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剣と魔法の世界に行きたいって言ったよな?剣の魔法じゃなくてさ?  作者: 六轟


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568:

「社長、長時間に渡って忍の相手をして頂き、ありがとうございます」

「……あの娘、普段からあんな感じワン?」

「いえ、普段はもっとグイグイ来ます。今日は、初対面な上に男性である社長相手なので、普段よりも大人しく感じました」

「あれで……?」


 天Pの言葉に戦慄する。

 こわいなぁ、アイドル候補生……。


「この事務所に天Pがいてくれて助かったワン……」

「お褒めの言葉ありがとうございます。それでは、ご褒美にちょっと一発乱暴して大人の女にして頂けないでしょうか?」

「…………しないわん…………」

「そうですか?残念です。では、妄想だけにしておきますね」


 やっぱり前言撤回しようかな……?


「私たちの腕を振りほどいたら、その時点で1年デビュー遅くなるからね?」

「たい……社長さんは、怒ったら怖いよ?」

「そんなぁ!?」


 俺をバスの中で散々振り回した忍は、現在アイドルちゃんと美須々さんに、大昔の白黒写真に写る宇宙人の如く手を握られている。

 きっと、ファンたちがこの光景を見たら、「その場所を代わってくれ!」と血の涙を流すか、「美少女たちが手を握り合っている……尊い……」と涙と涎を流すかのどちらかだろう。


 大人しく拘束されている忍を確認してから、天Pが話始めた。


「全員、変装用の眼鏡はつけましたね?」

「「「「「はーい♪」」」」」

「宜しい。では、これより、ダンジョンへと入ります。先頭は、社長に努めて頂きます。皆さんは、最下層に着くまで一塊になって進むように。中央にファムさんがいらっしゃいますので、何かあった場合は彼女の周りに集まって下さい。最後尾は、ダンジョンの経験があるという美須々さんと花梨さんにお願いします。ここまでで、何か質問は?」

「はい!」

「はい、忍さん」

「私のデビューはいつですか!?」

「まだ未定です。待ちなさい。他には?」

「はい!」

「はい、美須々さん」

「私が社長から一番遠いのは納得できません!隣が良いです!」

「却下です。社長の隣でセクハラして頂くのは、私なんですから」

「しないワン」


 その後もいくつかアイドル達からの質問が飛んできたけれど、結局メンバー配置は変わらず。

 ここに、頭にキモイ犬みたいな着ぐるみヘッドを被った男が率いる美少女集団という摩訶不思議な団体が出来上がった。


「犀果様、私はここで、ダンジョン配信のプライベートモードで観戦させて頂きますね」


 アイがそう言って、デコバスの中へと戻っていく。

 手には、今しがた買ってきたらしいハンバーガーとポテトがわんさかと入った袋を携え。

 映画かスポーツ観戦みたいなノリだろう。

 俺がこんな辛い格好までして頑張ってるんだから、無駄にせず、せめて堪能してくれ……。


「社長、出発の号令をお願いします」

「わかったワン……。皆、気を付けるワンよ!何かあったら、僕とファムに頼るワン!」

「「「「「はーい!」」」」」

「では、出発!」

「「「「「おー♪」」」」」


 うん、遠足気分だな。

 それでも、ここにいるメンバーは全員、『本気』になれる娘なんだ。

 そう言う条件で採用しているので。

 もちろん、見た目や運動神経なんかも考慮に入れているけども。

 きっと、ダンジョンの中に入れば、真面目にダンジョン探索をしてくれることだろうと信じられる人材ばかりだ。

 だからこそ、たまには事務所側から息抜きさせてあげないと、只管アイドル活動に関する事ばかりやってしまう人までいる始末。

 でもね……世の中、ずっと同じ事してたらダメなんだよね……。

 もちろん脇目も振らずに熱中できるのは素晴らしいけれど、そこにノイズとなる何かを入れることで、更なる段階に昇華させることができるようになるんだ。

 視点と知識を増やすことで、人は必ず成長できるから。

 因みにこれ、言ったの天Pね。

 しかも、何故かいきなり始めた性癖の話で。

 まあ、確かにそう言うのも重要だよねと部分的に納得したので、アイドル達に、アイドル活動の為になるけれど、直接的にはアイドルと関係ない息抜きをさせて上げてくれってオーダーを出しておいたんだ。

 まさか、その手伝いにピーポー君を被ることになるとは思わなかったが……。


 皆を引き連れて、自動ドアを潜る。

 ここは、民間団体が管理するダンジョンである『浅草ダンジョン』だ。

 俺が今までに利用した事があるダンジョンは、王家が直轄で管理しているダンジョンばかりで、民間管理のダンジョンは初となる。

 王家が管理しているダンジョンは、一般開放されていないので、ダンジョン入り口前は、豪華な感じではあったけれど、華やかさはあまりなかった。

 それに比べると、この浅草ダンジョンは、入り口からかなり気合が入っているのが窺える。

 まるで、観光名所みたい……というより、実際に観光名所らしい。

 この世界だと、このダンジョンは雷門みたいなもんなんだとか。

 王都では、定番の旅行先だって話だ。

 まあ、あんまり王都外に気軽に行ける訳じゃないこの世界の住人からしたら、近場で有名な場所に行くのが関の山っていうのもあるんだろうけれども……。

 そのお陰で白川郷リゾートが大繁盛中ですありがとう!


「おぉ、レストランとか、コンビニがあるワン?」

「そうですね。ここは、商業施設が一通りあると思います。あそこがホームセンターで、あそこが冒険者ショップ。で、あそこが、アダルトグッズ店で」

「アダ……って……なんでんなもんがあるワン?」

「命が掛かる状況だと、性欲が上がりに上がるそうで、ダンジョン内で行為に及んだり、ダンジョンから帰って来てそのまま行為に及んで妊娠、なんてのもよくある話なんだそうです」

「へぇ……」


 振り返って後ろに続くアイドル達を見ると、顔を赤くしながらチラチラとアダルトグッズ店を見ている。

 これは……危ないな……修正せねば!

 頭から、卑猥な物を無くしてからダンジョンに挑まないと、『本気』になりやすい彼女たちが危ない!


「全員注目ワン!」


 俺は、高らかに声を上げる。

 そして、レストランを指さした。


「ダンジョンに入る前に、皆、好きな物を食べてから行くワン!もちろん奢りワン!」

「「「「「いいんですか!?」」」」」

「英気を養うワン!」

「「「「「やったー!」」」」」


 ふっ……JC、JKなんてチョロいもんだぜ……。

 皆、食欲で簡単に流されてくれる……。

 俺なんて、まだちょっと顔を赤く染めながらエログッズを眺める美少女たちの姿を思い出して、これからどう接すればいいのかドギマギしているというのに……。


「流石は社長。人心掌握術は完璧ですね」

「……いや、ただの逃げワン……。子供から『赤ちゃんってどうやったらできるの?』って聞かれた親がのらりくらりと誤魔化すのと一緒ワン……」

「ところで社長、先日ここに前もって視察に来た際にこんなものを購入しておいたのですが……」


 そう言って天Pが手に持って見せてきたのは、スケスケの女性用下着だった。


「……購入するのは、もう好きにしろとしか言えないけど、なんでそれをここで見せてくるワン?」

「私が着ているのを想像して、乱暴したくならないかなと……」

「……はぁぁぁぁああああ…………」

「その本気で嫌がるため息!しかも、何だかんだで私を女であると意識している事に自己嫌悪が混ざっている感じがする辺り、最高です!これも、あとでアイさんにアーカイブに追加してもらわないと……」

「…………」


 ため息すらつけねぇ……。


 天Pと共に遅れて入ったファミレスの店内で見たものは、女子と甘い物で埋め尽くされた空間だった。

 注文と提供はえぇな!

 このチェーン店、覚えておこう!


「あ!たい……社長!こっちの席空いてますよ!」


 離れて座ろうかと思っていると、美須々さんが声をかけてくれた。

 これが学園行事か何かであれば、余り者扱いで非常に心苦しい気分になる所だが、美須々さんは俺の身内!

 だから何の遠慮も無く隣に座らせてもらった。


「不思議な色のパフェだワン」

「ですよね!?紫色なんです!デーツパフェっていうんですけど、すごく甘いんですよ!その……一口食べませんか!?」


 そう言ってスプーンを差し出してくる美少女。

 何キミ?

 天使か何か?

 美少女が軽々しくそういう事しちゃダメだよ?

 男なんて、簡単に惚れちゃうんだから。


「……ごめんワン、これ被ってるから今は食べられないワン」

「あ、そうですよね……。残念です……」


 残念だけど、今この被り物を取る訳には行かない。

 何故なら、俺の隣、美須々さんの反対側には、俺の顔を見ると「ひっ!?」と悲鳴を上げる程のトラウマを抱えてしまった女の子が座っているからだ。


 その女の子、アイドルちゃんも、何故か差し出していたスプーンを引っ込めて行ったが。


「え……えへへへ……」


 顔を真っ赤にしているが、そんなに着ぐるみに餌付けしようとした自分の行いが不自然な物だと理解してしまったんだろうか?

 カウンセラー、早めに見つけよう……。


「じゃあ飲み物なんてどうでござるか!?せい!」

「ごぼっ!?」


 突然、着ぐるみヘッドの首部分から液体が流れ込んできた。

 何かと思えば、またしても突然現れた忍が、ストローをヘッドの首にある隙間から差し込み、その状態でドリンクのコップを握りつぶして流し込んできたようだ。

 しかもこれ、コーラじゃねぇか。

 すごい苦しかった……。


「喜んでくれましたか!?……ござるか!?わた……拙者をデビューさせたくなった!?」

「…………」

「ちょっと忍ちゃん!?社長に慣れ慣れし過ぎよ!離れて!」

「そうだよ!ピーポー君さん社長の膝に座るなんて、私だってしたことないのに!」


 わーわーと騒ぎながら引きずりおろされる忍。

 こいつ……。


「忍ちゃん」

「はいでござる!」

「お前、次何かやったら、俺の全権力を使ってクソダせぇ全身タイツ姿でデビューさせるからな?ワン」

「なんで!?酷い!でござる!」


 滴るクソ甘い汁を拭きながら、俺はそう宣言した。


 そしてとうとう、ダンジョン探索が始まる。





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― 新着の感想 ―
こんなに色々遭った後で、カスヤンキーに出会ったのか。 一瞬で消し飛ばしそう てか、まだ入ってすらいないから、まだまだ問題があるんだろう 今のところチーム分けされてないっぽいし
テンポが悪い、展開が遅い テンドンも繰り返しやるとつまらなくなる
待たせすぎじゃなーい?今度こそか?今度こそよね!?
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