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剣と魔法の世界に行きたいって言ったよな?剣の魔法じゃなくてさ?  作者: 六轟


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670:

 女子寮1階。

 ここは、1年女子のフロアだ。

 といっても、高位の貴族用なので、その生徒たちの使用人たちも暮らしているんだが。

 俺がわざわざクリスマスプレゼントを渡す程関係を持っている人物は、このフロアだと3人しかいない。

 内2人は、今俺がいる部屋の中にいるんだが、ベッドの上で2人共目を瞑りつつも、手をこちらに突き出して早くよこせとアピールしている……。


 1人は、ブラコン拗らせて日本に放逐されたドイツの王女様であるルイーゼ。

 もう1人は、その護衛兼侍女までさせられる羽目になったベティさん。

 双方すごい美人なんだけど、双方とも残念なことになっていて、関わるたびに俺は頭を抱える羽目になっている。


 今回この2人に用意した腕時計は、他のその他大勢の方々に渡したものとほぼ一緒の構造になっている。

 ただ、一部だけ専用のものになっていて、それが……。


『お姉ちゃんすごーい!』

「ぐぬふうううううう!?」


 アラーム音声に、生録音した人の声を入れていることだ。

 彼女たちにクリスマスプレゼントで腕時計をプレゼントしようとしていることを事前に知らせた際に、「性能は普通でいいので弟の声が聞こえるようにして下さい」との注文を王女から受けて、それを聞いたベティさんが、「じゃあ私も御主人様のこのセリフを吹き込んでいただければ……」とメモ用紙を渡されたのでこうなっている。


 ちなみに、先程のお姉ちゃんというのは、ルイーゼ王女のことではなく、わざわざ現地まで録音しに行ってくれたイチゴが、王子の眼の前でイチゴエアを遠隔操作した際に発せられたものであり、つまりお姉ちゃん=イチゴだったりするんだけど、流石に可哀想なので本人には教えないでおこう。


『俺のケツにキスをしな』

「あんっっっっっっっ!!!」


 こっちの音声は、俺が吹き込んだ。

 なんでこんな台詞がいいのか知らんが、是非にとのことだったので……。

 この人大丈夫かなぁ……?


 ちょっと怖いので、王女たちの部屋はさっさと脱出し、女子寮での最後の目的地へとやってきた。


 この部屋の主は、彩音ちゃんです。

 氷の姫だの、1年の総代だの、なんかよくわからんすごめな異名をいくつも持っている彼女。

 勉強もできて魔術の腕も立つという天才の中の天才なんだけども、実はコミュ障で友達が現状俺くらいしかいない。

 いや、一応王子の婚約者とも友達のはずなんだけど、時間がなくてあまり会えていないらしいし微妙なところだ。


 そんな彼女の部屋にクリスマスの夜に入るのは、正直どんな事態になるのか予想がつかない。

 プレゼント渡してすぐ帰る予定なんだけど、スムーズに行くかなぁ?

 なんとか呼び止められそう……。


 まあいい、さっさと入ろう。

 鍵は、すでに開いていた。

 中へと入ると、明かりが普通についている。

 寝た振りをしておいてくれって言っておいたんだけど、灯りつけたまま寝る派なんだろうか?


 なんて思いながら室内へ入った俺がみたのは、来客用のテーブルに目を瞑って座り、頭にパーティー用の紙帽子を被った美少女の姿だった。

 テーブルの上には、ケーキとチキンが置かれている。


「…………」

「ぐーぐー!メリークリスマース!ぐーぐー!」

「…………」


 まさかとは思うが、クリスマスパーティなんだろうか?


「…………」

「………?………ぐーぐー!」


 あまりの事態に固まってしまった俺の様子に目を開けることもできず訝しそうにしている彼女。

 …………どうしよう、ちょっとあんまりにもあんまりで涙出た。


 俺は、彩音の手に時計を入れた箱を握らせ、耳元に口を近づけた。


「彩音、この後プレゼントを配り終えたら、家族皆で俺の実家行ってクリスマスパーティする予定なんだけど、お前も来るか?ハイならぐーを1回、イイエならぐーを2回行ってくれ」

「!!!ぐーです!」

「……わかった。1時間後に迎えに来るから、俺が部屋を出たら目を覚まして、出かける準備しておいてくれ。そのケーキとか料理を入れる収納カバンも用意しておくから……」

「はい!ぐーぐーぐー!」


 クリスマスって悲しいイベントだっただろうか?

 そんな疑問を抱きながら女子寮を後にし、廃教会のテレポートゲートを使って自宅へと戻ってきた。


 家に戻った俺は、大急ぎで皆の元を回っていく。

 家族たちに関しては、それぞれの希望をある程度考慮して時計を制作している。

 例えばファムは、「大人の女が持ってても様になる細めで上品なヤツがいいにゃ。あと、制作者の名前も刻印してあると様になる気がするニャ〜」といっていたので、つや消しのプラチナカラーで作ってみたし、AIメイドの3人は、勝手にスマートウォッチにするから、その外側のケースだけ作ってほしいというので、本人たちの希望するデザイン画と設計図を参考に作っておいた。

 アルテミスは、時計じゃなくて3分を図るタイマーにしてほしいっていうからそうしたし、シオリは美味しそうな匂いがする機能つきが良いらしい。

 ソラウなんて、腕時計ですらなくて懐中時計になっているし……。


 そんな感じで皆に順番に配っていき、今夜我が家に滞在している人間でプレゼントを渡していないのは2人だけとなった。

 そのうちの1人の部屋の前に立つ。

 普段この家に住んでいるわけじゃないんだけど、今夜はどうしてもここに泊まりたいということで、俺の家に作った彼女用の部屋にいるはずだ。


 一応扉をノックしておく。

 返事はない。

 ドアノブに手をかけると、鍵がかかっていない。

 俺は、サンタクロースらしく、音もなく室内へと侵入した。


 部屋のベッドの上には、金髪の少女が目を瞑って横になっている。

 俺の婚約者であるリンゼだ。

 近寄って頭を撫でてみると、寝ているふりをしているにも関わらず、ツーンとした表情になった。

 顔が赤くなっているので、照れているだけだろうけども。

 よし、婚約者たち皆に恥ずかしいセリフを言って回ったんだし、リンゼにもやっとくか!


「リンゼ。この世界に来る原因となった爆殺事件については、流石に俺も庇い立てできないくらいのやらかしだと思うんだ」

「!?…………」


 リンゼが、目を瞑ってるのに、目線をそらした気がした。


「でも、この世界に転生させてもらって、出鱈目だけど俺を愛してくれる両親と、綺麗な婚約者たちまでできて、他にもいっぱい大切な家族や友達が増えた。何より、お前という存在とこうしていられるのがとても嬉しいんだ。それだけで、爆殺されたことも許せるくらいにな。強気なのに意外とナイーブで、人一倍この世界を楽しんでいて、そして俺を愛してくれるお前が堪らなく愛おしい。お前の反応が可愛いから、ついつい爆殺だのなんだの持ち出しちゃうけど、俺はもうそのことについて、本当にお前を恨んでいないし、繰り返さないのであれば期にしなくていいと思ってる。俺は、この世界で俺という存在になった。そして、リンゼという女神じゃなくてリンゼ・ガーネットという女の子が好きになった。だから、この世界で一緒にこれからもずっと一緒にいてくれ。女神に戻るまでの期間は伸びちゃうかもしれないけどなー」


 どうにも全てをカッコいいキザなセリフで固めるのは恥ずかしくておちゃらけちゃうな……。

 なんて思いながらリンゼの頭から手を話そうとしたとき、リンゼが俺の手を掴んだ。


「……今から言うのは、ただの寝言だから」


 そんな事を言いながら。


「わかってるとは思うけれど、アタシもアンタのことが好きだから。アンタと一緒にいられるなら、女神になんて戻れなくてもいいくらいだし!」

「……」

「絶対、アンタといつまでも幸せに暮らしてやるわ。女神じゃなくてリンゼって女の子としてね。アンタとの子供だって生むわ。絶対に」

「……はい、善処します」

「全書じゃダメよ。決定だから。あと、さっきも言ったけどこれ寝言だから」


 そういい捨てて俺の手を解放し、寝返りを打って反対側を向いてしまうリンゼ。

 まあ、お互い恥ずかしいもんな……。

 リエラが「リンゼ様 大試様 好き 好き」って呟いているし、ソフィアさんが囃し立てるようなジェスチャーをしているし……。


 よし!もう終わり!

 恥ずかしいからさっさとプレゼント置いて出ていくわ!


 リンゼの枕元においた時計は、今回作った中でも最難関だった作品の一つだ。

 なにせ、完全な魔道具である。

 魔石をエネルギー源に使っていれば魔道具として見られることも多いこの世界なので、今回不特定多数の相手に送ったオーソドックスなデザインの時計たちも、電池交換までの期間がすごく長い魔石電池式のを採用しているので魔道具とカウントされる場合もあるだろう。

 確かに魔石から得られるエネルギーを使っているとはいえ、そこから発せられる魔力を電力に変換して使用しているので、構造的には電気で動く前世の腕時計と大差のない構造になっている。


 しかし、リンゼに渡したこのローズゴールドの時計だけは、その機能が全て内部に作った魔術紋に魔力を流すことで発動する魔術によって成り立っている、全くのファンタジーな腕時計となっているんだ。

 動力源も魔石でも電池でもなく装着者の魔力だし、電池切れの心配も低い。

 ただしこれは、この制作を手伝ってくれたマル義兄さん曰く「高度な魔術の腕を持つ天才的な魔術師でもないと常用できないくらい扱いが難しい上、今回作った腕時計の中で最も壊れやすい繊細な作品」らしい。

 俺も、覚えたばかりの技術を詰め込んでみたくて色々ノリで作ったもんだから、流石にそんな扱いの難しいものになっているとは思っていなかったので、マル義兄さんからそんなふうに評価された際に、作り直そうかと悩んだんだ。

 でも、俺のそんな考えを聞いたマル義兄さんは、「壊れたらいつでも、いつまでも俺が治す!って宣言しておけばリンゼは喜ぶと思うよ!」なんて言ってくれたので、こうして渡してみたんだけど、本当だろうか?

 わからないけれど、手伝いの代償に、10回死ぬことになっているので、その価値はあったと思いたい。


「リンゼ、この腕時計、ちょっと他より色々むずかしい技術盛り込んだら壊れやすくなっちゃったんだけど、もし壊れても俺が直すから許してくれ」

「……わかったわ。壊れたらすぐに直してもらうから。一生ね」


 なんて、すごく嬉しそうな声で寝た振り言を言われたので、多分大丈夫だろう。

 




感想、評価よろしくお願いします。


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― 新着の感想 ―
リンゼのデレはいいぞ! クリスマス?ソロでケーキ食べてソシャゲのイベントやる日だよね
現状、自分の中ではプレゼント配りで彩音ちゃんが一番癖が強い。
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