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「大試様 好き 好き」
「…………」
「のう、大試……。暫くワシに構ってくれんかったと思ったら、随分変なもんを誑かして来たのう……?小さい女型の魔神とは……。どうやってそこまでデレデレにしたんじゃ?」
「…………世界が危なかったので、殴って、背中の羽を千切って、傷跡から手を刺しこんで、体内をぐっちゃぐちゃにして殺したら、懐かれました」
「お……おう……」
何故だろう?
ソフィアさんが、俺から目を逸らした気がする。
こっち見てくださいよ。
時間が経ち、元の幼女サイズまで戻った魔神モンシロチョウちゃんだけど、あのまま人間的な尺度をあまり持ってない最高位妖精たちに任せておくのも怖かったため、現実世界にログアウトさせたんだ。
そして、あの全方位攻撃みたいに、ヤバイ事を繰り返されても困るため、自分が攻撃されたり、俺の家や大切な人々に危害を加えようとするような存在相手以外には、ああいう痛みを与えることをしてはいけないぞっとしっかり言い聞かせておいた。
「ハイです 蝶は 大試様のいう事 全部聞きます 大試様がしてくれた 痛いの 好き なので 大好き なので」
「…………」
と、一応の納得もしてくれたらしいので、まあ大丈夫だろう……。
ただ、流石に小さい女の子に四六時中べたべたされるのも困るので、もっと時間を制限したいと言ってみたら、絶望したような顔になってしまったので、
「じゃあ……あの手のひらサイズの状態で、尚且つ俺の身内以外誰もいないなら、やってもいいぞ」
と、罪悪感で譲歩してしまったため、今現在手の平サイズの幼女に頬っぺたスリスリされ続けているというわけだ。
あのモンシロちゃんとのバトルの後、リジェネをしっかり叱った俺。
アク禁が解除されてやってきたリスティ様にもこってり叱られていたので、流石に今回みたいなヤバイやらかしは控えるようになると思いたいが、まあ、無理だろうなぁ……。
「そういえばさ、モンシロちゃん」
「ハイです 大試様」
「名前何か考えようか。いつまでも邪神モンシロチョウじゃちょっとなぁ」
「ハイです 蝶は 大試様がつけてくれるなら なんでも 良いです」
目をキラキラさせながらそう言われちゃうと、こっちとしても嬉しくなっちゃうなぁ……。
その根底に、DVを望まれているのがちょっと困るが……。
「うーん……モンシロチョウ……モンシロチョウって学名なんだったかなぁ……?えーと……ピエリスラパエか……。じゃあ、リエラにしよう」
「ハイです 大試様 好き 好き 蝶は リエラ です 好き」
「う……うん……」
隙あらば好きと言ってくる手のひらサイズ幼女。
流石にここまで好意を向けられると、照れるなぁ……。
「うわぁ……大試がロリコンになってしまったんじゃが……」
「何言ってんですか……」
「これはもう、ワシの大人の魅力で矯正してやらんといかんのう!」
「いや、俺は普通にソフィアさんの魅力がガシガシクリティカルヒットするんで、大丈夫ですよ」
「そ……そうじゃな……そうじゃろうな……」
「何自分で言い出して赤くなってるんですか……」
モジモジする元エルフの大妖精様。
アンタが美人で魅力的な事なんて、とっくの昔にわかってるんだよなぁ!
俺がそんなふうにソフィアさんを揶揄い、反撃にゲシゲシとパンチされていると。
ピンポーン
と、玄関のチャイムが鳴る音がした。
この家のチャイムが鳴る機会は、実の所かなり少ない。
物凄く辺鄙な場所にあるから、一般人はそうそう近寄らないんだ。
宗教の勧誘も押し売りも、ここまで来るなら逆に褒めてやりたい所だわ。
来るとしたら、ネット通販で勝った物を届けにくる配達員とか、郵便のおっちゃんくらいで……。
しかし、郵便だったらチャイムを鳴らさずそのままポストに居れる事が多いし、ネット通販の配達だとしたら、再配達になるのも悪いので、その時間に確実に誰かいるように、自己申告で事前に申請しておくようにこの家の住人には言ってある。
そして、今日は配達がある予定ではない。
じゃあ、なんだろうなぁ?
偶々今は、うちにあまり住人がいないんだよなぁ。
AIメイドたちは、地下室のカプセルの整備とか、デコトラで買い出しとか、イチゴ農場の視察とかで対応できないし、猫耳メイドは、居間で煎餅食べながらテレビ見てるので、恐らくほっとけば居留守を使うだろう。
ソラウは、白川郷リゾートのレストランにヘルプで入っているので帰ってこない予定。
聖羅たちも、今日はそれぞれ用事があるので、夜にならないと帰ってこない。
あとは……画伯くらいか?
幽霊が出て行ったら、ゴーストのバスターとか呼ばれてしまうかもしれないから問題外だ。
しゃーない、俺が行くか……。
「ソフィアさん、玄関行きますね」
「ならワシもついていくぞ」
「蝶も 行きます」
「そう?じゃあ皆で行きますか」
そうしてササッと玄関へと向かい、扉を開けた。
誰かが配達予定の報告を忘れてたんじゃないか、程度に考えていた俺の目の前に、バリバリのキャリアウーマンって見た目の、スカートタイプの女性用スーツをバリッと着込んだできる女感がすごい女性が立っていた。
うん、見覚えは無い。
そして、まず間違いなく配達の人でもない。
保険の勧誘かな?
宗教の勧誘かな?
壺?それとも絵画?
「えーと、どちら様でしょう?」
俺は、恐る恐る聞いてみた。
こんな所まで来る全く見覚えのない女性だ。
正直、割とビビっているけれど、聞かないわけにも行かないし……。
まあ、その直後に、
「ごっつぁんです!」
って返事が帰って来て、猶更ビビったんだけども。
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