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剣と魔法の世界に行きたいって言ったよな?剣の魔法じゃなくてさ?  作者: 六轟


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671:

「いよいよ本丸だ」

「ワシら以外で、今夜この家にまだ時計もらっとらん奴は、1人だけじゃな」

「ハイです」


 俺達の目の前にある扉には、『聖羅と大試の部屋』と書かれたプレートが付いている。

 因みにこれ、聖羅が勝手に宣言しているだけで、実際には聖羅単独の部屋である。


「当然の如く鍵は開いてますね。入りますか」


 いい加減この潜入に呪いの回避以外の意味を見出せなくなってきたけれど、TSはしたくないので仕方がない。

 俺は、静かに中へと入り、ベッドで寝たふりをする聖羅の元へと向かった。


「……」


 聖羅は、俺がかなり近くまで来ているにも拘らず、静かに寝たふりを続けている。

 ここから何をするつもりなのか全く読めない。

 いや、実力行使で何かしてきそうだなとは思うんだけど、その内容がわからない。

 ……まあ、された所で俺は別に嫌でも無いんだけども。


 というわけで、他の婚約者たちと同様に聖羅の耳元で歯の浮く台詞を囁いてやろうと近寄った時だった。

 目の前の美少女が、目を開かずにとびかかって来た。


「うお!?」


 俺の強化された身体能力でも、聖羅から発せられる余りの気迫に少し怯んでしまい、回避が間に合わず抱き着かれてしまった。


「聖羅!寝たふりは!?」

「私は、寝相が悪い。近くに大試が来た時に、たまたま抱き着いてしまっただけ」

「苦しい言い分だな!」

「でも、否定するだけの証拠なんて無いし、大試はきっとそこまでしない」


 確かにそうかもしれんけども!

 俺だって、結婚前に相手とイチャイチャエロエロな事をするのに抵抗があるから行わないだけで、聖羅に抱き着かれて嫌な気になる訳がないし。

 とはいえ、今回の呪い回避のためのサンタゴッコにとってこれがどう作用するのかもわからないのがちょっと不安なんだ……。


「これで、準備は整った」


 なんて思っていたら、聖羅がそうつぶやく。

 なんの?

 怖いんだけど?


「リエラ、見てて。これが、本当に愛し合う男女の好き好きだから」


 そう言って、俺の頬っぺたに自分の頬っぺたをくっつけてスリスリしだす聖羅。

 えっと?


「聖羅様 すごい」

「フっ!」


 困惑する俺を他所に、ドヤ顔をしている聖羅。

 そして、それをキラキラした目で見ているリエラ。

 何だこの状況?


「大試は、私たち仲の良い女の子に抱き着かれたら、無理に引きはがそうとはしない。相手が怪我しちゃうから。そこに付け込めば、こうしてイチャイチャできる」

「でも 蝶は 付け込まなくても 好き 好き できます」

「…………そ、それは、まだ異性として認められていないから」

「な そ そう なんですか」

「そう。今後精進して、巫女服とか競泳水着が似合う女に成長したらいい。リエラならできると思う」

「ハイです 蝶は 頑張ります」


 割と頭の悪い会話をしている気がするけれど、ここで俺が多少何かを言った所で解決しない問題な気がするので、そのまま聖羅が満足するまで俺はじっとしていた。


 30分後……。


「満足した。そろそろプレゼント欲しい」

「ほっぺたがヒリヒリするんだが……」

「後で治してあげるから、私の好き好きの効果を暫く味わっていてほしい」

「ちょっと猟奇的だな……」


 何はともあれ、目的を達成しよう。

 俺は、聖羅にプレゼントの箱を渡した。


「開けていい?」

「いいぞ。もう寝たふりも完全に止めたみたいだし……」

「もうプレゼントを受け取ったから問題ない」


 開き直った聖羅が、箱のラッピングを奇麗に剥がし、中身を取り出した。


「……木で出来てる?」

「正確には、世界樹だな」

「え!?」


 中々いいリアクションで驚く聖羅。

 聖羅がここまで驚くのも珍しい。

 それもその筈、聖羅だけは、俺が世界樹製の木刀の破壊を試みた工程を横でずっと見ていたのだ。

 その頑丈さも理解しているだろう。

 それなのに、俺はその世界樹で時計を作って見せたっていうんだから、驚くだろうさ。


「どうやって作ったの?」

「ちょっと女神様に世界樹を加工できる道具を借りてな」

「女神様から……」

「聖羅は奇麗だから、どんな物で作っても似合うと思うんだけどさ。やっぱり、聖羅が一番喜びそうな素材ってなると、木刀かなって思って、頑張って世界樹製の木刀を削って作ってみた」

「!」


 構造的には、本当に基本的な性能しか有していない。

 機械式ではあるけれど、リンゼの親父さんのくれた時計のパーツをそのまま再現しているだけだ。

 だけど、中身まで含めて、材料は全部世界樹製の木刀を加工した物なんだ。

 リスティ様から借りた彫刻刀とかを使っても、削るのに物凄く時間がかかったんだよなぁ……。

 その代わり、恐らく世界が終わるその日まで、この時計が壊れることは無いと思うけども。

 あ、普通に針が遅れるようにはなると思うから、定期的に巻いたりしないといけないけども。


「俺は、この世界に転生しても、ずっとこの世界に生きる存在である自覚が無かった。傍観者か何かでいるつもりになっていた。それを、ちゃんと1人の実在する人間であることに気が付かせてくれた幼馴染で可愛い俺の婚約者。そんな娘相手にプレゼントするモノなんだから、妥協したくなかった。聖羅の1番好きなものがこの木刀だって言うなら、どんな苦労をしたとしてもそれで作りたかったんだ」


 聖羅は、俺が昔聖羅を熊の魔獣から守ってから、俺の木刀をとても大切に思ってくれている。

 過去に俺が木刀をプレゼントした時にも、とても喜んでくれていた。

 だから、今回聖羅に送る時に使う材料として、他の物を選ぶことなんてできなかったわ。


「……うん、嬉しい!」


 華が咲き誇る様な笑顔をする聖羅。

 あの日、聖羅を異性として意識したその日から常に思っているけれど、本当に奇麗なこの女の子が俺の婚約者だなんて、なんて幸せなんだろうか?

 元々、リンゼが設計したこの世界の成り立ち的には、そんなふうになる予定では無かったはずなんだけれど、例えどんな不具合によって起きた結果だとしても、この娘から離れる気にはなれないだろうな。


「でも、大試は1つ間違ってる」

「え!?ごめん、何か問題あったか!?」

「うん。私が1番好きな物は、木刀じゃない。好きだけど、違う」

「じゃあ何だった?」

「もちろん、大試」

「……あー……。でも、流石に俺の肉体で作るのはちょっとなぁ……」

「大丈夫。こうして大試と密着しておけば、私の欲求は簡単に満たされる。大好き。誰よりも、リンゼや有栖、理衣に会長、絢萌よりも、絶対私が一番大試の事大好きだから」

「お……おう……」


 勿論聖羅が俺を好きでいてくれる事に疑いなんて持たないけれども、流石にここまで熱烈に言われると照れるな……。

 それでも……。


「うん、ありがとうな。俺も好きだぞ」


 そう言って、聖羅を抱きしめた。

 俺からこう言う事をするなんて、かなりの努力である。

 事実、聖羅もかなり驚いているようで、その直後に少し涙を流しながら俺の背中に腕を回した。


 そして10分……。


「のう、大試よ。流石にそろそろ良いじゃろ?」

「あー、うん。次の予定もありますしね……」

「あっ……」


 ソフィアさんに促され、聖羅を離す。

 聖羅的には、まだまだこうしていたかったようだけれど、済まんがみんな待っているしな……。


「それじゃあ、私もお返しのプレゼントね」

「あ、ネクタイか?」

「うん」


 そう言って手渡された箱の中身を見てみると、何やらピンク色のでかい柄が入っていた。

 取り出して全体像を見たら……。


「でっけーハート……。しかも中央に、『聖羅』の文字が……」

「大試は、プレゼントされたら礼儀としてつけてくれる気がするから」

「……わかった!つけるからな!途中で恥ずかしくなっても知らんからな!?」

「うん、大丈夫。ばっちこい」


 躊躇の一つもないその瞳に、俺は抵抗を諦めた。

 しかたない!切り替えていこう!


「じゃあ、希望者を迎えに行って、そのまま実家へ行ってパーティだ!」

「やっとじゃな!ワシ、酒飲みたいんじゃが!」

「蝶は 肉 食べたい です」

「私は、大試が作ってくれるならなんでもいい」


 長かったサンタクロースゴッコだけれど、中々充実したクリスマスだったんじゃないだろうか?

 準備にアホみたいに手間がかかったが、俺なりに皆へ最高の腕時計を作れたつもりだし、良かった良かった。

 流石にこれだけ配れば、あのネトラレ性癖持ちの陰陽師の呪いも回避できただろう……。


「あ、忘れる所だった」

「なんじゃ?どうかしたのか?」

「いや、ソフィアさんたちのプレゼント渡して無かったなって」

「おお!そうじゃった!ほれ!ワシの時計を寄越すんじゃ!」

「蝶も 欲しい です」

「はいはい」


 俺は、懐に入れておいた2つの箱を取り出した。


「ソフィアさんのは、大き目のダイヤモンドをつけてあります。デザインにも俺なりに拘りましたけれど、緊急時には、そのダイヤモンドにセルフで封印されて非難できるようにしておきました」

「おお!ワシの美しさを引き出しそうなキラッキラじゃのう!」


 そんな事自信満々に言われると、大抵の場合はどんだけ自意識過剰なんだよと言いたくなるところだけれど、ソフィアさんは実際に超絶美女だから仕方ない。

 ダイヤもキラキラだけれど、時計自体の素材もプラチナなのでキラキラだ。

 その輝きにソフィアさんが大満足しているみたいなので、よかったよかった。


「リエラのはこれな。リエラが体のサイズを変えると、その手首に合ったサイズに自動的に変化する魔術紋が組み込まれてるんだ」

「わあ 蝶 ついて ます」


 リエラに渡した腕時計は、装着者に合わせたサイズになるようにしてある。

 最初は、理衣用の時計を作るために考えていた方式なんだけれど、誤作動が怖くて実装できなかったため、あちらはもう少し単純な構造にしたので、こっちの方式はボツ案となっていた。

 しかし、リエラであれば、誤作動で手首が千切れても大丈夫だろうから問題ない……はず。

 たまにDVを要求されるので、リエラから俺へのDV欲求を解消するためにも、多少であれば誤作動してもいいかも、なんて思いも無くは無い。

 ただ、そんな機能よりも、短針と長針にそれぞれつけたチョウチョの飾りに夢中のリエラ。

 うん、可愛い。

 魔神だかなんだか知らんが、可愛いは正義だ。


「時計装着じゃ!どうじゃ?美女度が上がったじゃろ!?」

「蝶も 雌に 見えるように なりましたか」

「大試から木の時計を貰ったのは、間違いなく私だけ。ふふふ……」


 大騒ぎの女性陣を引きつれて、家や女子寮で希望者を迎え、テレポートゲートを使い実家へと戻る俺達。

 大変頑張った俺達と、それに協力してくれた皆を労うためのパーティーを開催し、皆で夜遅くまで騒いだ。

 来年もこうして、皆と一緒にクリスマスパーティができたらいいなぁなんて思いつつ今日を俺も楽しむ。

 ああ、いいわぁ……。


「紅羽ああああああ!お誕生日おめでとうなあああああああ!」

「だあああばぶ!」(ああああああ!またそれか小僧!?)


 妹への頬っぺたスリスリをしながら、今年1年の幸せを噛み締めて、クリスマスは過ぎて行った。





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