665:
2年前のクリスマスに、「クリスマスに予定が無いのはどうなんだ?」と考え、勢いで投稿を始めてから2年。
自分でもここまで書き続けるとは思っていませんでしたが、ストレス発散に丁度いいので今後も続けていこうと思っています。
今年もクリスマスに仕事しか予定無かったので。
「ではまた!メリークリスマス!アンドハッピーニューイヤー!」
そう言って、あのふざけた烏帽子コックは厨房へと消えて行った。
俺が「飴の袋にキツネ耳美女の水着グラビアでも乗せてみたらいいんじゃないですか?色んな感情エネルギーを集められそうですし」と思い付きで言ってみたら、何か黒いオーラを発しながらハァハァと息を荒くし、その少し後にとてもスッキリした顔で去って行った。
…………この時点の俺には知る由も無い事だけれど、10年後に、世界中のエロサイトの経営者たちが協力して集計をとった結果、最も検索件数の多かったジャンルが『キツネ耳巫女ビキニお姉さん人妻経産婦』であることが判明し、そのジャンルの発端となったのが、今夜日本の王都で引き起こされた未解決事件である『グラビアキャンディーばら撒き事件』という卑劣な行為によって、思春期の子供たちの一部の性癖が歪んだ結果であると分析される事になる……………
何がどう効いたのかわからないけれど、満足してくれたなら良かった。
特に、俺と委員長への被害が最小限だったのが良し。
「……さて、食事の続きをしようか。このパイ包み焼きっていうの、確かに美味しいな!」
「でしょ!?自信作なの!できればもっとコスト落として、数量限定じゃないメニューにしたいんだけどなー……」
「いやぁ、これはこれで良いんじゃない?制限があるからこその食べられた時の喜びってのもありそうだし」
晴明さんとのあれこれから現実逃避するために、さっと話題を変えた俺。
そしてそれを感じ取ったのか、努めて明るく話に乗ってくれる委員長。
やっぱりこの娘はええ子や……。
リピーターになろ……。
しかし、俺達はまだ、最凶の陰陽師の本質を理解していなかった。
あのおっさんは、自分がいない所で妻が他の男とプールで泳いでいたという情報を得ただけで、ブラックホールを生み出せる程の激重感情を持つ怪物なんだ。
そんなおっさんに、あんな提案をしたらどうなるか……。
その異常事態に最初に気が付いたのは、俺の膝の上で稲荷寿司を分解しながらモグモグ食べていたリエラだった。
「大試様 大試様」
「どうした?食べさせてやろうか?」
「いえ 蝶は 自分で 食べます」
じゃあ何だろうか?
そう問いかけようとした俺に、リエラが言う。
「大試様 痛いですか」
「……うん?いや、別に今は痛くないけど、なんで?」
「大試様 呪い 受けてます」
「は?」
「さっきの ぱいつつみ 食べた時 呪い つきました」
「……はぁ……?」
「えっと、リエラちゃん、それってどういう……?」
イマイチ状況が理解できない俺と、自分の店が提供した料理で呪いがどうこうと言われてしまってかなり焦っている委員長。
何かの間違いであってほしいと思う俺だけれど、現実は非情である。
「んお?大試よ、本当に呪いに罹っとるぞ?」
「大試様!『サンタクロースみたいにプレゼントを配りまくらないとTSする』という複雑な呪いが付与されているみたいです!」
大精霊と、最高位妖精のタッグが炸裂する。
魔神まで賛同しているのだから、これは確実だろう。
これ以上ない呪い演出だ。
「って、ちょっと待て。サンタクロース?」
「ハイです!『サンタクロースみたいにプレゼントを配りまくらないとTSする』呪いです!」
「えぇ……?」
何だそのふざけた呪いは?
んなもんあるか!と無視してしまいたいけれど、残念ながら呪いをかけてくる存在に心当たりあるんだよなぁ……。
「委員長……」
「うん……」
「呪いの専門家、さっきまでここに居たもんな……」
「うん……」
「すごいマイナスな雰囲気出したのに、すっきりした顔で帰って行ったよな……」
「うん……」
委員長がとても申し訳なさそうな顔になっていく。
でも委員長、これは委員長悪くないと思うぞ?
仮に委員長が悪いとしても、今までのプラス分を消すほどのマイナスなんてある訳がない。
強いて言うなら、あんな得体のしれない、生物かどうかすらわからない存在を料理場に入れるなって所くらいだろうか?
いや、でも、あのおっさん料理は美味かったしな……。
やっぱり委員長は悪くないわ。
悪いのは、あのゲテモノ。
とはいえ、サンタクロースみたいに……か……。
「うーん……」
「あの、犀果君ごめんね……?何とかして、その呪い解いてみるから……」
「いや、別にいいよこのままで」
「え!?」
俺の反応に驚く委員長。
その様子すら、大正ロマン清楚美少女感を感じさせるのがすごい。
素晴らしい。
おっと、思考が脱線する所だった。
「別にその呪いが無くても、プレゼントは配ろうと思ってたからさ。サンタクロースみたいに、っていうのがどの程度かはわからないけれど、今回色々用意してたら、最終的に2000人くらいに配る事になっちゃったから、そんだけやれば流石に呪いの条件もクリアできそうだなって。最悪の場合、聖羅に解呪してもらうし」
「えーと……犀果君、なんでそんなに大量のプレゼントを配ることになったの?」
「え?いや、クリスマスといえば、関係各所の人々にプレゼント配るもんだろ?開拓村でも、皆に配ってたからなー……」
「すごいね……。私、家族以外に渡したことなんて無いんだけど……」
そうなんだろうか?
開拓村では、割とプレゼント交換してたけどな……。
まあ、大人たちは、酒とツマミばかりトレードしていたけれども。
俺にまで酒渡そうとしてたしなあの人たち……。
「あ、そうだ!丁度いいから、委員長には今渡しておくか!」
話していて思い出したので、俺は、収納カバンから委員長用のプレゼントを取り出した。
「わっ……えっと、私も貰っていいの?」
「もちろん、委員長用に用意したもんだし」
「ごめん!私、お返しのプレゼントなんて用意してなくて……」
「いやいや、その格好だけでおつりがくるくらい喜んでるから、気にしないでもらってほしい」
「えぇ……?そんなにこの服装気に入ってくれたの……?嬉しいけれど、複雑な……。じゃあ、ありがたく貰っちゃうね!開けてみても良い?」
「どうぞどうぞ」
俺が手渡したプレゼントの包みを奇麗に開き、包まれていた小箱から中身を大切そうに取り出す委員長。
「……これって、腕時計?」
「そう、腕時計。いわば、委員長モデルの一点物」
「一点物!?」
「いやぁ、作るの大変だったけど、その甲斐あっていい物が出来たと自負している!」
「犀果君が作ったの!?」
リンゼの親父さんが腕時計の作り方を見せてくれると何度もうるさ……言ってくれていたので、お言葉に甘えて作り方を学んだんだ。
そして、あまり難しい機構は無理だけれど、シンプルな物であれば作れるようになった俺。
なので、機能自体はありきたりだけれど、デザインが渡す相手に合わせた物になるよう作ってみた。
委員長モデルは、薄い桜色の艶消しメタリックボディに、飾り気を敢えて抑えることで上品さを漂わせるアナログタイプのオーソドックスなデザインにしてみた。
日付や曜日も表示されるようになっているので、これから自分で商売をやっていきたいと言っている委員長の役にも立ってくれるんじゃないだろうか?
「更に言うと、この腕時計の素材って、オリハルコンなんだよ」
「オリハルコン!?」
「半永久的に壊れない腕時計を目指しました」
「半永久的にって……」
「キャッチコピーをつけるなら、『永遠に変わらない貴方への信愛』とか?」
「永遠に変わらない……それって……」
よっぽど喜んでくれたのか、委員長は恐る恐る腕時計をつけてくれた。
どの付け方が良いかを試し、ある程度決まったら、とても嬉しそうに時計を撫で始めた。
「気に入ってもらえた?」
「…………」
「あれ?おーい?」
「…………」
ボーっとしちゃってるな……?
「大試よ。ワシらには無いのかのう?」
「ありますよ?でも、ソフィアさんたちには、夜寝てる間に枕元に置く予定なので、待ってくださいね」
「良かろう!ワシの腕時計も、ちゃんとオリハルコン製なんじゃろうな!?」
「オリハルコンとダイヤモンドですね」
「ほう!?ならば良し!」
暴食を一端休み、そんな事を聞いてきたソフィアさんも、とりあえず納得してくれたようだ。
「大試様!大試様!私もプレゼントは頂けますか!?いい子にしてました!」
「…………うん、用意しておいたぞ」
「やったあああ!これからもいっぱいお仕事しますね!」
リジェネが良い子だったかどうかは、議論の余地があるけれど、まあプレゼントは渡すさ。
「大試様 大試様 蝶も プレゼント 欲しい です」
「リエラにもちゃんと腕時計作っておいたぞ、突貫作業だったけども」
「腕時計 嬉しい です でも ゲームの世界で あの時 みたいに 痛い事してほしい です」
「…………まあ、その内な……」
ニコニコしながらDVを望む幼女に対してどう答えればいいのかを悩む俺を他所に、俺が贈った腕時計にご満悦な様子の委員長。
彼女がここまで喜んでくれるとは思っていなかったので、こっちとしても喜ばしい。
「犀果君……!えっと、大切にするから!ずっと!」
「ああ!万が一壊れたら、俺が直すから教えてくれ!」
「うん!」
そう言いながら、俺の手をギュッと握ってくる委員長。
まさか握手を求める程に喜んでくれているなんて……。
職人冥利に尽きるな!
リンゼの親父さんが俺に腕時計を強く勧めてきた気持ちが今ならわかるわ!
輝く笑顔を見せる美少女に癒されながら、俺はサンタクロース計画を頭の中で練るのだった。
感想、評価よろしくお願いします。




