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クリスマス・イヴの夜。
俺は、真っ赤な衣装に身を包み、闇に紛れていた。
俺にあのクソ陰陽師がかけた呪いは、サンタクロースのようにプレゼントを配りまくれというもの。
つまり、子どもたちに見つからないように不法侵入し、枕元にプレゼントを置いてこなければいけないんだ。
にも関わらず、このクソ目立つ服で活動しないといけないと来た。
なんなんだ?
サンタクロースってのは、極度のマゾなのか?
縛りプレイ大好きなのか?
よく考えたらあの爺さん、無償でゲーム機だのなんだの配って回るとか、ボランティアで済む話じゃないぞ?
「大試様 大試様 お着替え しました」
「サンタコスのワシを見よ!」
今回連れて行くのは、離れられないソフィアさんと、魔術も使わずに自分でふわふわ飛び回れるリエラだけ。
人数が増えれば増えるほど、このスニーキングミッションの成功率は下がるし、この人数が限界だろう。
本当は、トナカイ役がいればよかったんだけど、空飛ぶ四足獣の知り合いがいなかったから用意できなかった。
いや、もしかしたら知り合いの知り合い辺りにはいるかもしれないけど、多分そんなやつは相当面倒な相手だと思うので、探そうともしませんでした!
「さて……では、行くぞ!」
「はい 蝶 いきます」
「了解じゃ!」
今夜、俺達は、2000人近い知り合いの部屋へ侵入するわけだけど、もちろん事前に今夜プレゼントを渡しに侵入することは本人たちに伝えてある。
そのうえで、許可を貰った相手の部屋にのみ侵入するつもりだ。
拒否された、もしくは、返答が得られていない相手の部屋には、入るつもりがない。
その相手には、玄関のドアノブにでもプレゼントを下げておく予定。
ただ、びっくりするほど皆OKくれたんだよなぁ……。
ダメって言われたのは、白川郷リゾートで新しく雇った10人くらいかな?
その全員が、恋人がいたり夫婦だったりで、この夜を2人きりですごしたいタイプの方々だ。
いいことだと思う。
仲良く人口増やしてくれ。
それ以外の方々は、食い気味でOKをくれたから、今夜の侵入は違法行為では無いはず。
とはいえ、侵入することに違いはないので、サンタクロースっぽさは十分だろう。
ちゃんと戸締まりもしっかりしておくように言ってあるので、他の泥棒が入る心配もそこまでない。
もちろん、こんな夜に盗みに入るような奴も絶対にいないとは言えないが、俺が今夜プレゼントを配るような関係性の方々の家には、かなりのセキュリティを用意しているから問題はなかろう。
俺の知り合いってだけで、ある程度リスクあるだろうからなぁ……。
まあ、そのセキュリティも、アイが全部用意してくれてるんだけども。
さて、最初に侵入する先は、アイドル事務所の寮として使っている部屋だ。
事務所としてつかっているビルのいくつかのフロアをマンションのように使っているので、アイドルたちの安全をこれ以上無く守れる場所となっている。
クリスマスライブに行っているので、現在この階に人はいない。
だから、俺の侵入を阻むセキュリティを解除する者もいない。
さぁ……始めようじゃないか!
最強のセキュリティと、俺というサンタクロースとの戦いを!
今!俺の侵入リストの腕が試される!
「…………」
俺は、入口の生体認証装置に手を乗せる。
すると、「おかえりなさいませ」と美須々さんに吹き込んでもらった音声が流れた。
そして、エントランスの自動ドアが開く。
「のう、大試よ」
「どうしました?」
「何普通に開けておるんじゃ?」
「いや、俺ここのオーナーだから、そりゃ当然中に入れますし、全室のマスターキーもありますもん。使うでしょうよ」
「そうかもしれんが……これ、サンタクロースなんじゃろうか……」
「だって、このビルの部屋に通じる煙突なんてありませんし、現代のサンタクロースなんて、大半が保護者である親で、その親達は普通にいつも通りの出入り口から入っていくんですから、これでいいんですよ多分」
「いや、お主が良いのであればワシは構わんのじゃが……」
もちろん構わん!
さっさと済まさないと、今夜中に回りきれないからな!
そして俺達は、アイドルたちの部屋をじゅんぐり回って、ベッドの枕の横にそれぞれのイメージでデザインした俺の手作り腕時計をおいて行った。
特に美須々さん用の腕時計は、一見真っ黒でツヤツヤしているんだけど角度によって色が無限に変わるという特殊な素材を使用して作った自信作だ。
喜んでくれるかなぁ……。
美須々さんの部屋は最後にして、次に入るのはどこかのクノイチの部屋だ。
扉を開け中に入ると、風を切るような音が聞こえたので後ろに飛び退く。
……なんか、俺がいた場所の床にクナイが刺さってる……。
「今度、あの馬鹿には部屋の中にトラップ仕掛けるのやめろって注意しておくか」
「大試様 トラップ 当たってもいいですか 」
「ダメ」
「ハイです」
結局、それ以外に特にトラブルもなく配り終えた。
アイドルちゃんの部屋に「社長、おつかれさまです」と書かれたメモと、お茶のペットボトルがあって癒やされた。
美寿々さんの部屋には、逆に俺へのプレゼントが置いてあったし、なんだか嬉しいなぁ……。
中身は……おお!なんかよくわからんけど、なんとなくおしゃれな感じのするネクタイだ!
俺にその辺りの知識とセンスはないのでわからないけど、一見して高くてセンスのいいブランド物って感じ。
ありがたや。
「さて次は、かなりの難関の予感がする」
「大試様 大試様 どうやって入ればいい ですか?」
「うーん……」
俺の眼の前には、大きな城がそびえていた。
何を隠そう、王城だ。
「のう大試よ。これ、ワシら捕まらんか?」
「見つからなければいいんですよ。それに、王様と王子様と王女様から許可貰ってますし、見つからなければ誰も困りません」
「ならば良い!ワシ、美人怪盗の気分じゃ!」
気分がノリノリのまま赤いタイツに着替えたソフィアさんと、ふわふわ浮き始めたリエラといっしょに、俺は城壁を垂直に駆け上がりはじめた。
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