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9:

「わざとじゃないんです……最高の技を見せろっていうから全力でやっただけなんです……」

「限度というものがあるだろう?」


 知らないよ!

 初体験だもん!


 現在、職員室で聴取を受けています。

 相手は、先ほどの目線の鋭い試験官で、普段は攻撃魔法を教えているらしい上善寺先生だ。

 睨みがキツイけど、話せば案外わかってくれる人で助かった。

 だってさ、おれ1カ月前まで蛮族の村にいたからね?

 昨日までバルバロイスタイルよ?


「今後は、あまり無暗矢鱈と物を壊すんじゃないぞ?」

「無暗矢鱈となんて壊してませんって……」


 呆れ顔に見送られ出所する俺。

 試技エリアの弁償等はしなくていいらしい。

 試験は、結局失格のままではあるけれど、故意ではないという事を理解してもらえたのと、最高の技を見せろと言っていた学園側の責任も大きいという判断だ。

 正直助かった。

 あんな訳わからない装置の費用とか考えたくもない。

 もっと頑丈にするか壊れない仕組みにしてくれ。


「お疲れ様です。どうでしたか?」


 職員室を出ると、有栖が待ってくれていた。

 ドレス姿で。

 有栖は、スタイルも良くて胸も大きく、エクスカリバーを装備してからは血色も良くなったらしく、とても魅力的な女の子になっている。

 そりゃ人気にもなるわ。


「弁償とかそういうのはないってさ。それと……ドレス凄く似合ってる」

「ありがとうございます!」

「どこのお姫様かと思ったわ」

「ここのお姫様ですよ?」

「そうだった」

「ふふっ……。では、行きましょうか!」


 そう言って、俺と腕を絡める彼女に少しドキッとしてしまう。

 小さいころに1度だけとはいえあっているからまだ大丈夫だけど、初対面でこんなことされたら即惚れてしまうだろう。

 聖羅のボディータッチで多少は慣れているのも幸いだった。

 前世の俺だったら、例えこれから謎の壺を売りつけられるとわかっていても有栖にコロッと行っていただろう。



「俺のせいで入場遅くなったけど大丈夫なのか?王女って何か役割あったりしない?」

「このパーティーは、あくまでこの学園側主催の物ですので、王女と言っても特に何かあるわけではないですよ。しいて言うなら、入場するのは遅めの方が良いというくらいでしょうか?」

「へぇ、遅れる方が良いのか」

「あくまで入場時間内の話ですけどね。上位の者であればある程後から入場します。なので、今ぐらいが丁度いいのではないかと」


 学園の敷地内を、有栖と一緒にダンス会場まで歩く。

 前世の学内イベントをイメージしていて、てっきり体育館を飾り立ててそれらしく見せているのかと思っていたんだけど、この学園にはパーティー用の施設があるらしい。

 流石は、貴族だの豪族だのがリアルで存在する世界だなとは思うけど、パーティー初心者の俺としては猶更行きたくなくなった……。

 もうちょっとお遊びのやつから慣れさせてほしい……。


 そうこうしているうちに、会場の『桜花殿』という建物が見えてきた。

 名前は、これまた漢字で表現されているけれど、見た目は完全に西洋風。

 ここだけファンタジーな感じだな。


 会場の前には、既に人込みは無いようだ。

 皆、既に中に入っているのだろう。

 やっぱり、もう少し早く有栖を連れて行ってあげられたらよかったかも。


「……ん?誰かいるみたいだな……」

「そう……ですね。ドレスを着ているので女性のようですが、何故1人で……?」


 桜花殿の前の白い石畳。

 そこに、月明かりを受けて1人佇む少女が見える。

 この距離からでも、まるで絵画の世界に迷い込んだかのように美しい光景だけれど、なんだか見覚えがある気がする。


「って、あれリンゼじゃない?」

「あ!確かに!でも、リンゼは私の兄がエスコートしているはずなのですが……」


 リンゼは、第3王子と婚約関係にある。

 有栖曰く、2人とも同い年で、今年一緒に入学するのだから、当然パーティーに出るとしたら2人で参加するのが原則らしい。

 それも、普通であれば男性側が家まで迎えに行くし、学園内であれば寮まで迎えに行くはずなので、ここにリンゼだけでいるのはおかしいそうだ。

 何かあったんだろうか?


「リンゼ!パーティーに来たのか?」

「……大試と有栖……。うん、まあそうね」

「どうしたんですか?兄はどこです?」

「……わからない。時間ギリギリまで待っても連絡も無くて、仕方なくここまで来たんだけど……」


 そう言って、俯くリンゼの表情は、いつになく悲しそうだった。

 言っちゃうけど、俺を爆殺したことを問い詰めた時より悲しそうだった。

 俺には、その辺りの事よくわからないけど、王子と上手く行ってないんだろうか?


「じゃあ一緒に入るか?王女と腕組んで入れば、割と格好着くんじゃないか?」

「それいいですね!私、両手に華です!」

「……でも……」

「こんな所で1人でいたら危ないし、周りも気にするだろ?王子だってこんな所で大事な婚約者を待たせようとは思わないだろうしさ。中に入ろうぜ?」

「……そうね!その方が良い気がしてきたわ!」


 空元気だろうけど、彼女らしい笑顔になってくれた。

 俺は、第3王子の事よく知らないし、知り合いである国王の息子で、友人の有栖の兄である奴を悪くは言いたくないけど、少なくとも俺の中で第3王子の評価点は暴落したな。


「ところでアンタたち、なんでこんな遅かったの?」

「俺が職員室で説教受けてた」

「説教で済んだのね……」


 人間、話せばわかるんだぜ?

 話し合いができないなら殴り合いしかなくなることもあるけど。



 会場内に入ると、一気に視線が俺たちに集まった。

 言わずと知れた王女様である有栖と、公爵令嬢のリンゼ。

 そして、試験会場を吹き飛ばした上に王女と腕を組んでる謎のヤベー奴。

 聞こえてくる囁き声は、大体そんな所か。


 そうか……俺はヤベー奴扱いか……。

 イジメ対象にならずに済んでまだマシだな……。


 まるで俺達が入場したのを合図にしたかのように、生の演奏が始まった。

 すごいなぁ。

 これ、本当に新入生の歓迎パーティーなの?


「ところで、こういうパーティーってこの後何したらいいんだ?」

「普通は、パーティーの主催者が挨拶をして、乾杯してから、主催者自身やその子息、もしくはその場で一番上位の者たちのダンスを行い、その後は希望者たちでダンスをしたり、談笑をしたりと言った所ですね」

「今日の主催者って誰だ?」

「学園となってはいますが、実質的には生徒会でしょう。噂をすれば、ほら」


 有栖の目線を追うと、丁度2階から女性が階段で降りてきたところだった。

 ドレスではなく、俺と同じようにこの学校の制服を着ている。

 長い黒髪、前髪が切りそろえられた所謂姫カットと呼ばれるような髪型の彼女は、特別華やかな恰好をしているわけでもないのに、その場の生徒たちを圧倒するようなオーラを持っていた。

 なんというか、この人になら犬扱いされても良いかなっていう……。


「新入生の皆様、ご入学、誠におめでとうございます。王立魔法学園生徒会長、武田水城(たけだ みずき)と申します。今宵は、学園主催の歓迎パーティーへようこそ御出でくださいました。これから皆様が、どのような学生生活を送るのか、送りたいのか、それは私にはわかりません。ですが、この学園での生活が皆様の人生において、掛け替えのない尊い物になるように願っております。」


 そこまで言うと、会長はグラスを持ち、会場の生徒たちも持っているかを確認する。

 あ、俺持ってなかった!

 と思った瞬間、まるで心を読んだかのようにメイド服姿の給仕係さんが俺と有栖とリンゼにグラスを渡してくれた。

 この人、できる……!


「では、皆様の未来に幸多からんことを!乾杯!」

「「「乾杯!」」」


 会場中の生徒たちがグラスを掲げ、その後周りの人たちとチンとグラスを鳴らす。

 フランス語だと、これはいわゆるチンチンというやつだ。

 げへへ。


 グラスを傾け、中に入っている黄金色の透明な液体を飲んでみる。

 うん、味はぶどうジュースだな。

 シャンパンか何かかと思ったわ。

 シャンパン飲んだこと無いけど。


「挨拶も終わったし、次はダンスなのかな?」

「どうでしょうか……。兄がいれば、ダンスも任せてしまえばそれでよかったのですが……。場合によっては、大試さんと私が踊ることになるかもしれませんね」

「ダンスってしたこと無いんだけど……」

「私の動きに全部任せて頂ければ、会場中拍手喝采にして見せますよ」

「ダンス得意なんだな……。昔はあんなに儚げだったのに……。そういえば、エクスカリバーって今持ってないのか?見た感じ丸腰だけど」

「縮小して太ももにつけてますよ?」

「縮小できるんだアレ!?」

「なんで有栖が知っててアンタが知らないのよ……?」

「小さくしようなんて思ったこと無かったし……」


 もしファーストダンスを頼まれたらどうしようかと戦々恐々としながらジュースを飲んでいると、会場が俄かに騒がしくなった。

 騒ぎの元は、先ほど会長が挨拶していた、2階から降りてくる階段の途中の踊り場。

 ステージみたいになってる場所に、どこかで見たことがあるような男が立っている。

 その隣には、何故か聖羅が。

 そういえば、会場内に見当たらないなと思っていた。


 その2人を守るかのように、10人程の男たちが周りに立っている。

 何故かその中に、風雅の姿もある。

 お前ら、マジで何故?


「お兄様……?」

孔明(よしあき)様……?」


 隣の2人のつぶやきが聞こえてしまった。

 そういえば、入学式で挨拶していた第3王子があんな感じだったか?

 ……ってことは、リンゼの婚約者?

 ヨシアキって名前なのか。

 なんでリンゼのとこに来ないで、聖羅の隣にいるんだろう?


 会場中の生徒が頭の上にクエッションマークを飛ばしまくっているのもお構いなしに、尊大に話始めた。


「皆聞け!私は、第3王子である孔明だ!」


「なあ有栖、王族の苗字ってなんなの?」

「ありませんよ?日本王国において、王族だけが苗字を持ちません。たまに、称号を苗字のように名前の前につけて名乗る王族もいますけど、普通は名前だけですね」

「あ、そうなんだ?有栖は有栖なんだな」

「なので苗字にはちょっと憧れがあります。犀果有栖なんてどうですか?」

「もうちょっとオシャレな苗字の方が良くない?桐生院とか」

「犀果もカッコいいですよ?」


 会場が困惑でガヤガヤしているせいか王子の言葉がなかなか続かないため、暇つぶしに有栖と話す。

 リンゼは、それどころじゃ無さそうなので、とりあえずスルー。


「今日は、皆に聞いてもらいたい事があって来た!だがその前に……リンゼ・ガーネット!前に出て来い!」


 なんか、いきなり呼び捨てでリンゼを呼び出す王子様。

 お前、その前にまず婚約者ほっぽってる事謝罪せーよ?

 カンジ悪くない?


「え!?……ちょ、ちょっと行ってくるわ!」


 慌てて前の方に向かうリンゼ。

 だけど、なんか不穏な物を感じる。

 こういう場所で感じたくないやつ。


「なぁ有栖、俺たちもちょっと前に行っておかないか?」

「……そうですね。嫌な予感がします」


 ははは、奇遇だな!俺もだよクソ!


 俺達2人は、最前列ではないけれど、何かあればいつでも飛び出してリンゼをサポートできる位置に移動した。

 ただ、可能であれば何も起きないでくれるのがベストなんだけどなぁと願っている。


「まあ、現時点でもう何か起きていると言えなくもないけどもな……」

「聖羅まで巻き込んでいるようですからね」

「あら、試技エリアの結界を切り裂いた問題児と、試技エリアを吹き飛ばした問題児さんたち、良い所にいるわね?」


 すぐ後ろから、囁くように話しかけられて、びっくりしながら振り返ると、先ほど挨拶をしていた会長がいた。


「これ、生徒会が用意した出し物とかじゃないですよね?」

「違うわ。だから、最悪の場合ちょっと力を貸してもらう事になるかも」

「生徒会で何とかならないんです?」

「あそこで王子の取り巻きみたいになってるうちの半分くらい、生徒会役員なのよ」

「うわぁ……」


 一気にきな臭さが上がった。

 何もかも忘れてあっちに並んでる美味しい料理食べて帰りてぇ……。


「リンゼ・ガーネット!貴様との婚約、今この瞬間を持って解消する!」




 え?そう言うのって卒業パーティーとかでやるんじゃないの?

 神也から借りたマンガではそう描かれてたぞ?




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