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王族の許可を貰っている為、仮にここで見つかったとしても、俺達が罪に問われることは無い。
もちろん城を護ってる方々には、そりゃもう死に物狂いで追いかけまわされるだろうけども。
しかし、クリスマスイブからクリスマスにかけての夜間にそんな事件を起こした場合、恐らく警備担当者たちが血の涙を流して怨嗟の念を送ってくるだろう。
それは、流石に可哀想だし、俺としてもちょっと勘弁願いたい。
というわけで、見つからないように侵入するのが大前提となっている。
「大試よ、壁を垂直に駆け上がっとる時点でちょっとアレじゃなぁとは思っとるんじゃが、これ見つかったりせんのかのう?」
「問題ありません。ここ、セキュリティの穴になってるんですよ」
「それはそれで大問題だと思うんじゃが!?」
「警備の問題点は、年明けにレポートにして提出する予定です。今年は、もうそんな大仕事させない方がいいでしょうし」
「じゃが、その穴を放置しとったら、侵入者が出てくるんじゃないかのう?」
「そうですね。100レベル越えな上に身体能力モリモリ上げている人間並みの身体能力を発揮できて、尚且つセキュリティの穴を発見できる高度なAIでも仲間についていれば、できるかもしれませんね」
「つまり、ほぼ無理って訳じゃな?」
「まあそうですね。って言っても、一応アイが独自にその穴を埋めるセキュリティを敷いてくれているんで、万が一の時も安心です。有栖の実家ですし、危ないのは放置できません」
「それならば良い!」
数日前、この辺りでは珍しく、少し積もる程に雪が降った。
それによって、この部分の幾つかのセンサーに影響が出ている。
雪に混ざった汚れによって、或いは、雪によって垂れ下がった枝によって。
色々な要因が重なって、ここの壁からであれば、問題なく侵入できるらしい。
まあ仮に失敗しても、その時は警備の人間が駆けつけてくる前に城の中に入ってしまうんだけども、
その場合、警備担当者たちには、非番の者も含めてクリスマス返上で夜間出勤してもらうことになる。
すまんな!
しかし、結局セキュリティに引っ掛かる事も無く、アイが用意してくれたルートを手順通りに辿るだけで王城へと侵入できてしまった。
これは、新年早々俺がレポートを提出しただけで、警備の方々のお仕事が数か月単位で修羅場だな……。
まあ、それがお仕事ですからね!頑張ってください!
まずは、王様の寝室だ。
といっても、本人は不在中。
というか、今回王族の皆さんは、大ホールで開かれているパーティに出席中だから、殆どが今自室にいない。
例外は、欠席している有栖だけのはず。
有栖だけは、ベッドで寝たふりをしておくと事前に宣言されているので、多分いるはず。
とりあえず、王様のベッドにプレゼントを置いておく。
滅茶苦茶ゴツくて頑丈な、ムッキムキの大男にしか使う事を許されないデザインの腕時計が入っている。
次に、宏崇王子の部屋だ。
こっちの腕時計は、善意の協力者によってアラームの音声が吹き込まれた物だ。
その隣の部屋のベッドには、これまた善意の協力者によってアラームの音声が吹き込まれた時計を置いておく。
因みにこっちの部屋は、王子の婚約者の樹里さんの部屋だ。
正式な婚約者になった後、王子妃教育のために城に住み込むことになったんだけど、二人ともが兄妹プレイをしたいからと隣同士の部屋を所望したため、こんな部屋割りになっている。
王子と樹里さん双方の協力によって作られた特製アラーム腕時計、是非是非活用してほしい。
他にも、幾つかの部屋を回ってプレゼントを置いてきた。
まあ、王城に居る知り合いなんてそこまで数いないから、すぐ終わったけども……。
ここに初めて来たときにお世話してくれたメイドの麗子さんくらいだな。
最後に、有栖の部屋だ。
俺は、そーっと……そーっと室内に侵入する。
ベッドが膨らんでいるので頭の方に回り込むと、アルビノの少女が寝ていた。
俺が近づくと、「寝ていますから!」とでもアピールするためか、力を入れて目を瞑っている。
寝たふり下手すぎだろ……。
事前に本人から宣言されてるから、いいんだけどさ。
俺は、寝ている有栖の耳元に顔を近づけた。
「寝ている有栖も可愛いな」
「……!?」
「あの日、初めて会った時、有栖が俺のとこに来てくれて本当に良かった。俺の力で有栖を救う事が出来て本当に良かった。君と将来結婚できて、俺は本当に幸せに思ってる。また来年以降も色々苦労かけると思うけれど、俺と夫婦になることを絶対に後悔させないから、これからもよろしくな」
「!!!!」
顔と耳を真っ赤にして寝たふりを続けるそんな可愛い婚約者の頭を撫でて、枕元に腕時計入りのケースを置いていく。
色違いの人工ダイヤモンドを削りだして組み立てた物だ。
美しく、そして頑丈で、されど女性的なフォルムも維持して作った物で、今回プレゼント用に作った物の中でもトップクラスに手間がかかっている。
中のパーツまで、殆どが人工ダイヤモンドだし。
色付きの人工ダイヤを使う事で文字盤と針を見えるようにしているけれど、それ以外はキラッキラで、中々ゴージャスな見た目になった。
あと、リンゼに頼んで魔術で保護してもらっているから、ただでも硬いダイヤモンドがほぼ破壊不可能な存在になっている。
聖剣で頑丈になって元気いっぱいな有栖をイメージして作ったけれど、自信作だ。
プレゼントを置いて、満足して部屋を後にしようとした時。
「…………!」
ばっと、有栖が目をつむったまま俺の腕を掴んで引き留めてきた。
なにかと思ったら、指で机の方を指さしている。
そちらを見れば、ラッピングされた箱が目に入った。
「あぁ、俺へのプレゼントか」
「!」
目を瞑ってれば反応してオッケーという事に有栖の中でなっているらしく、ニッコリと笑顔で力いっぱい頷かれた。
有難く頂戴しておこう。
「中身は……おお!オシャレなネクタイだ!……あれ?もしかして、皆それぞれネクタイを選んでくれた感じ?」
「!」
「ありがとう!日替わりで身に着けるかな!これまであんまりワイシャツ好きじゃなかったけど、これからはネクタイつけるためだけに着るようにするかな!」
俺のその言葉を聞いて、目をつむったままニッコリどころかニンマリとした顔になって、首をウンウンと頷いている有栖の頭をもう一度撫でて、俺は有栖の部屋を後にした。
「大試様 大試様 交尾 しないのですか」
「しねぇよ何言ってんだリエラ……」
「2人とも 発情 していました」
「…………しねぇよ」
「青春じゃなぁ……」
有栖の部屋は、照明がついていなかった。
だけど、地面の雪に月明かりが反射し、優しくも明るい窓からの光に照らされた有栖がとても奇麗だったせいで、ちょっと危なかったのは秘密だ。
それを隠すためにキザったらしい台詞で誤魔化したけれど、有栖が目を開けていたら恥ずかしくて絶対に言えなかったわ。
さて、さっさと次に行くぞ!
俺は、王城でのミッションを完了し、次なる目的地へと向かう事にした。
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