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剣と魔法の世界に行きたいって言ったよな?剣の魔法じゃなくてさ?  作者: 六轟


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606/609

606:

 アンナさんとゼルエルは、共にとてもスカートの後ろ部分が長いウエディングドレスを着ている。

 そのため、その裾がひっかからないように補助する役割をしているのが、うちのAIメイド3人だ。

 3人ともデザインは同じにしたようで、アイに関しては意外な、ピリカとイチゴに関しては割と予想通りな少女っぽいデザインのウエディングドレスだった。


 3人は、静々といった雰囲気でサポートに徹している。

 仕事できる系ガールっぽい。


 アンナさんとゼルエルが進んでいくと、特に誰が何かを言ったわけでもないんだけれど、拍手が起き始めた。

 こういうシーンって、拍手が正解なんだろうか?

 俺の中にある何となくのイメージで計画した結婚式だから、正直よくわかってないんだよなぁ……。

 しかも、教会でやるタイプなんて、本当にフィクションの世界でサラッと見た事しかないもん。

 っというわけで、皆に倣って俺も拍手しておく。


 フラワーガールをやってくれた4人が横に捌け、最前列のそれぞれの席に座る。

 堂々としたその仕事ぶりに、俺としては今日一番の拍手を上げたい。


 そして、アンナさんとゼルエルがステージの上へと登った。

 それまで補助していたアイたちは、邪魔にならないようにフラワーガールたちの横に用意された自分たちの席へと座る。

 丁度のタイミングで結婚行進曲が止み、荘厳な大聖堂の中を静寂が支配する。

 うん、この辺りはすごくいい結婚式っぽい。

 自画自賛だが、何となくで考えたにしては良い感じじゃないだろうか?


 ピンチヒッターで突然のオファーを受けてくれたオッサン、教皇が語り始める。


「聖女アンナ」


 その言葉に、会場中で息を呑む気配がする。

 アンナさんは、偽聖女だとかなんとか騒がれたこともある女性だし、何より日本の教会が聖女だと認めているのは、現在聖羅のみ。

 なのに、その教会のトップである教皇が、アンナさんを聖女と呼んだんだから、まあ何が起きているのか多少なりとも理解できている人たちからしたらびっくりだろう。

 っていうか、アンナさんもゼルエルもびっくりしている。

 まあ、ビックリするだろうなぁって話し合いながら、俺と教皇のオッサンでニヤニヤしながら考えたセリフだしね。

 教皇から聞いた話によると、あのおっさん的には、もちろん聖羅を聖女として認めているし、アンナさんをその上とか同列に考えるつもりは無いみたいだけれど、別にアンナさんを聖女と認めないという訳でも無いらしい。

 俺が「アンナさんを聖女だって認めてやってくれない?」って頼めば「貴方がそう仰るのであれば構いませんよ」って軽く返事してくれた程度には。


「貴方は、ここにいる天使ゼルエルを、健やかなる時も、病める時も、喜びの時も、悲しみの時も、

 富める時も、貧しい時も、死せる時も、再び生まれ出る時も、これを愛し、共に生きることを誓いますか?」


 今度は、アンナさんとゼルエルがすごく驚いていた。

 堕天し、神を騙っていたゼルエルを天使と表現した教皇のその行動に、2人は一瞬固まってしまっていた。

 まあ、ゼルエルに関するあれこれを俺以外が知っているとはあんまり思ってなかったんだろうからそうだろう。

 つっても、ゼルエルが堕天使だとか、その辺りの細かい事は別に教えてないんだけどな。

「天使って表現してあげて」って頼んでおいただけだし。

 教皇が「貴方がそう仰るのであれば構いませんよ」って軽く返事してくる程度の問題。


 それでも、すぐに何とか自分を取り戻して、アンナさんが口を開く。


「例え、何千何万回生まれ変わったとしても、ゼルエルを愛し続けると誓います」


 あれ?

 事前に教えておいた台本だと、「誓います」って答えてくれればいいって書いといたんだけど……?

 ビックリさせる台詞を仕込んじゃったせいで、アドリブが入って来たか。

 ノリノリだな。

 良いぞ!

 好きにやってくれ!


「天使ゼルエル。貴方は、ここにいる聖女アンナを、健やかなる時も、病める時も、喜びの時も、悲しみの時も、

 富める時も、貧しい時も、死せる時も、再び生まれ出る時も、これを愛し、共に生きることを誓いますか?」

「……ああ、例えこの身が朽ち果て、人の子らの目に移らない塵芥と成り果てたとしても、アンナへの愛だけは無くさないと誓う」


 こっちもアドリブ入れて来たか!

 これ、しっかり撮影しているから、あとから皆でこの時の映像を上映会でもしたら、本人たち滅茶苦茶恥ずかしいかもなぁ。

 ゼルエル達の子供が大きくなったら、絶対見せてやろっと。


「では、双方の誓いを神へと捧げるために、口づけを」


 長かったなぁ……。

 なんでこんなクソめんどくさいイベントを企画したかっつったら、これをさせるためだ!

 想像妊娠してるゼルエルを、ちゃんとした妊娠にするためのキッス!

 それさえ終われば、後は……いや、色々やることまだあるな……。

 あれとか、あれとか……。


 俺が、これからやるべき内容を頭の中で振り返っていると、アンナさんとゼルエルが、互いのヴェールを手で除ける。


「ゼルエル、こんな私だけど、これからもよろしくね?」

「アンナ、自分の事を『こんな』なんて言わないでくれ。我にとって、アンナこそが太陽であり希望。これから死ぬまで、それは変わらないのだから」

「ゼルエル……」

「アンナ……」


 甘ったるい雰囲気になったと思ったら、もうぶっちゅーと、舌を入れたキスを開始した2人。

 ……2分くらいしてたな。

 なっげぇ……。

 フラワーガールたちの目は、近くに居たアイたちが塞いでいたので安心だ。


 何はともあれ、これでちゃんとゼルエルは妊娠したのかな?

 流石にこれ以上百合カップルの孕ませキッスを補助してやる気はないぞ?

 疲れたし……。


「ここに誓いは成りました。見届け人の皆様、今一度盛大な拍手をもって祝福をお願いします」


 教皇のオッサンが、目の前であれだけの激しい百合キッスを見せられながらも、柔らかい笑顔を張り付けたままそう促すと、会場からは割れんばかりの拍手が起きた。

 でもな……驚くのはこれからなんだぜ?

 これからこの会場に、特別ゲストを呼ぶんだからな……。


 俺は、リスティと遊ぶ剣を起動した。

 すると、淡い光が聖堂内に立ち上り、ステージの上へと集まり始めた。

 それはやがて、少女の姿へとなる。

 現れたのは、ウエディングドレスを纏った絶世の美女……っていうか、違う次元に存在している女神なんだけども……。


 うん、リスティ様です。

 なんか、自分もウエディングドレス着てこの式に参加してみたかったらしいので、こっそり参列してみますか?

 って聞いたんだけど、「いや……折角だし、オレも女神っぽく神聖な感じを演出した方が良いんじゃねぇかな?」とか言い出したので、女神降臨っぽくしてみました。


「……え?」

「……な!?この神気、まさか貴方様は!?」


 会場中が困惑し、固まる中。

 いち早く復活したアンナさんとゼルエル。

 と言っても、アンナさんはよくわかっていないようだが。

 しかし、ゼルエルの方は、それが誰なのか理解できたらしい。

 今まで実際に会ったことが無かったとしても、流石に元天使だけあってそれくらいはわかるのかな?


『我が名はリスティ』


 そのどこまでも透き通っていくようで、それでいてとても圧を感じる不思議な声で、リスティ様は自己紹介をした。

 今までこの世界でリスティ様の顔を知っているのなんて、多分俺とリンゼくらいだっただろうから、会場中の方々も困惑している。

 でも、演出と台詞から、とんでもないことが目の前で起こっていると段々理解し始めた観客たち。

 ざわざわがどんどん強くなっていく。


『今日は、ゼルエル。貴方を祝福するために降臨いたしました』

「リスティ様!なんと……わたくし等の為に……!?何と慈悲深い!」

『貴方がこれから行う世界への貢献は、きっと尊いものとなるでしょう。その長い旅路を共に行く連れ合いとの絆を大切にしなさい』

「は!この命に代えても!」

『その言葉、しっかりと覚えておくぞ。では、また神の座よりこの世界を見守ることとしよう。さらばだ』

「はい!はい……!」


 うん、リスティ様、大分台詞の練習してたから、キャラ造りばっちりだったな!

 女神っぽかった!

 消える瞬間、こっちに向かって視線を飛ばしてきたので、こっそりサムズアップしておいたら、めっちゃ喜んでたな。


 ただ、会場中がお騒ぎだ。

 だって、女神が降臨したんだもん。

 思ったより皆びっくりしている。

 この世界、神も精霊もいるけれど、実際に出会える人間なんてそうそういないようで、様々な反応をしながらも、総じてテンションが振り切れそうな感じだ。


 まあ、女神事情に詳しい元女神様は、ダッシュで管理者側の席で待機していた俺の方にやって来て、


「どういうことよ!?なんであの女神がこの世界に降臨してんの!?ってか、アイツもウエディングドレス着てなかった!?」

「あ、うん。本人の希望でさ。女神様っぽく召喚してくれってオーダーも貰っちゃったしね」

「希望でさ、じゃないわよ!気軽に世界を運営する女神を召喚してんじゃないわよ!」


 それから少し俺を詰めていたリンゼだったけれど、流石に疲れたらしくてまた自分の席へと戻って行った。


 騒ぎが治まるまでの間に、教皇様は舞台袖から退場。

 疲れただろうから、用意した客間で休んでもらう。

 さて、次のイベントだ。

 これに関しては、俺も当日にみんなと同じように見たかったため、事前にすり合わせを全くしてないんだ。

 それでも、最近Webで人気らしいから、心配しなくていいだろう。

 聖騎士のお姉さんたちによる、音楽演奏とダンスだ。

 ラブソングのな!


 俺は、マイクを手に取り、次の催しへの移行を宣言した。


「女神様ご自身によって祝福された2人へ、聖騎士団の皆さんから一曲、プレゼントして頂きます。それでは、皆さんどうぞ!」


 俺の合図と同時に、修道女の服装に、顔をヴェールで隠した女性たちが、スムーズにステージ横の階段のようになっている段に並んでいく。

 そして、前にリーダーらしき人が出てきて、挨拶を始めた。


「アンナさん、ゼルエルさん。ご結婚、おめでとうございます。そんな貴方たちに、我々からお祝いの歌を贈ります。では……」


 リーダーさんらしき人振り返り、指揮棒を振り始めると、楽器を持っていた方々や、パイプオルガンに腰かけた方が演奏を始めた。


 何故か、局長がデスメタルなんだが?


「ヴェールを取れ!!!」


 前奏っぽいのが終わりそうなタイミングでリーダーさんが叫ぶ。

 そして、その神秘のヴェールの裏から出てきた彼女たちの顔には……。


 悪魔のメイクが施されていた。


「これが私たちのKISSです!!!」


 日本語の話なのに、イマイチ分からんな……。





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デスメタル聖歌隊とは斬新すぎん? 「天使にラブソングを」のデスメタル風でも良かったのよ?
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