699:
神様相手に戦うのも初めてではない。
というか、もしかしたらこの世界の人類の中でも有数の対神戦闘の経験者なんじゃないだろうか俺は?
そんな記録を手に入れたとしても、全く嬉しくないが。
神様ってのは、ほぼ確実に理不尽な強さを持っている。
それは、大して神様としての力を持っていなかったはずのゼルエルとかスライム美須々さん相手ですら割と大変な思いして戦ったからわかる。
では、目の前のボボンはどうだろうか?
ドドメ色のオーラが溢れていて強そうだけれど、かなり無理をしている気がする。
先程まで、反応速度も雰囲気も普通の人間だった。
多分だけど、リンゼと同じように人間として転生しているんじゃないだろうか?
にも関わらず、なんかのルール違反をして無理やり神様パッワを引き出しているんじゃないかと思う。
だって、かなりつらそうな顔してるもん。
体もビクビクと悲鳴を上げているように見える。
アホみたいな神強化を施したせいで自壊しそうな体を、更に神パッワ使って補強と再生をしている感じじゃねぇかな?
事前に俺がしていた予想でも、あんな感じで神っぽい力を発揮してくるんじゃないかとは思っていた。
本気を出させたうえで叩きのめしたら、流石に負けを認めるだろうって考えで、逆ギレを誘発させたってのもあるし。
だけど、流石にあそこまで無理に強化してくるとは予想外だった。
普通そこまでするか……?
何があいつを駆り立てるのかは知らんけど、痛々しさすら感じるわ。
なにはともあれ、神パッワを発動しているのであれば、俺が多少本気でボコっても簡単には死なんだろう。
ギフトを変換してどっかの娘バカおっさんを洗脳から解いてやるためにも、敗北感ってもんをプレゼントしないといけないからな。
俺は、倶利伽羅剣に圧縮した火炎を纏わせながら、ボボンへと踏み込む。
「今なら手足を切り落とすだけで許してやるぞクソ女神!」
「手足切り落としたら私のものになってくれるなら良いよ!」
「怖いこと言ってんじゃねぇよ殺すぞ!」
「一緒に死んで前の世界に戻ってくれるなら良いよ!」
「良くねえよ!」
なんなの?
一体どこで俺のことそんなに気に入ったの?
少なくとも俺、前世で神様から何かお声を賜った覚え全然ないんだけど?
爆殺されただけだ。
剣を叩きつけるようにボボンの右腕へと振り下ろす。
それと同時に、ボボンを取り巻いていたドドメ色が彼女の体表へと凝縮し、一瞬で氷の武装と化した。
顔面だけが見える状態の全身鎧に、騎乗している騎士が持っていそうな氷のランス。
すごく重そうだけれど、その重さを感じさせない動きで俺の剣をランスで受け止めるボボン。
体格がまだまだ小さいから、上から振り下ろしている俺のほうが有利なんじゃないかと思うんだけれど、鍔迫り合いの状態にされてしまった。
神パッワによる強化なのか、それともその武装の効果なのか、よくわからんけれども、厄介だな。
まあ、厄介な相手には、遠慮せずこっちも色々使っていっていいよな?
「ボルケーノ!!!」
「ひっ!?」
ボボンの周りに雷切から雷を放ち、それを倶利伽羅剣で燃やす。
地獄の業火で圧殺するようにその包囲網を狭めていくと、流石のボボンも悲鳴を上げた。
神様自称していても、神をも燃やす炎はやっぱり怖いらしい。
俺が一緒に死んでくれるなら、自分が死んでも構わないとか言っていたけれど、その言葉が本音かどうかは別として、少なくとも俺が一緒に自殺してくれるとわからないうちに死ぬのは怖いようだな。
「もう……もうもうもう!ダメだよ大試くぅん!女の子には優しくしてくれないとさぁ!でもあちしは許してあげちゃう!だから一緒に幸せになろう!?大試くんがあちしだけを選んでくれるなら、他のことは全部許してあげるから!どんなにすごい要求でも、大試くんがあちしだけを好きでいてくれるなら、あちしのなかではバランスとれるもん!」
そう言いながら、更にドドメ色のオーラを出してくるボボン。
それが空中で氷の槍へとなり、俺の炎に打ち付けられて相殺される。
ボルケーノの方位からボボンが飛んで抜け出し、仕切り直しとなった。
ボルケーノ相手に正面から打ち合って相殺して来るなんて、流石は神パッワだな……。
最初から楽な相手だとは思っていなかったけれど、俺は、更に警戒のランクを上げた。
「俺にお前だけを好きになれだの何だのいいつつ、てめぇはオッサン共侍らせていい気になってたじゃねぇか!俺はそんなビッチに欠片も好意持てねぇんだよ!本当は、女の子何人も侍らせてる自分にすらちょっとアレじゃねって思ってるくらい恋愛は一途派なんだ!逆ハーになんて誰が入るかクソが!」
「!?してない!逆ハーなんてしてないよぉ!アレは!大試くんがあちしが他の男と仲良くしてるのみたら嫉妬してくれるかなって思って……」
「そういう面倒な当てつけ大っ嫌いだわ俺!そういうのが嫌で女性用の漫画とか途中で見るの止まること多いんだ!女だってそれする奴をウザイと思ってんじゃねぇのか?!俺は絶対そんな事されたくねぇな!」
「酷い酷い酷い酷い酷い酷い酷い!!!!なんでそんな事言うの!?大試くんだけはそんな事言わないでよぉ!!」
「酷いことしてんのはお前だろうが!!!」
全然ボボンの思考が理解できん。
恋する乙女みたいな雰囲気で語っているけれど、その結果とった手段が俺の中で認められる限界ラインを超えることばっかりだ。
俺はなぁ!
ラブコメは正ヒロインが順当に勝つのが好きなんだ!
ハーレムエンドとか嫌い!
逆ハーレムエンドはもっと嫌い!
ハーレム状態で言うのもなんだがな!すまん世の中!
ギャーギャーと喚きあいつつ切り結ぶ。
俺の剣による攻撃を、なんとか氷の槍で捌くボボン。
それだけでもかなり頑張っているようだとは思うんだけれども、流石に反撃に移れるほどの技量はないらしい。
さっきから、顔は渋いままだ。
別に長期戦になったら、それはそれで俺は構わないんだけれど、できればさっさと終わらせて帰りたい。
帰って寝たい。
だってフィギュアスケートで1曲踊った後なんだもん。
その後にこんな戦いをさせてる時点で、俺の中でお前の好感度マイナスいってるからなボボン?
「てかさぁ!お前、さっきから口では俺のこと好きだの何だの言ってるけどさぁ!俺がキレるようなことばっかりしてくるのなんなんだよ!?ただ喧嘩売りたいだけなんじゃねぇのか!?」
「違う違う違う違う違う違う違う違う!!!!好きなの!!好きなの!!好きなの!!あちしは大試くんさえいれば他は何もいらない!世界だってももうどうでもいい!なのに!あちしが大試くんを好きになったときには、大試くんはもう他の女の……あの女神と仲良くしちゃってた!だから許せないの!あの女神も!大試くんも!」
「勝手なことばっかり言ってんじゃねぇよ!!!」
俺は、倶利伽羅剣を小型化してホルスターへと戻し、代わりに村雨丸を持つ。
そして、今回のフィギュアスケート大会で編み出した力を使うことにした。
「プラズマで消し飛べ!!」
「これって妖精のアレだよね!?王子様の格好であちしを妖精に誘ってくれてるってことだよね!?」
「ちげぇよ話し聞けよ!!」
光の粒子が辺りに舞った。
感想、評価よろしくお願いします。




