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剣と魔法の世界に行きたいって言ったよな?剣の魔法じゃなくてさ?  作者: 六轟


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577/607

577:

 :X810プロが公式でダンジョン配信ってマジ?

 :これってダンジョンの中?

 :壁だけ映ってんじゃん

 :ただの洞窟じゃねーの?

 :大試カッコいい

 :もう開始時間だよな?まだ?

 :アイドルがダンジョンとか危なすぎるだろふざけんな


 我がX810プロ初の試み。

 それが今日、今この瞬間始まる!


 配信画面に映っているのは、浅草ダンジョンの1階層に準備された立ち入り禁止区域だ。

 この立ち入り禁止区域は、今回の撮影の為だけにセッティングされた場所。

 何故ダンジョン内にそんなエリアを用意できるかといえば、その管理を俺たちが行っているからです。

 今現在、浅草ダンジョン管理協会の建物内は、売店のおばちゃん以外全員が量産型アイになっている。

 やりたい放題できるぜ!

 そもそもダンジョンの管理なんてやりたくないけどな!

 やっぱり王様に押し付けられちゃった……。

 というか、他の貴族とかに任せたら、利権がどうとかでもっと大変な事になりそうだし、民間に任せようにも、莫大な利益が絡む事柄でもあることから、じゃあどこにどうやって任せるんだよって話になるので、やっぱりしばらくは俺が責任もって何とかしてくれ!って言われちゃった。

 あのさぁ……。

 そんな事サラッと頼まれて、ハイそうですかって何とかできる奴そうそういないよ?

 王様とその周りの偉い人達さぁ、その辺りどう考えてんの?

 できてるやろがい!って言えばいいと思ってない?グレるぞ?


 何はともあれ、管理することになった以上、最大限俺達にとって有効的に利用するしかない。

 そして、俺の責任で管理運営するというのであれば、何が何でも治安は良くしないといけない。

 もちろん、魔物と戦う以上、自己責任ってものが重要なのは仕方ないんだけれど、それはそれとして、人間同士で争うような無為な行為は許さん。

 倫理観的にも、ダンジョンの運営的にも、あの自称迷惑系配信者たちみたいな存在を放置することは、マイナスしかない。


 浅草ダンジョン管理協会が、様々な不祥事で職員のほぼ全員が逮捕された事は、大ニュースとなって世間を驚かせた。

 だけれど、どんな良からぬことを行っていたかは多少発表されたけど、その逮捕された職員たちがどうなったかとか、その協力者たちがどうなったかとか、生首にされてたウンコがどうなったのかとか、ピーポー君ヘッドの男についてとか、その辺りは全く報道されていない。

 地下世界はもちろん、逮捕護送用のドローンとか、ガサ入れ用のおそーじ君等、公に出来ないことが多すぎて、国からの発表をしていないだけなんだけれど、それが逆に世間での熱狂に油を注ぐ結果となっている。

 特に、業界内でも嫌われ者だったウンコたちが配信中に返り討ちになったシーンは、謎の美少女を名乗る誰かが拡散したことで世間の知る所になっているので、『犯人は異世界人!』とか、『警察の特殊部隊だ!』とか色々騒がれているそうだ。

 実際にあの配信を見ていた奴らは、8割がた現在行方不明だし、残りの奴らだって、映像記録なんて全部破壊されているから公開なんてできない筈なんだけど、おかしいね?


 俺がここ数日の事を思い出しているうちに、配信画面に動きがあった。

 洞窟の壁に見えていた一部が剥がれ落ち、その裏から少女が現れたんだ。

 アレはなんだ!?

 鳥か!

 飛行機か!

 正解は、忍者だよ。


『ドロン!皆さんこんにちは!本日は、X810プロ公式チャンネルのダンジョン配信第1回を観に来て下さり、誠にかたじけないでござりまする!ニンニン!』


 :なんか始まった!?

 :え!?何今の!?CG!?

 :忍者!?何で!?

 :取ってつけたようなニンニン

 :とりあえず可愛い

 :大試今日は一緒に焼肉食べよう?

 :アイドルってなんだっけ?

 :うちの娘がお騒がせししてすみません


『恐らく殆どの方が初めましてだと思いますので自己紹介を!わた……拙者!世界初のダンジョン警備忍者配信アイドルとしてデビュー致しました、X810プロ所属!城之内忍でござる!』


 :初めまして

 :初めまして!

 :アイドルなのか忍者なのかハッキリしろ

 :嬢忍か

 :お店は予約しておいたから大試はまっすぐ帰って来てね

 :ダンジョン警備忍者って何するん?


『はい!ダンジョン警備忍者とは、ダンジョン内の治安維持のために、現在このダンジョンを管理している方々から許可を得て、無法者を懲らしめる忍者でござる!迷惑系配信者なんて、こう……』


 忍が、一瞬で手の中に出したクナイで、これまたいつの間にか忍の隣にあった丸太人形の首をスパッと切った。


『こうしてやるんでござるよ!』


 :あの……え?

 :アイドル?

 :CG?CGなんだよね?

 :忍者なんだからこれくらいできるだろ

 :貸し切りだから大試の服装は自由で大丈夫

 :情報が多いようで実は忍者要素しか映ってない


『説明するだけじゃ皆さんも飽きると思うので、では早速初のパトロールに出発でござる!レッツゴー!』


 :お、おう

 :ゴー!

 :まだキャラが固まってない感

 :うん可愛い

 :私は最初からジンギスカン行こうと思ってるけどカルビもいいよね

 :ってあれ?なんで壁の方に歩いていくんだ?


 そして、ダンジョンの壁の中にズブズブと沈み込んでいく忍。

 それを追う事が出来ず、自動追尾機能がエラーを起こしてその場で停止するカメラ。


 :は!?

 :CG!CGです!

 :ゲームのバグ使いみたい……

 :このお店は焼き鳥も自慢なんだって

 :俺たちはいったい何を見せられているんだ?


 数秒後、壁から再び忍が出てきた。


『っと、失敗失敗でござる!近道なので壁抜けをしようとしたんでござるが、カメラが追いかけてこれないのを失念してたでござるよ!では、走って行くでござる!ジュワ!』


 :ジュワ!

 :なんだジュワって?

 :忍者っぽい言葉が思い浮かばなくてノリで喋ってる感

 :嫌いじゃない

 :お酒も色々置いているらしいけど大試と私は飲めないしジュースだね


 その後、ダンジョン内を疾走し、採集禁止のアイテムを狙う密漁者や、女性冒険者を取り囲んで襲おうとしてた新たなるウンコたち、本来深層にいるはずなのに何故か上層に出て来てたイレギュラー魔物等々、様々な問題を忍者パワーで叩きのめしていく忍。

 ビックリするくらい忍ばないその姿に、妙な興奮を覚えて視聴者たちは盛り上がっていく。

 気がつけば、書き込みで忍コールが巻き起こっていた。


『ふぃー!そろそろ時間でござるね!これからも私たちが浅草ダンジョンの治安を守りつつワクワクドキドキな冒険をお送りしますので、チャンネル登録お願いするでござるよ!では!ニンニン!』


 ボフンと出てきた煙と共に一瞬で姿を消す忍。

 それを最後に、配信は終了した。


 :おつかれー!

 :カッコいいぞ嬢忍!

 :なぁ……あれは忍術なのか……?

 :C……G……

 :私はそろそろ焼き肉屋に向けて出発するね?大試も準備してね

 :さっきから焼肉推ししてる奴はなんなんだ?


 とまあ、視聴者たちからの反応は上々だ。

 X810プロの公式配信ということもあり、初回から視聴者がかなりの数だったのも良かったのかもしれない。

 それに、碌でもない視聴者は、アイが監視して排除しているからな……。


「……とりあえず、特に問題も無く終わったワンね」

「そうですね社長。アレだけリアル戦闘が発生しているのを問題にカウントされないのでしたら、何の問題もありませんでしたね」


 今俺は、X810プロの事務所内にある社長室にいる。

 まあ、社長室と言いつつも、俺がここに居ることは殆どないので、実質アイドル達の自習部屋みたいな感じになってるらしいけど。

 そこで、この事務所の発足時から共に働いてきた天Pと美須々さんとアイドルちゃんに俺を含めた4人で、初回放送を視聴してたんだ。


「アイドルってこんな事するんですね……。私の時代にはあんなことしているアイドルなんていなかったんですが……」

「美須々ちゃん。どの時代にも多分いないワン。いたとしても普通忍んでるから誰も知らないワン」

「えーと、ピーポー君さん、アレって本当にCGとかじゃないんですよね?壁にズブズブ入って行ってましたけど……」

「そんな予算無いワン。CG作るのってお金かかるワンよ。しかもリアルタイムでとか無理無理ワン」

「合成とか……」

「ブルーバックのスタジオに忍ちゃんがいるならそれも可能かもしれないワン。でも、あの娘走り回ってたから……」

「そうですよね……」


 普通、初回のこの手の放送が終わった後って、達成感とかで大盛り上がりしていそうなもんだけれど、この部屋にあるのは困惑のみ。

 なにせ、発案者である俺がまず困惑してるもん。

 もうちょっと控えめに忍術使ってくるかと思ってたのに、バンバン手の内晒してたなぁアイツ……。

 まあいいけど……。


「社長、これ、続けていくという事で良いのですよね?」


 天Pが、いつもよりも表情が抜け落ちた顔で聞いてくる。

 今回は、いつもの性癖すらも働かないくらい動揺しているらしい。


「うん、まあ……僕が浅草ダンジョンを管理している間は、重大な問題が起きない限りできるだけ続けようと思ってるワン」

「そうですか。まあ、少なくとも初動の人気は上々のようですし、私は構いませんが……」

「天Pには、苦労かけるワン」

「いえ、これも仕事ですし、何よりやりたくてやっていますので」


 覚悟を決めたのか、メガネをクイッとして、目がレンズの反射で見えなくなる天P。

 マジでこの人、性癖が絡まなければ優秀なんだよなぁ……。


「私も協力します!たい……社長の事信じてますから!」

「私もです!ピーポー君さん社長にどこまでもついて行きます!」


 美須々さんとアイドルちゃんが俺に向かって力強く宣言してくれた。

 ありがとう!心強いよ!

 ただ、協力って言っても、キミらにあの非常識な忍術は覚えさせたくはないな……。


「うんうん!皆、これからも力を合わせて頑張っていくワン!」

「「「おー!」」」

「それじゃあ、そろそろ忍ちゃんを迎えに行って、その後は打ち上げに行くワン!焼肉ワンよ!」

「「「「「「おー!」」」」」」


 いつの間にか更に集まって来た所属アイドル達を連れ、デコバスに乗り込む俺達。

 浅草ダンジョンにて、妙にすっきりした表情の忍を拾ってから、聖羅が予約を取ってくれたという焼肉屋へと向かった。

 前回俺が食べられなかったからと、気を効かせて聖羅が提案してくれたんだけれど、嬉しい……。

 はぁ……。

 嬉しそうに焼肉食べてる俺の婚約者と、所属アイドル達……。

 尊い……。

 尊いなぁ……。

 着ぐるみの頭がついているせいで、俺自身は焼肉を食べられないという些細な問題もあるけれど、それが気にならないくらい素晴らしい光景だ……。

 これだけでも、ダンジョンの管理を請け負った価値はあるわ……。


「忍ちゃん、これからもダンジョン配信頑張ってワン!」

「ハイでござる!」


 因みに、本日のダンジョン管理業務における利益は、この焼肉店を30店舗ほど買い上げる事が可能な額でした。

 そりゃ不正も起きるよね……。





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