけないな。

 便利さに慣れてしまっている。

 もう、テレポートゲートを知る前の俺には戻れない……。


『それに、とうとう私のバックアップ体制も整ったため、これまで以上に犀果様のお役に立てると思います』

「何か新機能でもできたのか?」

『それは、犀果様のお部屋に戻ってからのお楽しみです』

「もったいぶるなー……」


 一体何をしてもらえるんだろう。

 それは、潜入工作に便利な機能なんだろうか?

 スパイスーツ的な服が作ってあるとか?


 いや、もうしばらく服はいいや……。


「ワシがその気になれば、大試が歩いて橋を渡るだけで潜入できるんじゃがなぁ」

「氷像何体できるんだか……」

「ミンチの方がよかったかの?」

「まだ氷像の方がいいですね……」


 そういえばと、クレープ屋でのことを思い出す。

 あの冷凍人間2人どうなったんだろう?

 そろそろ解凍されただろうか?


『ところで犀果様』

「なに?」

『桜井風雅をあの場に放置しておいてよかったのですか?』

「よくは無いだろうけれど、忘れてたんだよ。お巡りさんに回収されているかな?元々教会の管理する範疇らしいから、俺にどうこうできる状況でもないかもだけどさ」

『いいえ、警察組織には回収されておりません。現在、第一王子派閥の工作員によって四国へと運搬されております』


 んえぇ……?

 アイツはよりにもよって、噂の第1王子と組んだの……?

 主人公様さぁ……。


「もう今日は何も考えたくない。本当に帰って1回寝る。後のことは明日考えよう!」

『では、お部屋でお待ちしております』

「うん」


 部屋で待つも何も、お前スマホにいるだろうが、とは思ったものの、別に敢えて言う事でもないのでスルー。

 部屋でアイがあの見た目で待っててくれたら、それはそれで嬉しい気もするし。


「できれば私も四国へご一緒したいのですが、流石に許可が下りませんでした……」

「そりゃ王女様を送り込むわけにはいかないでしょうよ……。帰ってきたら一緒にゆっくりしよう。1日中何もしないでダラっとするんだ……」

「では、最高の安らぎ空間をご用意しておきますね!」


 有栖も腕をブンブン振りながら自室へと引き上げた。

 俺も帰ろう。


「大試よ、おぬし、本当に変なもんに好かれているのう?」

「変なもん?アイのことか?話し方は硬いけど、すごく便利だし、アバターも可愛いぞ」

「……まあ、部屋に帰ればわかるじゃろ。ワシもなんとなくそうだろうなと感じとるだけじゃし」


 意味深なソフィア様の様子に首を傾げながらも、一番変なもんといえるのは、大精霊になってるソフィア様なんじゃないだろうかと思ってしまっている俺です。


 そんなこんなで、やっと帰ってきました寮の部屋。

 扉を開ければ、結局今日はあまり堪能できていなかったベッドが待っている!

 さぁ!寝るぞ!


「お帰りなさいませ犀果様」

「うんただいま。ツッコミは明日にさせてくれ」

「かしこまりました。お休みになられるのでしたら、子守唄は如何ですか?」

「脳を休めたいから今日は無しで良いよ」

「そうですか。練習してきたのですが」


 アイのアバターそのままのアイが俺の部屋の中にいた。

 メイド服で。


 よし、寝よう。


「ほら言ったじゃろ?」

「うるせぇ!寝るったら寝るんだよ!」





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