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『……相談って言われても、俺だってわかんないけども……。そもそも、堕天使の身体機能どころか、人間の女性ですらよくわかってないし……』

『堕天使自体そこまで多いわけでもないから、我も正直わからんのだ……。天使のチューに女を妊娠させる力があるのは事実だが……』

『え!?そうなのか!?本当にチューで妊娠説もあるのか……』

『とはいっても、本来の機能としては、対象の女の腹に天使がチューをすることで成立する機能なんだがな。まあ、実際の人間は、そんな事をせずともポコポコ子を産むので、あまり役に立たない物ではあったが……。つまり、なんだ……。結論から言うと、アンナと我がチューを……具体的に言うとベロチューをしたからと言って、我が妊娠するとは思えないのだが……実際にアレは止まっているわけで……』

『生々しい描写はいらないぞ……』

『そうか?思春期の男は、こういうのが好きかと思ったが……。話を戻すと、我としてもかなり困っているのだ。妊娠しているのかどうかもわからぬし、妊娠していた場合、このまま成長させても大丈夫なのかどうかもな……。アンナに相談するのも……その……心の準備ができていないというか、妊娠が勘違いだった場合ガッカリさせてしまうであろうしな……。かといって、人の子の医者に見せる訳にもいかんし……』

『うーん……ってなると、どうしたもんか……』

『そこでだが、汝は、リスティ様と話ができるのであろう?』

『まあ、可能ではある』

『リスティ様であれば、我の状態も把握できていると思うのだ。世界神様ともなれば、その位は容易い……はずだ』

『はず、か……』

『汝と違い、会ったことも無いのでな……』

『はぁ……聞いてみるかぁ……。そういう重要でナイーブな事を聞かれるの、嫌がりそうなんだよなぁ……』

『それは、本当に申し訳ないとお伝えしてくれ……』



「って事があったんすわ」

「…………うーん…………そっかそっか…………いや…………うーん…………」

「うわぁ……。答え難そう……」

「まあな……」


 神の世界、リスティ様の家に来ている俺です。

 こんな事でお邪魔して良いんだろうか?

 っていうか、そもそも俺がそんな事柄を誰かに聞きたくないなぁと非常に憂鬱な気持ちで来ています。

 これがさ?

 本当に妊娠していたんだったら、あの百合カップルの事だし、めでたしめでたしで終わると思うよ?

 問題はさ、ただホルモンバランスの変化とかでアレが遅れているだけだった場合だ。

 それを、誰が、どう伝える?

 恐らく、俺です……。

 嫌だなぁ……。


「因みになんだがよ、ゼルエルのチューには、確かに自分や相手を妊娠させる効果はあるぞ?愛し合っている相手とのチュー限定だけどよ。伊達に神性もちじゃねぇよ」

「そうなんですか!?そんなロマンティックな力を持ってんのかあの堕天使!じゃあやっぱり妊娠してるんですね!」

「そこなんだよなぁ……」

「そこですかぁ……」


 つまり、NOT妊娠……って事なんすね……。


「想像妊娠ってやつでよ……。ゼルエルの強い願望で、妊娠していると体が思い込んでいる状態だな……。それでせい……アレも止まっちまってんだ……」

「えぇ……?じゃあ、アンタは妊娠してないらしいぞって伝えないといけないんですかね……?」

「…………………………………………まぁ、そうなんだがなぁ………………………………」


 俺は一体、神様の自宅で、神様と一緒に何を悩んでいるんだろうか?

 ちょっと泣きたくなってきた。


「因みに、ゼルエルにその事実を伝えた場合、あいつはどんな反応すると思います?」

「まあ、最初に一瞬固まった後、暫くは冷静に受け答えすると思うぞ?2分くらい経ってから、表情を変えずにボロボロ泣き出して、そのまま号泣を始め、大試が居た堪れない気持ちで微動だにしなくなるような事態になるぜ」

「世界を管理している女神様にそういわれちゃあ、もうどうしようもねぇなぁ……」


 何かないか?

 何とか妊娠していない事実を伝えつつ、事態を軟着陸させる方法は……!?


 …………待てよ?

 そもそもその発想が間違いなんじゃないか?

 妊娠していない事実を伝える必要があるのって、ゼルエルが妊娠してないからだよな?

 そうだそうだ……。

 そうだよ……。

 本当に妊娠させちまえばいいんだ……!

 くくく!

 あーはっはっはっはっは!

 関わった奴らが全員幸せになる方法があるなら、それに賭けるのが一番だよなぁ!?


「リスティ様、提案なんですけど、こういうのはどうですかね?」


 俺は、何となく後ろめたい気持ちを隠すために、他に聞いている存在なんて居る訳も無い神の世界であるにもかかわらず、コソコソとリスティ様の耳元で囁く。

 ……うわ、めっちゃいい匂いする……。


「……お、おお!?いいじゃねぇかそれ!その方針で行こうぜ!」

「ですよね!?リスティ様がそう言ってくれたなら間違いないですよね!?」

「いやいや!オレの優秀な使徒である大試の考えが秀逸なだけだろ!流石だなぁお前!」

「いやいや!リスティ様の太鼓判を貰ってるだけなんで!リスティ様の!」

「いやいや!大試の考えだろ!謙遜すんなって!」


 間が持たず、黙って見つめ合う2人。


「「後ろめたい……」」




 そして、現実世界へと戻ってきた俺です。

 ヴァルキュリアの応接室にあるテーブルの上に、適当に作った礼拝用の神殿(だと俺が思い込むことでその機能を果たす)に俺が祈ってから、現実世界では数秒も経っていないだろう。

 目を開けて目線を上げると、不安そうな黒天使がいた。


 あぁ、神様ごめんなさい……。

 俺はこれから、この女性に嘘をつきます……。

 理由は、妊娠していない事実を伝えるのが辛いからです……。

 でも、神様も同意したんだから同罪ですよね……?

 大丈夫ですよね……?


「今、リスティ様からご神託を賜って来た」

「そうか!で、リスティ様は何と?」

『ゼルエル、其方の腹には、確かに胎児がおる』

「誠ですか!?」


 誠じゃない……。


『しかし、其方のこれまでの所業、業が、その胎児に影響を及ぼしておる。魂が、入っておらぬのだ』

「な……!?そんな馬鹿な!では、この子は、何の罪も無いというのに、我のせいで生まれてくることすらできないのですか!?」

『安心せよ。其方の行ってきた罪滅ぼし、我もしっかり見ておった。それで全てが帳消しになったなどとは間違っても言えないが、赤子にその罪を問うのもおかしなこと。よって、解決策を提示しよう』

「おおお!誠ですか!?なんと慈悲深き言葉!お願いします!我のこの身であれば如何様にもお使いください!それで、この子が助かるのであれば!!」

『うむ。其方の子を救いたいのであれば、その何倍もの子を其方が救わねばならん。それが、其方への罰ともなり、同時に禊ともなるのだ』

「子を救えと……?ですが、どうしたら……」

『そこにいる我が眷属、大試の持ってきた話があろう?その提案に全力で協力するのだ。それが成った時、其方の愛するものと再度子を成したいと願いながらチューをすることで、その胎児にも魂が宿る事であろう』

「成程!つまり、このタイミングでこの話が来たのも貴方様の御意志であると!?」

『え?いや……うむ!』

「畏まりました!不詳このゼルエル、堕ちて穢れた身ではございますが、リスティ様の寛大なる御心に感謝をし、身命を賭して保育所とやらに協力いたしましょう!」

『お……おう……』


 素直に信じたなこの堕天使……。

 やばい、心が痛い……。


 とりあえず、ご神託モーフを終える。

 心を回復させたいんで、これ以上この話を引っ張りたくないな……。


「って事らしいんで、一緒に頑張って保育所作ろう!」

「良かろう!存分に我の力を使うと良い!」


 あいたたたた!

 俺のピュアハートが濁る!


「それにしても、やはりリスティ様は流石だな。ここまで全て計算しておられたとは……」

「……ソウダネ」


 してないけどな……。


「しかも、汝が神託を受けてきたということは、ただの伝聞であろうに、我の発言まで完全に予見して受け答えをしておられたとは……。やはり、本物の神は違うな……。我は、なんと恐れ多い事をしていたのか……」


 あ、言われてみればそうね。

 設定甘かったな……。


 心に色々なダメージを負いながら、今後の協力を取り付けた俺でした。






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