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王城を後にした俺は、そのままいくつもの部屋へと侵入を繰り返した。
タヌキたちの神社へと侵入し、仲良く同じ布団で寝ているキツネ耳ロリっ娘とタヌキ耳ロリっ娘の枕元にプレゼントを置いたり、現状シスターのはずなのに酒臭い臭いのする聖騎士の女性たち(泥酔して寝ている)の部屋をしらみつぶしに回ったり……。
とりあえずめぼしい所は周り終わったので、あとは纏まっている所と、婚約者たちの元を回るだけだ。
順番的には、絢萌の所から始めて、学園の女子寮、我が家、最後に希望者と共に実家へと移動となる予定である。
絢萌と薫子ちゃんは、前に住んでいたボロアパートから引っ越して、今はオートロックの高級マンションに住んでいる。
白川郷リゾート関連の儲けによって、実家からの仕送りが大幅に増えたからだ。
それに、俺と婚約した以上、誰に逆恨みで狙われるかもわからないからなぁ……。
というわけで、かなり侵入するのが大変な物件となっている。
「どうするんじゃ?王城よりはマシかもしれんが、ここもかなり難しい気がするんじゃが?」
「実はですね、この日の為に協力者を潜り込ませていたんですよ」
「おお!スパイっぽいのう!して、その協力者とは?」
「金髪縦ロールで、可愛いですよ」
「ターゲット本人じゃろうが……」
絢萌は、変に秘密にするより、しっかり伝えた方が安心しそうだからさぁ。
という訳で、エントランスで絢萌の部屋の番号を入力し、呼び出しボタンを押す。
『はい、何方ですの?』
「合言葉を」
『本当にやるんですのねそれ?』
「折角だし」
『はぁ……わかりましたわ。山!』
「プリン食べ放題」
『……何なんですのこの合言葉?』
「適当だよ適当。頭に浮かんだ言葉ってだけ。その方がランダム性高くていいでしょ」
『そう言う事にしておきますわ……』
そしてエントランスの自動ドアが開く。
そこからエレベーターに乗り、目的の階で降りて、絢萌の部屋の前へと辿り着いた。
俺は、ドアにノックをする。
コンコンっ
コンコンコンっ
コンっ
『はいはい、確認しましたわ。今、鍵を開けますわね』
「よし、じゃあ寝室に行って寝たふりしてくれ。薫子ちゃんは?」
『もう寝ていますわ。サンタクロース役の方の為にも、子供は早めに寝るものよ、なんて言ってましたの……』
「流石というかなんというか……」
玄関ドアの鍵が開く音がした後、ドアの向こうの気配が消えた。
「ノックの回数で暗号にするのは、ちょっと憧れるのう」
「でもノックって日本だとあんまりやる機会無いから、実際に役に立つ事無い知識ですよね」
「そうじゃなぁ……。テレビドアホンのスイッチ押せって話になるわ」
「ロマンが無い話ですけどね」
「大試様 好き 好き」
絢萌が寝たふりをするまで5分の待機時間を設定しているから、その間玄関前で待つ。
流石高級マンションだけあって玄関前も暖かいからストレスは無いけれど、待つのに飽きたリエラが頬っぺたスリスリを始めてしまって、ちょっと周りの視線が怖くなったりもした。
幸いなことに誰も通りがかったりしなかったけれど、心理状態としては、ほぼ泥棒とかそんな感じなんじゃなかろうか?
「……よし、5分経った!突入するぞ!」
「よっぽどこの状況が辛かったんじゃな」
「好き 好き」
一部の声を無視し、絢萌のマンションの部屋へと侵入を果たす。
事前に協力者によって齎されていた情報に間違いは無かったらしく、辿り着いた部屋には、ベッドが2つあり、その上にそれぞれ少女が1人ずつ寝て……寝て……ないな。
薫子ちゃんは、その大きく開けた口からヨダレが垂れる程ぐっすり寝ているようだけれど、絢萌の方は、寝たふりにも程があるわ。
「すやすや……」
じゃないんだわ!
吹き出しそうになったわ!
隣で寝てる薫子ちゃんの、「すぴー!すぴー!」と比べてみろ!
可愛いから良いけども!
いや、俺が寝たふりしてくれって言ってるから仕方ないんだけども……。
うん、悪いの俺だったわ。
諸悪の根源は、どこかのイケメン化したクソ和風ピエロだが。
まあいいや。
寝たふりしてくれているので、寝ている物として扱おう。
さっき、有栖に色々歯の浮くようなセリフを飛ばしてしまったので、不公平の無いようにしようじゃないか。
俺は、可愛い大根役者の頭に触れた。
ビクッとするその仕草まで可愛い。
「その不器用そうな所も、お嬢様らしく振舞おうとしつつも庶民っぽさが垣間見えちゃう所も、妹を厳しくも大切にしている所も、俺の妙な提案に呆れつつも乗ってくれる所も、もう何もかも可愛い。絢萌みたいな娘の婚約者でいられるのは、俺にとってとても誇らしい事であると同時に、とても幸せな事だ。好きだ、絢萌」
自分でも途中から何言ってんだかよくわからなくなってきたけれど、恥ずかしいんだからしょうがない。
まあ、絢萌も顔を真っ赤にしてプルプル震えているから、俺の勝ちで良いだろう。
スヤスヤと言うのも忘れているみたいだし。
このまま勢いに任せて事を終わらせよう。
俺は、絢萌の枕元にプレゼントの箱を置いた。
絢萌の腕時計は、金色のパーツで構成された煌びやかな物になっている。
金色だけれど、金なんて軟弱な金属は使用していない。
剛力エンペラーフグとかいうこの世界で最も釣り人から嫌われているフグの魔獣の歯を削りだして作っている。
この歯の硬さがダイヤモンドに匹敵する程なもんだから、餌が付いた釣り針に噛みつかれると一発で破壊されてしまうため、釣り人から忌み嫌われているんだ。
しかも、体中に毒があり、仮に毒を何とかしたとしても、身が全く美味しくないというどうしようもない奴だ。
おまけに、魔獣だから一応魔石を持っているんだけれど、その魔石も極小サイズで使い道があまりない。
本当に、歯を利用するためか、その強力な毒の素材としてしか人間の役に立たないすごい奴だ。
そんな奴をわざわざ狩ってでも手に入れて利用したいと俺が思う程この歯がすごかったんだけどさ。
削るのに神剣使った程だし……。
その後、薫子ちゃんの枕元にも腕時計入りの箱を置いておいた。
薫子ちゃんの時計は、絢萌のと対になるように銀色だ。
タマハガネムシという虫型の魔物の甲殻を使っていて、プラチナ並みにピカピカしている。
色だけじゃなく頑丈さもプラチナ並みだけど、質量は卵の殻くらいという不思議な素材だ。
加工が難しいから、何度も失敗したため、これ1つ作るのにタマハガネムシの素材を50匹分ほど無駄にしてしまった。
まあ、自分で倒して手に入れて来たもんだから問題ないけども。
プレゼントを置き終わった後、次の予定も押している為にすぐに部屋を後にしようとした。
すると、玄関の所に、ラッピングされた箱が2つあった。
入ってくる時には陰になり、出ていくときに見えるようになる場所だ。
「大試さんへ 絢萌(薫子)」とそれぞれ書かれているので、ありがたく貰っておこう。
絢萌さんからのプレゼントは、目にも鮮やかな緑色のネクタイだった。
ワザと色ムラを作ったような、和風な感じのデザインだ。
おおう……これはまたネクタイ生活をしたくなるもん貰っちゃったなぁ……。
薫子ちゃんの方は……あれ?こっちは手編みの手袋みたいだ。
手の甲に、大きくハートマークが描かれてるんだけど、これを俺につけろと……?
結構恥ずかしいんだが……?
下手をすると、さっき絢萌に色々言ってた時より恥ずかしいんだが……?
……意を決して手袋をつけた。
貰ったんだから、寒い外での活動中はつけておくべきだろう。
「良いもん貰ったのう大試よ!どんな気分じゃ!?美少女たちから次々ネクタイを貰ってニヘラってた直後に、こっぱずかしいもん貰って、それでも礼儀として付けるべきじゃろと決断した気分はどうじゃ!?」
「そうですね……。勝者、薫子ちゃんって感じですかね」
俺は、ゲラゲラ笑うソフィアさんと、未だに頬っぺたスリスリをし続けてるリエラを連れて、次の目的地へと向かった。
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