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剣と魔法の世界に行きたいって言ったよな?剣の魔法じゃなくてさ?  作者: 六轟


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605/610

605:

 本日、とうとうアンナさんとゼルエルの結婚式だ。

 いやぁ……大変だった……。

 ぶっちゃけ、保育所作るよりこっちの準備の方が大変だったんじゃないかってくらい大変だった。

 まあ、この結婚式の準備において、一番大変だったのは、どう考えてもこの人なんだけど……。


「ふひゅぅ……ふひゅぅ……うへへへ……滾る……!滾るよぉ……!」


 目の下に濃い隈を作り、ドラゴンじゃ無くてパンダみたいになってしまっているクレーンさんである。


「大丈夫ですか……?平衡感覚も狂ってるっぽいですけど……」

「大丈夫!絶好調!あぁ……皆が私の作ったウエディングドレス着てる……はぁ……はぁ……!」


 ドクターストップをかけようか真剣に迷うくらいには、疲労困憊といった状態の彼女だけれど、まあドラゴンだし何とかなるだろ……。

 今この人の邪魔をしたら、本気で暴れそうで怖いというのもある。

 そっとしておこう。


「大試、どう?」

「天使かな?」

「ありがとう」


 聖羅がウエディングドレスを見せに来た。

 うん、プリンセスラインのオーソドックスなデザインだけれど、そもそも本人の美しさがカンストしているから、奇をてらわないこのオーソドックスさが美しさを際立たせる。

 カンストの上とかどうなんの?


「本当に全員ウエディングドレスなのね……。こんなイベント、ゲームにだって無かったわよ……」

「少し恥ずかしいですが、やっぱり嬉しいです!」

「私は、猫の刺繍を入れてほしいって事しか注文してなかったけれど、ちゃんと皆デザインが違うのね?」

「あのぉ……私のウエディングドレス、皆のよりスカートがかなり短くない……?」

「私のものは、正面から見れば普通ですけれど、背中の方はお尻の直前まで開けてますわ……」


 その後ろから、婚約者の皆さんが着いてきた。

 みんなそれぞれ、自らの良さを更に引き立てるオリジナルデザインの一点物ウエディングドレスを着ているので、なんだかもう俺の体の中の悪い部分が全部浄化されているような気がする。

 具体的に言うと、エロとかそういう心が。


「皆が奇麗すぎて俺の目が潰れそう……」

「大丈夫、潰れたら治してあげる。だから、しっかり見て」

「助かる」

「何言ってんのよアンタたち……。まあ、いいけど……」

「ですが、しっかり見て頂きたいのはその通りです!」

「そうね。折角だもの!大試君、私の巫女服とウエディングドレス姿だったらどっちがいい?」

「え?どっちも最高ですけど?強いて言うなら、普段見たいのは巫女服で、ウエディングドレスはレアイベント時専用だと嬉しいですね」

「そ……そう……?」

「大試君、私はどうかな……?」

「清らかな衣装のはずなのにセクシィさを敢えて大胆に入れて、恥じらう姿をスパイスにしている所がすばらしいな」

「あぅ……しっかり評価されてる……」

「私は恥ずかしいので、評価はいりませんわ」

「背中が大胆だな。何時間でも見ていられる」

「だから評価はいりませんわ!」


 有栖とリンゼもプリンセスラインだ。

 会長は、スレンダーライン。

 理衣は、ミニスカート……ってそんなウエディングドレスもあるのか……。

 絢萌は、マーメイドラインってやつかな?

 ここで皆と話しているのも楽しいが……非常に楽しいが!

 残念ながら、今日俺たちはあくまで参加者の一人にすぎない。

 そして俺は、企画運営の一人でもあるので、ある程度このイベントが進行するまでは、長々と特定と誰かと話し続けるわけにも行かないんだ。

 ……あと10秒くらいはこの天国を体感していてもいいよな……?


「ボス、鼻の下伸ばしすぎニャ」


 その天国を荒らす猫耳がやって来た。


「ファムも似合ってるぞ。褐色の肌に白いドレスが生えるな。ファムは、身長も高いしスタイルも良いから、ドレスを着ると本当に奇麗になるよな」

「息をするように褒められたにゃ……まあ、ありがとうニャ」


 Aラインと呼ばれる様なすっきりしたデザインのウエディングドレスを着たファムは、珍しく照れながらお礼を言ってきた。

 ふふふ……偶には照れる可愛い所を見せるが良いぞ?


「わー!ファムが赤くなってる!」


 そして後ろからぴょこっと出てきたのは、セパレートタイプでお腹を出したデザインのウエディングドレスを着たエリザだ。


「そんな事ないニャ!変な事言わないで欲しいにゃ!」

「えー?でも、絶対照れてるよねー?」

「そうだな。ファムは、照れて可愛くなってるな」

「あーもーうっせーにゃ!」

「エリザも、結構特殊なデザインなのに厭らしさとか無くて似合ってるぞ」

「あ……うん!ありがと!」


 そのすぐ後ろには、一緒に来たのか、ルージュとリリアさんが。

 仲良しのエリザと3人でお揃いにしたらしく、細部が少し異なるだけで、同じデザインのドレス姿だった。

 リリアさんだけは、おへそをてで隠していてなんだかエッチだけど……。

 いやまてまて、俺の心は今浄化されてるから、卑猥な感情なんて入り込む余地は無い。

 落ち着け。


「リリア、手で隠すな。堂々としていろ」

「うぅ!ですがルージュ、これは結構恥ずかしいです……!」

「かもしれんが、恥ずかしがれば恥ずかしがるほど、恐らく大試は興奮するぞ」

「えぇ!?」


 バッと更に腕で自分を抱きしめるように隠す姿に、俺の中の何かが騒ぎかけたけれど、大丈夫。

 俺は今、浄化されてるから!!!!!!


 顔を真っ赤にしたリリアさんたちを席へと案内すると、後ろから声をかけられた。


「大試さん、私も来ました!」

「ん?お、美須々さん!」


 仕事が忙しいから、来れるかどうかわからないと言っていた美須々さんがいた。

 そのウエディングドレスは、クラシカルなデザインながら、未だに人気のあるタイプのデザインだな。

 心を盗まれた花嫁が着てたウエディングドレスドレスっぽいデザインって言えば伝わるだろうか?

 首まで生地で包まれていて、更に袖もある。

 体のラインが結構出るので、自信が無いと着るのを躊躇うやつだな。

 アイドルだったらこのくらい自信満々で着るべき!みたいな美須々さんの信念を感じる。


「間に合ってよかったです。さぁ、席はこちらです」

「ありがとうございます。えっと……手を……」

「ん?あ、成程。では、ご案内いたします」

「はい!お願いします!」


 お姫さまみたいに手を差し出されたので、ノリで王子様みたいにエスコートしちゃったけれど、セクハラで訴えられたりしないよな……?

 後から怖くなってきたぞ……?


 次に入って来たのは、既にどこかでこの後のガーデンパーティ用の食い物を盗んできたらしい2人と、ガーデンパーティ用の料理を作っていた張本人のはずの1人。

 口いっぱいに何かを頬張っているシオリとリコ。

 その2人に皿の上から何かを食わせ続けているソラウだ。


「むぐむぐ!むぐん!」

「もぐぐ」

「おやおや、お褒めに預かり光栄ですね」


 あの口の中いっぱいに色々詰めてる状態で、何を褒めたんだろうか?

 ちょっと気になる。


「シオリもリコも可愛いぞ。ただ、それ以上喰うのは、式が終わってからにしてくれな?」

「むぐっ!」

「もぐっ!」

「ソラウは、すごい上品な感じだな?そのドレス姿で料理の提供してたみたいだけど、動きにくかったりしないか?尻尾を出せるようにはなってるみたいだけどさ」

「いえいえ、何の問題もございませんよ。むしろメイド服よりも動かしやすいかもしれません」

「マジで……?」


 流石は、長年趣味で服を作って来たドラゴンの服職人クレーンさん。

 ウエディングドレスでそんな可動域を実現するとは……。


「じゃあ、アンナさんとゼルエルが出発するまでは、事前に話しておいた通り自由にしててくれ。その後、また手伝い頼む」

「畏まりました」


 3人を見送り、また次から次へとやってくる入場者たちをチャペル内へと案内する。

 参加人数が多そうだったので、急遽元からあった聖堂に増改築を施し、大聖堂レベルへと変貌を遂げていた。

 にも拘らず、どんどんこの広い聖堂が埋まっていく。

 口げんかしながら入って来たクロコとタケコとか、偶々バイト中の白の様子を見に来ていた時に声をかけたら参加したいということだったので急遽追加で誘った玉藻さんとか、ホテルのレストランに交代要員が来ているので休暇中のキオナさんとか、最初は嫌がっていたけれど、折角だし出ようぜと誘ってやっとやって来たマイカと、しばらくぶりに族長代理の座から休暇を与えられたアレクシアなどなど。

 いやぁ……すごい人数だなぁ……。


『犀果様、新郎新婦……いえ、新婦お二人の準備が整いました』

『そちらの準備が出来ていそうなら、そろそろ入場を開始したいのです』

『ますたぁ、イチゴのウエディングドレスもちゃんと見てね?』


 俺のスマホから、3人の声が聞こえる。

 どうやら、時は来たらしい。


 俺は、最奥に今日この日の為だけに作られた低いステージ横に控えている男性の元へと向かう。

 今日の為に、ダメもとでお願いしてみたら来てくれたんだよなぁ。

 これ、結構歴史的な事だと思うんだけど、あっさり来ちゃってよかったのかなぁ……?


「教皇様、そろそろ新婦に入場してもらうので、ステージまでお願いします」

「わかりました。では、参りましょう」


 うん、日本の教会のトップ、教皇様です。

 元々は、タヌキの爺さんのどっちかに頼もうと思ってた神父役だけれど、あの2人、好きな女がウエディングドレスを着ると聞いて喧嘩を始めたらしく、そのまま絶好状態になって面倒な事になってるらしいので、今回は出禁になっている。

 そのため、急遽電話でお願いしたら、二つ返事でOKしてくれたんだよなぁ……。

 外国の教会の総元締めみたいな立場にいたゼルエルの結婚を認めるのが日本の教会の教皇とは……。


 まあいいや。

 はい、ミュージックスタート!


「アイ、ピリカ、イチゴ、頼むぞ」

『畏まりました』

『わかりましたのです』

『いくよー♪』


 会場内に、結婚行進曲が流れ出す。

 安直だけど、とりあえず安パイだろうって言う選択。

 奇をてらう必要なんて無い。

 ベッタベタで良いんだこの辺りは。


 そして、大扉が開く。

 すると、フリッフリのウエディングドレスを着た4人の少女たちが花びらを撒きながら入って来た。

 先頭はアルテミス。

 白と明小、最後に薫子ちゃんだ。

 彼女たちをフラワーガールに抜擢した俺の手腕を褒めてやりたい。

 いやぁ……可愛くて華やかだなぁ……。


 その舞い散る花びらの上を歩いて、アンナさんとゼルエルが入場してきた。






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