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剣と魔法の世界に行きたいって言ったよな?剣の魔法じゃなくてさ?  作者: 六轟


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613:

「流石にこれはどうなんですか?国際問題では?」

「自分の目に人を入れようとするお姫様を止めるために仕方なくしているだけだから、これはただの医療行為だ」

「そうですか。ならば仕方がないですね。オシャレな物を選んでもらいましたし、我慢することにします」

「できれば、目に人を入れようとするのを我慢してほしかったんだけどな……」


 ルイーゼ本人も気が付いていなかったみたいだけど、どうやらルイーゼが目に誰かを入れようとする際、自分の右目に入れようとする傾向があるので、右目に強制的に眼帯を付けた。

 まあ、ちゃんと見えるようになっている特別製の魔道具なので、不都合はあんまり無いはず。

 デザインもサファイアのように青く透明感のあるバラみたいになっているから、オシャレでつけていると言い張れるだろう。

 まさかこの美少女が、気に入った人間を目に突入させたくなる奇病に罹っているとは思われんだろうし……。


「ご主人様からのプレゼント……嬉しいです……!」


 最初にメイド服を着せられてから、既に1週間くらいは経っているはずなのに、未だに正気に戻らないベティさん(21歳)。

 本格的にカウンセリングが必要な気がしてきた。

 追い詰められた先で少し優しくされて依存するとか、絶対何か病名あるだろ……。

 ルイーゼだけにプレゼント(という名の拘束具)を渡すのもなんなので、ベティさんにも何か欲しい物が無いか聞いたら、首輪という返答があったため、チョーカーをプレゼントした。


「私……この首輪でご主人様から離れられなくして頂けたんですね……」

「いや、チョーカーだから。オシャレアイテムだから」

「首に巻く輪であれば首輪ですから」

「なんでそこは頑ななんだ……?」


 一応癒しの効果がある魔道具らしいんだけど、あんまり効いていなさそうだな……。


「そろそろ本題を初めてもいいのです?」

「すまんピリカ、頼む」

「了解なのです。では、『ドキ!?会場中の視線を独り占めしちゃうゾ大作戦!』についての検討会を開始したいと思うのです」


 そう、俺達は今、即売会でどうやって1000冊も本を売るかについての相談をしているんだ。

 しかも、本の内容は、特に何も手を出していないクソオブクソな状態。

 誰が買うんだこんなの?と素で言ってしまいそうになる出来のままである。

 更に言うと、エロで釣るのは禁止としている。

 確かに、一番簡単に客を増やせるのは、際どいコスプレをしたベティさんに売り子をさせる事なんだろうけれど、俺はエロだけが目的のコスプレには、断固として反対したい。

 体を売るような行為自体も認める気はないけれど、それ以上にコスプレに対するこだわりみたいなもんというか……。

 もうすこしキャラ愛みたいなのが欲しいよねっていうね。

 ただただエロい格好しているだけなら、それはただの露出行為だ。

 更に言うと、その露出行為を喜んでローアングルから写真を撮りまくってる奴らも会場から出禁喰らわせるべきだと俺は思っている。

 恐らく本人たちにそれを言えば、戦争が始まるだろうが、その際は受けて立つ!


 一応補足しておくと、エロい格好をしている美女が嫌いな訳では無いです。

 大好きですが、そのコスプレはコスプレ会場でするべきものではないと考えているだけです。

 コスプレは、魂でやるもんなんだよ!!!!


「大試さんが何故か燃えていますね。これは、何かすごい計画を考えている気がします」

「ご主人様の燃えてる表情好きです……」

「お二人は、まだまだお兄ちゃんの事をよくわかっていないのです。この表情は、かなり下らないことを考えている時のものなのです」

「下らないこと?それはそれで興味がそそられますね」

「あの……下着の柄が気になるのでしたら、お見せしましょうか……?」

「ベティさん、そのメイド服似合ってますよ」

「ありがとうございます!なら一生脱ぎません!」

「いや、ちゃんとこまめに着替えてください……」


 こいつらと一緒にいると、なかなか話が進まねぇな……。


「表紙に関しては、これで完成とするのです」

「なんということでしょう、私のラブリィエンジェル本が、腐臭と血の臭いがしそうな本に……」

「表紙詐欺も良いとこだけど、興味は持たれると思うんだ」

「確かにそうかもしれませんが……。いえ、考え方を変えましょう。こんな表紙に引っ掛かって買いに来たお客さんも虜にしてしまえば良いのです」

「その意気だルイーゼ」


 絶対無理だと思うけど、意気だけは買っておく。


「この表紙に付随して、サークル名『ブラザープリンセス』の販売コーナーに、ハロウィンというテーマを設定しようという意見がお兄ちゃんから出ているのです」

「ここから更におどろおどろしい物にしていくのですか?」

「やるなら徹底的にだ!俺達の手で会場を恐怖のどん底に叩きこむぞ!」

「いえ、私は弟の可愛ささえ伝えられればそれで良いのですが?」

「あのなルイーゼ、本で何かを伝えたいなら、まず読んで貰わないといけないわけだ。どれだけ素晴らしい内容だとしても、手に取る事すらしてもらえないなら、相手に伝わる訳がないだろ?だから、ゴチャゴチャ言ってないでやるぞ!もう画伯の画集も完成してるし!」

「私の本……自信作なのですがね……」


 どうしたらそんな自信が出てくるのかなぁ……?


「あの、ご主人様……。それで、具体的には、私たちに何をしてほしいのでしょうか?」


 ベティさんが、おずおずとそう尋ねてくる。

 いつでも服を脱げるように準備している気がするのは何故だろう?

 怖い。


「エッチなコスプレは、俺の拘りによって禁止にしますが、他のコスプレであれば、問題ないと思うんです」

「成程、大試さんが、弟のコスプレをすると?」

「しません」

「そうですか……」


 なんぜそんな悲しい顔するんだ……?


「スプラッタなコスプレをするぞ!ぐずぐずのゾンビとか、刺殺された死体とか、なんかそんなん!」

「即売会の規約に違反したりしないのでしょうか?」

「そこは大丈夫だ。何せ、ぶっちゃけると俺がルールだから」

「はいなのです」

「これが世界の闇ですか」


 別に悪い事しようって言うんじゃない。

 ちょっと皆でガチのハロウィンしようぜってだけだし。


「待ってろよオタク共!一生忘れられない即売会にしてやるよ!」






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