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「僕は、命は皆尊いと考えているワン」
「ああああ!?なんだよ!?なんだよこれ!?いでえあああああ!」
「だから、キミたちがどれだけカスだとしても、感情のままに『死ねばいい』なんて言うつもりはないワン」
「うそだろおおお!?腕!ねぇのかよおおお!?」
「キミたちが死ぬとしたら、それは法律に則ってそう判断された時で……」
「トーマス!助けろよトーマスぅううううう!!!!」
「うっせぇな……黙ってろや……あ、ワン」
「ぎぇあっ!?」
警察のマスコットであるところのピーポー君らしく、道徳を説いてみたけれど、腕を失った男の叫びがうるさくてどうにも締まらない。
仕方ないので、喉を潰しておいた。
ダンジョンのボス部屋前まで来れるってことは、ある程度レベルも上がっているんだろうし、流石にこの程度で死にはしないだろう。
もしヤバそうなら、傷口を焼いて止血はしてやるさ。
その場合、そのままだと焼けた所から腐りだすから、やっぱり死ぬけども。
後でポーションかけてやるって。
こいつらは、俺を害そうとした迷惑な奴らであると同時に、大事な大事な、『何をしても良い』という貴重な存在になってくれたんだ。
楽には死なせてあげないぞ☆
「てっ、てめえ!警察がそんなことしていいと思ってんのかよ!?」
「ん?」
足元でのたうち回っている男をどうしようか考えていると、センターウンコから声が上がる。
「そんな事って何の事ワン?」
「威嚇も無く!しかもそんな過剰な傷を負わせるような攻撃許可されてんのかよ!?まずは取り押さえて制圧だろ!?」
「あー、キミは、結構警察に詳しいワン?」
確かに、いくら悪い奴らが相手とは言え、警察官が銃乱射したり、持ってる特殊警棒で滅多打ちにしたりしたら、それだけで始末書どころか懲戒まで行くこともあるらしいからなぁ。
相手が自動車で突っ込んできていたり、銃口向けて来ていても、まずは威嚇射撃しないといけないというクソルールがあった気がする。
「でも、心配ないワン」
「何がだよ!?」
「だって僕は、ただのピーポー君であって、警察官じゃないからワン」
「何言ってんだよ!?」
なんだよ?
わからないのかよ?
「市民の平和を守るため、頑張る僕らのヒーロー!それがピーポー君、らしいからワン」
「はぁ!?」
「つまり、ピーポー君は警察官じゃないから、警察官みたいに優しくないワン」
「ふざけるなよ!」
センターウンコが唾を飛ばしながら叫んでいる。
もっと叫べ!
これからお前は、舞台装置となるんだ!
そして、その後の金儲けにもつなげたいと考えてる!
その位しないと、このウンコヘッドを許せん。
こっちが女の子たちがワイワイキャーキャーしているのを心穏やかに後方腕組みで眺めていた幸せな時間を踏みにじった貴様らは!
せめてその時間を邪魔したのが女の子ならまだよかった!
ウンコヘッドのヤンキーって!?
クソが!クソ野郎が!
「ごぼっ がぼっ!」
とりあえず、足元の男がまだなんとか起き上がろうとしていたので、両脚を踏みつぶしておく。
「くっ!!やるぞお前ら!アイツやべぇ!囲んでボコれば何とかなんだろ!?」
「そ……そうだ!こっちはまだ5人もいんだからよ!」
「精々イキってろよ!」
「ふざけた頭しやがって!」
「トーマス!これボーナス弾めよ!」
ウンコヘッドたちが、自分の心を鼓舞するかのように叫び始めた。
いいぞいいぞ。
このシーンも、わざわざ自分たちのカメラで配信してくれてんだろ?
しかも、暴力沙汰だの強姦シーンだのを見ていたカスどもに向けて。
こういうことをしたらどうなるか。
ピーポー君という警察のマスコットに喧嘩を売ったらどうなるか。
これから、存分に見ていけよ。
「俺が魔術を叩きこむ!全員つっこ」
「ほぉぼっ!?」
「はい、あと4人ワン」
結界を背にしている俺を半円状に取り囲もうとしていた手下ウンコの一人の所まで踏み込み、その汚いウンコヘアを掴んで、そのまま引きちぎるつもりで振り回し、地面に顔から叩きつけた。
とりあえず、死んでいないとは思う。
死なせないように……って考えて手加減はしたから。
目玉とかは無理かもだけど、脳は無事だろ多分。
強い衝撃掛かったら、脳に直接的な傷が無くても死んだりするが、その時はその時だ!
しゃーない!次いこ!
「はぁ!?」
「くそ!トーマス!?」
「あぁクソ!ライトニングスピア!!」
「ライトニング系は、切り裂けちゃうんだなぁワン」
「雷魔術斬りやがった!?」
「どっかから剣出しやがったぞ!?なんだコイツ!?」
「うるせぇ!さっさと突っ込めお前ら!」
大騒ぎである。
それにしても、やる気のない奴らだな。
威勢の良い事言いながら、我先にと立ち向かってくる奴がいないんだよなぁ……。
だから、わざわざこっちから行かないといけない。
面倒だし、あのカメラでちゃんと撮影で来ているのか心配だ。
そもそも、今の俺はカメラにどう映っているんだろうか?
着ぐるみヘッドで返り血浴びていることは分かるけど、客観視はできていないからなぁ。
俺は、先ほど地面に突っ伏した奴とは逆サイドのウンコまで瞬時に駆ける。
木刀を肺に突き立てられる直前にやっとその事に気が付いた手下ウンコだったけれど、防御が間に合う事も無く、そのまま胸部に大穴が開いていた。
「ひゃふっ!!!!びょぼっ!?」
「肺に穴開いてるし、胸腔自体が密閉されてないから、上手く呼吸できなくて苦しいかもしれないワン。なかなかできない体験ワンよ。たまたまダンジョン最下層まできているお客様の中にスーパードクターがいたら治してくれるかもしれないワン」
次だ。
「クソが!大丈夫か!?」
隣にいた手下ウンコが倒れた手下ウンコの安否を確認しようとしたから、今度はコイツに狙いを定めた。
「何だっけ?指がどうとか言ってたっけワン?」
「……は?」
突然目の前に現れた俺に唖然としている手下ウンコを地面に引き倒す。
そして、投げ出されたその右手の指を木刀の柄で叩き潰した。
「あああああああ!?」
「良い声ワン!見てるかなー視聴者の皆!悪い事すると、こんな感じになるワンよー!手遅れの人たちも多いと思うけれど、これからは気を付けるワン!」
まあそんな感じで、手下ウンコをドンドン倒して行って、最後にはセンターウンコだけが残った。
「な、何なんだお前!?ほんと何なんだよ!?警察じゃないのかよ!?こんなの許されるのか!?」
一番の無法者であるはずなのに、何を言っているんだコイツは?
「あのさぁ、キミ自身がダンジョンでの事件は検挙されにくいとか何とか言ってなかったワン?だとしたら、今のこれだって事件としてどうこうなることも無いんじゃないかな?ワン」
「んなわけねぇだろ!全部撮影してんだからな!お前はもう終わりだ!」
撮影されてたら終わりなのか?
でも、顔映ってないぜ?
「そもそも僕は、キミたちが殺すと宣言してきたから反撃しただけだから問題ないワン」
「ふざけんな!ふざけんなふざけんな!」
「至って真剣に言ってるワン。あと、甚振りながらやってたから、あと5分くらいしか時間が残ってないワンよ。だから、そろそろキミを無力化して、ぐちょぐちょにしないといけないワン」
「それでも警察かよ!?」
「だから……」
さっきから魔術を何度か放つだけで、後は叫んでいただけのセンターウンコ。
流石にもう視聴者もコイツのつまらん動きに飽きているだろうと予想されるので、終わらせることにする。
俺は、久々に『いじ剣』を取り出した。
これがあれば、多少死ぬような怪我負わせても、生かしたままにできるんだ!
「じゃあ、フィナーレワン!」
木刀で、敢えて奇麗にではなく、千切るように、刃を立てないようにセンターウンコの首を叩き斬る。
突然の衝撃と激痛にセンターウンコの表情がゆがむのが見えるので、ちゃんと苦痛を味わえているのが確認したのち、断面からいじ剣で維持していく。
これで、どれだけ苦しくても、痛くても、コイツは死ねないし、気絶もできない。
俺が設定を変更すれば、酸素の量だけ維持しないようにもできるし、割とやりたい放題できる。
結構練習したからなぁこれ……。
主に、自分がこれで延命する場合を考えて。
口をパクパクと、目をギョロギョロさせているセンターウンコの生首を持ち上げ、カメラに見せつける。
我ながら、とてもいい感じの演出になっているような気がする!
「次は、お前らワン」
感想、評価よろしくお願いします。




